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会社代表者の死亡による逸失利益について現実の報酬を基礎とした算定事例 - 前田尚一法律事務所

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会社代表者の死亡による逸失利益について現実の報酬を基礎として算定された事例。

保険会社が提示した最終示談提案額は6,000万円弱であったが、判決の認容額は、合計8,100万円強であり、遅延損害金も含めると、9,200万円余りになった事例

札幌地方裁判所平成9年1月10日民事第1部判決

 

交通事故後遺症取扱事例集 本件は,損害賠償額については,保険会社の提示額は6000万円弱に過ぎなかったが,裁判を起こした結果,合計8100万円強の金額が認容された事案であり,遅延損害金を含めると9200万円を超えとなりました。最終的には3000万円以上の増額となったことになります。
 死亡あるいは重大な後遺症がある事案では,保険会社や自動車共済と裁判所との間には損害額の算定基準に差異があるほか,認められる損害にも違いがあるといった理由で,裁判を経た方が,金額が多くなるのが通常です。

 増額の損害費目別の対比

  裁判所認容額 保険会社最終提示額
治療費 121,838 121,838
逸失利益 48,185,280 44,478,720
慰謝料 24,000,000 13.500,000
葬儀費  2,000,000 1,300,000
損害の填補  ▲121,838 ▲121,838
弁護士費用 7,400,000 0
小計 81,585,280 59,278,720
遅延損害金    10,444,430 0
合計 92,029,710 59,278,720

 

 本判決は,「二つの会社の代表取締役を兼任する者の逸失利益について,現実の報酬額を基礎として算定した事例で,今後の同種事案の処理上参考になろう」として,判例雑誌「判例タイムズ」誌に紹介されました(990号228頁以下)。


 事件の重要な要点

1)保険会社の提示額6000万円弱が9200万円超えに大幅増額
 保険会社の示談最終提示額は,5927万8720円だったが,訴訟を提起した結果,手取り金額9202万9710円を獲得しました。
*交通事故の損害額の算定方法に大きな違いがあることが,原因です。

2)担当裁判官が最初に提示した金額は,6600万円余りに過ぎなかった。
 とはいえ,当初裁判所が提示した金額は,6653万0848円でした。ここから2600万円余りを増額させたのです。
*小規模会社の会社役員の逸失利益については,裁判実務上のルールがあり,多くの場合,基礎収入である役員報酬から一定額を控除して逸失利益を算定するのが通例です。
 多くの裁判官がこのルールを形式的に理解して適用しており,本件の裁判官も,当初はそのように処理しようとしたからです。

3)どうやって大幅増額を獲得したか。
 本件では,理論,現実・実質の両面からこのルールの本来の在り方を徹底的に争い,担当裁判官に理解してもらえました。
 その結果,認容額8158万5280円及び遅延損害金(支払時1044万4430円)判決を獲得することができたのです。
 ⇒ 「裁判官の先入感、偏見、独断との闘い」

4)裁判実務の現状と当事務所の対応の特殊性
 もっとも,その後も,裁判例の多くは,このルールを形式的に理解したままで処理しているようです。
 しかし,この事件の後10年以上経って当事務所が担当した本件と同じ争点の事件では,裁判所はきちんと100パーセント判断をしてくれました(札幌地方裁判所平成21年2月26日民事二部判決・判例時報2045号130頁)。
*いうまでもなく,当事務所は,ルールを見た目どおりに当然のものとせずに,ルールの本来の在り方を徹底的に争い,担当裁判官への説得が成功したからです。

 

 解     説

 本件は,ある会社グループ(総売上高約13億円)の現役ばりばりの創業者(61歳)が交通事故に遭遇し,不幸にも死亡してしまったという事案である。
会社役員が人身事故に遭った場合,逸失利益(死亡しあるいは後遺障害を負わなければ得られたであろう収入)や休業損害は,一般の給与所得者の場合と同様,現実の役員報酬を基に算定されると考える経営者の方も多いと思われる。

 

 しかし,実は,裁判上の法律的な理屈はそうではない。

 中小企業(小規模会社・同族会社)の会社役員の報酬の中には,2つの部分があるとされる。
 ①役員として実際に稼働する対価としての部分(労務対価部分)と
 ②利益配当等の実質を持つ部分(利益配当部分)だ。

 

 そして,逸失利益の算定の基になるのは,労務対価部分(①)に限られるとするのが裁判実務家(裁判官)の基本的考え方であり,いわば常識となっている(大工強「役員の休業損害及び逸失利益の算定」人身賠償・補償研究第3巻268頁)。

 理屈自体はもっともな面もあるが,役員報酬を利益配当部分と労務対価部分を区別する明確な基準があるわけではなく,実際に起きた事件で両者を区別するのは困難なことである。もしこの理屈が形式的・算術的に適用され,常に利益配当部分としてかなりの金額が減額されてしまうことになれば,例えば,生活の中に公私の区別もなく,コマネズミのように仕事に没頭してきた創業者などの場合に,納得できない結論が出てしまうことになる。

 

 本件でも,被告は,立場上当然のことながら,常識とされる理屈を主張してきた。これに対して,理屈を常識として無批判に受け入れる訳にはいかないが,さりとて,ただただ理屈を批判するだけでは意味がない。

 原告(被害者側)の弁護士としては,なぜこのような理屈が生まれたのを,生の眼で検討してみたうえで,有効な対抗手段がないかを今一度考えてみる必要がある。この理屈は,経営者が,ぼろ儲けし過大な収入を得ていたような場合に,それを常識的な範囲に制限しようという裁判官の動機から生まれたのではないかということである。

 そうすると,私のなすべきことは,裁判官に,本件に則した常識を,つまり,死亡した経営者は,決して過大な収入を得ていたわけでないことを十分に認識してもらい,これに沿った常識を採用してもらうことである。

 常識というと,唯一の真理であるかのように思われがちだが,そうとも限らない。それぞれの人が持つ常識は,すべてその人の環境から身につけたものであって,実は千差万別である。どこにでも通用すると思われがちな常識とは,ある限られた場面の真実であるとも言える。
裏付けをきちんと示して,この場面の常識は何かをきちんと理解してもらう作業が必要となる。

 そこで,当方の主張の中で,この理屈の本来の意味を明確に指摘するとともに,中小企業の経営者の収入・資産などの水準に関する資料を提出したうえ,会社の実体のほか被害者の会社との関わりなどの実情を明らかにすることを中心課題とした。
裁判官が,私の取り組みをどの程度くみ取ってくれたかは,もとより判決の中には明示されてはいないが,結論としては,現実に受け取っていた役員報酬(2社分)をすべて労務の対価と認定し,逸失利益の算定の基礎とした裁判例は,珍しいものであると思う。


 

 本件を提起前に保険会社が提示した最終示談提案額は6000万円弱であった。判決の認容額は,合計8100万円強であり,遅延損害金も含めると,9200万円余りになった。裁判を提起し,上記のような法律的争点をクリアーした結果,最終的には約3000万円増額されたことになる。

 死亡あるいは重大な後遺症がある事案では,保険会社と裁判所の算定基準に差異があり,さらに裁判の場合には,弁護士費用の一部が認められるほか,裁判に要した時間に応じ,遅延損害金がつけられる(年5分)ことなどから,裁判を経た方が,金額が多くなるのが通常です。
当法律事務所で取り扱った事件でも,本件のほか,重大な後遺症があった事案で,最終示談提案額(残額)がわずか54万円であったが,裁判を起こした結果,合計2300万円を超える支払を受けることができるようになった実例があります。

 

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