請求書をずっと送り続けても 時効を止めることはできない|中小企業法律問題 - 札幌の弁護士|前田尚一法律事務所
請求書をずっと送り続けても 時効を止めることはできない|中小企業法律問題 - 札幌の弁護士|前田尚一法律事務所
私は、主人が経営する建設会社で、専務として経理を預かってます。
建築代金を支払ってもらえないお客様も何件かあります。
主人が、同業の先輩に請求書さえ送っておけば時効にはかからないとアドバイスを受け、私が、毎月毎月請求書を送り続けています。時効対策として十分なのでしょうか。
時間が経過することによって、自分の権利がなくなってしまうという制度を消滅時効といいます。要するに、月日が流れると世の中も変わり、権利を持っていても、いつまでも放っておく人を許さない、という制度です。
反面、民法は、「請求」等、時効がまだ完成していないうちに時効の進行を断ち切り、始めに戻してしまう方法も定めています(「時効の中断」といいます。)。
しかし、この「請求」というのは、裁判を起こす(「裁判上の請求」)等所定の法的手段をとることを意味し、請求書を送ることは含まれません。
つまり、ただただ請求書を送り続けても、本件のような請負代金ですと、支払期日から3年経過したときに、相手が時効を主張する(「援用」といいます。)と権利は消滅してしまうことになってしまいます。
もっとも、時効が完成する前に請求書を送り届けるそのときから6か月時効期間は延長されことだけは認めています。
ただ、この期間内に裁判を起こすなど所定の法的手続をとらなければ、延長の効果は認められません。請求書を送ることは、民法上は「催告」と呼ばれ、「請求」とは区別されています。
また、この延長は1回限りの特典であり、再延長、再々延長は認められません。つまり、6か月毎に請求書を送りつづけても、延長の効果は認められないのです。
さて、世間には“物知り”がいて、いろいろなことを教えてくれます。しかし、特に法的問題については、教えられた内容が誤っている場合も少なくありません。ご質問の中の先輩からのアドバイスもよく聞く誤解の一つです。
時効という言葉は誰でも聞いたことがあるでしょうが、権利の性質によって時効期間が異なりますし、またどの時点から期間を計算すればよいか等々、理解するには専門的知識が必要です。
一度、いわば自社の商品知識にプレミアムをつけるつもりで、業務にかかる権利の時効対策を専門家に相談しておくことをお勧めします。
◎「取引先を訴えて企業間紛争を解決するー民事訴訟の活用法」をどうぞ。
1 企業間紛争について民事訴訟の活用場面:特に中小企業の場合を念頭に
(1)売掛金、工事請負代金等が未払の場合:売主側からの債権回収
弁護士 前田 尚一(まえだ しょういち)
前田尚一法律事務所 代表
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、弁護士として30年を超える経験、実績を積んできました。
交通事故、離婚、相続、債務整理・過払い金請求といった個人の法律問題に加え、労務・労働事件、クレーム対応、債権回収、契約書ほか企業法務全般も取り扱っています。
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