販売代金の請求と時効|中小企業をめぐる法律問題 - 札幌の弁護士|前田尚一法律事務所
販売代金の請求と時効|中小企業をめぐる法律問題 - 札幌の弁護士|前田尚一法律事務所
目次
初めて訪れられたA社長は,事務機器の販売会社を経営しておられるとのこと。
甲会社に事務機器を販売したが,甲会社は全く代金を支払おうとはしない。
A社長は,その後毎月毎月請求書を送り続けているがそのまま5年が過ぎてしまった。
特に何もしなかったのは,知人に,請求書を送り続けていれば,時効にはかからないと教えられたからだ。
世間には“物知り”がいて,いろいろなことを教えてくれるけれど,無責任で内容が誤っていることがある。
請求書を送り続けていれば時効にずっとかからないというのも,よく聞く誤解の一つ,まったくのデマだ。
私は,この種の“物知り”を「外野席(がいやせき)」と呼んでいる。外野席の観戦者は,いろいろ野次を飛ばすが,最後の責任はとってくれない。
さて,物の販売の代金請求権は2年で時効にかかって消滅してしまう(ただし,「援用」という意思表明が必要。)。
そして,時効が完成近いがまだ完成していないうちに請求書を届け,届いた日から6か月以内に裁判を起こすなど所定の手続をとった場合にのみ,その期間だけ時効期間は延長される。
だから,仮に請求書を送って時効期間が延びたとしても,最大限6か月だし,それは1回限りの特典なのだ(詳しくは,別項「請求書を出し続けても,時効を止めることはできない」)。
なお,実際に請求書が届いていないと言う嘘つきもいるので,証拠を残すために,配達証明付きの“内容証明郵便”を利用する等しておく必要がある。
この件,おそらくは時効にかかっている事案だ。もし裁判を起こして勝訴判決をとっておけば,時効を中断したうえ,時効期間を10年に延長することもできたのに・・・・・・。
時効に限らず,トラブルには思いもよらない『法律問題』が潜(ひそ)んでいることがある。
そして,『法律問題』を解決するためには,手遅れにならないうちに,いろいろな観点から処理しなければならない場合が多い。
決して難しいことではない。要は経営者・管理者が時効のことを正確に知っていたかどうか,素朴な臭覚を持っていたかということだけのことだ。
デマに惑わされず,せめて自分の大事な商品・サービスについて対価の時効期間を知っておくだけのことだ(「商品知識」)。
◎「取引先を訴えて企業間紛争を解決するー民事訴訟の活用法」をどうぞ。
1 企業間紛争について民事訴訟の活用場面:特に中小企業の場合を念頭に
(1)売掛金、工事請負代金等が未払の場合:売主側からの債権回収
弁護士 前田 尚一(まえだ しょういち)
前田尚一法律事務所 代表
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、弁護士として30年を超える経験、実績を積んできました。
交通事故、離婚、相続、債務整理・過払い金請求といった個人の法律問題に加え、労務・労働事件、クレーム対応、債権回収、契約書ほか企業法務全般も取り扱っています。
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