新型インフルエンザと介護現場の関係(新型コロナウイルスへの対応) - 札幌の弁護士|前田尚一法律事務所
新型インフルエンザと介護現場の関係(新型コロナウイルスへの対応) - 札幌の弁護士|前田尚一法律事務所
目次
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現在,新型コロナウイルスの世界的な流行で日本も騒動の只中です。
振り返ればウイルス性風邪の世界的な流行とその騒動は数年置きに起きています。
なお、この記事が掲載された2年後には、地震に関連した労務管理に関する専門知識も求められました。
そこでパンデミック(世界流行)の問題、介護に関わる法律問題からの視点で寄稿した過去の記事をご紹介したいと思います。
(『介護と法律』連載1:「介護新聞」平成21年7月 9日[株式会社医療新聞社]【PDF版】)
介護保険制度がスタートして10年目を迎えます。この間、介護サービスの量の確保・質の充実が進められてきていますが、介護事業所の経営状況は必ずしも良いとはいえません。今後の課題としても、少子高齢化の中で将来にわたり介護従事者を確保していくことや、何よりも人と人とのつながりを基本とする介護サービスの確保には、経済的な裏づけが求められるところです。一方、制度のスタートとともに、さまざまな法律問題も起こっています。本連載では、介護の現場で起こり得る身近な法的問題を、事例を交えながら紹介したいと思います。第一回は新型インフルエンザに関連する介護事業所の対応について考えてみます。
新型インフルエンザへの対応が、弱毒性であることを踏まえた対応に転換したといっても感染者は増加し、今秋にも大規模な感染拡大が心配されています。利用者や家族は、生命・健康の保持や自立へのサービスが継続的に提供されることを求めており、医療施設はもとより、介護施設においても万全の対策をとっていて当然と考えていることでしょう。介護施設での転倒や誤嚥事故はもとより、感染症の発生は文字通り利用者の生命に関わる重大な問題です。時として風評被害とともに施設の存続すら脅かしかねません。例えば、パンデミック(世界的大流行)の渦中にある新型インフルエンザに関し、次のような報道がありました。読んだ利用者や家族は、どのような印象を持つでしょうか。
・デイサービス事業所が新型インフルエンザの影響で休業した際、認知症を抱える一人暮らしの女性が体調を崩した。(読売新聞09年6月25日朝刊)。
・ある特別養護老人ホームが最低2週間の備蓄や出勤可能な職員が4割程度にまで減った場合の体制を検討。(読売新聞09年5月19日夕刊)。
政府は「事業者・職場における新型インフルエンザ対策ガイドライン」に加え、介護施設等の特殊性を踏まえ「新型インフルエンザに対する社会福祉施設等の対応について」を示し、追加・一部改訂作業を進め、当面なすべき対応を明示しています。
介護事業者はこうした情報をもとに、危機管理の面からあらゆる対策を講じておく必要性があるでしょう。
パンデミックは非日常な事態です。具体的な問題が発生した場合、介護施設も事業所である以上、法律の世界と関わることは避けられません。
パンデミック対策を企業の法律問題として検討する場合、取引先との関係と従業員との関係という2つの方向性で考えることができます。介護施設の場合、取引先は利用者や家族と置き換えて考えられます。
大切なことは、介護サービスが「契約」の上に成り立っているということです。介
護施設への非難やクレームの切り口はすべてここにあるのです。
従業員との関係(労務管理)についてもかなり複雑な問題が想定されます。
例えば、新型インフルエンザに罹患した職員に対し、業務に就かないよう休業命令を発することができるのか否か。できるとすれば休業期間中の賃金、休業手当、休業補償を支払わなければならないのか。
事前に一定の措置を講じている場合とそうでない場合とに違いがあるのか。実際に休業命令を発する場合、備えなければならない条件は何か。職員が新型インフルエンザの疑いにとどまっている場合はどうか。
あるいは、職員が新型インフルエンザへの感染をおそれて出勤を拒否した場合に、出勤命令を出すことは可能かどうか。可能な場合、命令に従わない職員に対し懲戒することが可能かどうか。もちろん、これらは雇用者の職員に対する安全配慮義務を尽くさなければならないという健康管理という側面も含んでいます。
さらに、施設の全部を閉鎖、又は一部縮小しなければならない事態となった場合においても、職員に対し賃金を支払わなければならないのかどうか。新型インフルエンザに罹患している職員と罹患していない職員で違いがあるのかどうか、ざっと思いつくだけでも実にさまざまなケースが想定されることに気がつきます。
もっとも、介護事業者は利用者の生命、健康の保持や自立を支えるためのサービスを継続的に提供しなければならないという特殊性と、パンデミックの中で発生した事態の緊急性や重大性を踏まえると、施設側としては、想定される法律的見解が最終的に確定していない段階であっても、一定の対処を断行しなければならないということも考えられます。
施設側としては、このような事態に直面した場合、法的な側面の懸念が、本来の介護サービスを全うするための果敢で適切な対処を妨げることがないよう、あらかじめ顧問弁護士から簡にして要を得た法的コンサルタントを受けておくなど、勘所を押さえておくことが大切です。
さらに考えておかなければならないことは労使問題です。
労務管理というと表面の平穏さに目を奪われ、例えば派遣可能期間の制限を回避するための表面的なテクニックなどにばかり関心が高い経営者も散見します。介護施設は平時から労務問題が起こりやすい面があり、ふと気がつくと労働組合が結成され、団体交渉を要求されることも少なくありません。
もとより、労働組合を敵視することは論外としても、労働組合が結成されざるを得ないような場合、パンデミックの中で発生した事態を、直ちに労使一丸となって解決するという環境が整っているといえるかどうかは、疑問です。
つまり、パンデミックという特殊な状況下であればもとより利用者に良質な介護サービスを継続的に提供していくためには、何よりも実態として労使の信頼関係という基礎(基盤)がしっかりしていることが不可欠です。
次回以降、組織における労働問題や介護サービスに関連する法的側面について解説したいと思います。
なお,現場の在り方という視点からは、『法律問題かどうかを嗅ぎ分ける能力を』(連載:『介護と法律』5)が参考になるかと思います。ぜひ,こちらをご覧ください。
これら記事は、その当時の情報を前提としておりますので、この点ご理解の上、ご活用ください。
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弁護士 前田 尚一(まえだ しょういち)
前田尚一法律事務所 代表
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、弁護士として30年を超える経験、実績を積んできました。
交通事故、離婚、相続、債務整理・過払い金請求といった個人の法律問題に加え、労務・労働事件、クレーム対応、債権回収、契約書ほか企業法務全般も取り扱っています。
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