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仮換地指定がなされた従前地についてその占有者に対し明渡しを認めた事例(取扱事案のご紹介) - 札幌の弁護士|前田尚一法律事務所

仮換地指定がなされた従前地についてその占有者に対し明渡しを認めた事例

札幌地方裁判所平成9年6月26民事第5部判決
札幌高等裁判所平成9年10月31日第2民事部判決

 

当事務所の取扱事案を御紹介します。
本件は、顧問先の土地区画整理組合から受任した事件です。

 

本判決は、「施行者が、民事的手続により、仮換地指定がなされた従前地についてその占有者に対し明け渡しを認めた事例として参考になる」とされ、(社) 全国土地区画整理組合連合会発行の月刊誌「組合区画整理」(第59号32頁以下)に紹介されました(解説は、建設省都市局区画整理課)。

 

土地区画整理事業は、独特の手法が採用された大規模な事業であり、多くの法律効果を生ずる一連の手続であり、公法と私法が錯綜する中で、施行者は、数々の処理すべき法律問題に直面し、問題を事業計画全体の流れの有機的な事象と位置づけ、総合的判断を踏まえて解決していかなければなりません。
土地区画整理組合も、組織運営上はもとより、地権者のほか各種多様な利害関係を有する人々との関わりの中で、法律問題と直面しています。

 

そして、土地区画整理事業の施行に当たっては、建物等の移転または除却が円滑に進まなければ当然事業工事の進捗に大きな影響を与え、事業全体が遅延する重大な原因となるが、仮換地指定を行なわれたにもかかわらず、所有者から移転または除却について協力が得られない場合が発生することがあります。
まずは地道な協議・交渉ということになるのであるが、うまくいくとは限りません。
そのため、土地区画整理法は、施行者が、裁判手続を経ることなく早急に解決するための手段として、直接施行という方法を定めています(77条1項)。しかし、施行者が個人または組合である場合には、市町村長の認可を受けなければならないこととされています(同条6項)。そして、市町村長は、矢面に立つことを嫌い、この認可をすることを躊躇するのが一般であり、せっかくの手段が有名無実となっているのが実情です。
そこで、施行者としては、民事訴訟を提起するほかないという場合が起こります。

 

本判決は、従来の判例(最高裁昭和58年10月28日第二小法廷判決・判例時報1095号93頁)の考え方を踏襲したものです(事例判決)が、従前地所有者も原告となっている点に特色があります。

 

ところで、私が同じ依頼者(土地区画整理組合)から受任した事件で、これまで裁判上の先例が見あたらない事案において、次のような判断をした事例があります。
裁判所は、「仮換地指定処分がなされた従前地にあたる係争地ついて、この係争地を仮換地とする指定が別途なされたが使用又は収益を開始することができる日が未だ定めらていない場合、土地区画整理法100条の2により、換地処分がなされるまでの間、施行者が管理するものとなるとして、施行者自身が、係争地を権限なく不法に占有する者に対し明渡しを求めることができるとしました(札幌地裁平成10年4月28日民事第5部判決、札幌高裁平成10年9月10日第3民事部判決)。

 

それまで、このような場合の解決方法について、ほとんど議論されていなかったようです。上記事件に取り組んでいる中で、ようやく、大場民男弁護士が執筆された論稿を見つけました。
しかし、そのなかでは、「仮換地の指定を受けた人の協力さえ得られれば、(その仮換地の指定を受けた人が原告となって)民事的明渡し請求の方法をとることができる。」あるいは「施行者はいっそのこと「使用収益開始日」を「追って通知する」などとせず、効力発生日を即使用収益開始日とする。そうすれば仮換地指定を受けた者は仮換地上の支障物件の所有者等に対し建物収去土地明渡の訴を提起できるのである。」とされており、施行者自身による明渡請求ができないことを前提としているとみられる見解が示されていました(「土地区画整理ーその理論と実際ー」210頁、「続土地区画整理ーその理論と実際ー」29頁、「新版縦横土地区画整理法上」424頁註(5))。

 

施行者が土地区画整理事業を施行していくうえで、事業の進捗状況をみながら、「使用収益開始日」を「追って通知する」としておくこと(「追而指定」)は、実務上の必要が高いしなことであるし、仮換地の指定を受けた人の協力を得て、つまり原告になってもらって裁判を起こすということは面倒であるばかりか、協力が得られない場合には、解決自体できないことになってしまいます。
これでは、施行者は主体的な事業をすることが困難となるといわなければなりません。

 

本判決は、このような場合であっても、施行者自身が明渡請求ができるのが当然であるという当方の主張を認めたのです。

 

〇お客さまの声:土地区画整理組合 理事長・男性(78歳)

無駄を省いた的確な判断と行動、明確なアドバイスに、私が理事長に成ってからの土地区画整理組合は、幾度も危機を乗り越える事が出来ました。心から感謝して居ります。

 

また、私が紹介させて頂いた数人の方々も、案件と法のかかわりを分かりやすく説明して頂き、安心してお任せしたと御礼の言葉を頂きました。

 

今後とも社会正義の為、一層の御奮励をお祈り申し上げます。組合解散後、直ちにお礼に伺うべきところ雑事に追われ、失礼して居りました。お許し下さい。此の度は本当に有難うございました。

 

最後になりましたが、くれぐれも御身体大切になさって下さい。

 

〇お客さまの声:土地区画整理組合 副理事長 ・男性(75歳)

私はまったく素人でしたが、知人からの要請で土地区画整理組合の役員に選出されましたが、この時、組合の専務理事(組合でただ1人の常勤者)に選出され、実務の中心となっていたA氏が就任一年半後にB建設業者との間で「贈収賄事件」が生じ、H氏に有罪判決が出されました(判決前にH氏は理事を辞任)。又、同年の4月初め頃にA氏が別なC建設業者と話し合う中で(事前に理事会への提案や承認がない中で)勝手に工事の発注を行い、同年7月上旬にB業者より、工事代金が水増しして請求された事が明らかとなり「工事代詐欺未遂事件」が発生しました。

 

その後も組合とA氏の間で「養豚業廃業補償費増額請求事件」(道収用委員会~最高裁まで)や、「豚舎明け渡し請求」「自宅撤去、土地明け渡し」及び同左の「強制執行請求」等、数件の裁判がそれぞれ合わせて約5年にわたり行われました。

 

それまで組合としては、話し合いでの解決を求め、根気よく年時をかけてきましたが、このままでは解決の目処もたたず、事業も進まず、止まることも考えられる状況となってきましたので裁判での解決を求めていかざるを得なくなりましたが、組合員や行政等から裁判にかければ判決まで多年を要するし、お金もかかるのではないかと心配や反対の意見もそれなりにありましたが、組合としては、先生との相談、話し合いの中で、解決しない話し合いをいつまで続けても意味がないし、又、ゴネ得を1人許せばそれを見て他に色々と言ってくる人が何人かは出てくるのでないか(現実にその可能性は何人か考えられました)、それであれば裁判に堂々として臨んだ方が早く解決し、又お金もかからないのでないか等、原則的な考え方が示される中で、当初は100%理解できた訳ではないが、私達の考えや気持ちにふれるものが多く、先生を信頼してお願いし、一緒に戦っていってみようという気持ちを強くしました。

 

幾つもの裁判を通じて理解した事は色々とありましたが、私なりに要約すると、

1 先ず先生を信頼する事、そして依頼人としての考えや気持ち(求めている事)を素直に伝える事

2 先生の、その裁判に当たっての考え方、取り組み方等を素直に受け止め、解らないところは恥ずかしがらずに聞き、ひとりよがりの判断や考え、早合点しない事

3 裁判に対する対応は、ぶれずに一貫してプロである先生に一任し、自分たちもそれに素直に対応していく事

4 周りからの色々な考えや意見については素直に受け止めるが、それらの事で先生との間で不信やぶれが生じないよう、必要に応じて先生との相談・話し合いを密にしていく事、
が、裁判に臨み、共に戦っていく上で、大事ではないかと思っています。

 

未経験な裁判と言う大事な問題で、根気強く何かとお話をして下さり、最後まで先にたって戦い、又、引っ張っていただき、何とか私達もついて行き、幾つも勝ち得た事は本当に有難く感謝しています。

先生の努力とご苦労はいつまでも忘れません。
私達も良い経験をさせて頂きました。

 

 

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弁護士 前田 尚一(まえだ しょういち)
前田尚一法律事務所 代表
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、弁護士として30年を超える経験、実績を積んできました。
交通事故、離婚、相続、債務整理・過払い金請求といった個人の法律問題に加え、労務・労働事件、クレーム対応、債権回収、契約書ほか企業法務全般も取り扱っています。


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