求人倍率激減から見えてくるコロナ禍の特殊性 - 札幌の弁護士|前田尚一法律事務所
求人倍率激減から見えてくるコロナ禍の特殊性 - 札幌の弁護士|前田尚一法律事務所
厚生労働省によると,2020年の有効求人倍率(求職者1人当たりの求人数)の下げ幅が45年ぶりの大きさで,平均休業者数は過去最大となったとのことです。
有効求人倍率は,2009年を底に,その後2018年まで,右肩上がりにほぼ直線で上昇,2019年は下降気味の横ばいで,2020年一気に下落したことになります(統計を見ると,2011年(平成23年)の東日本大震災の年は,ほぼ直線での右方上がりの途中であり,同じく天災的現象といっても,コロナ禍の性質の違い,影響の独自性がうかがわれます。)。
下げ幅の算定に用いられた2020年の平均の有効求人倍率は1.18倍とのことですが,4月以降では1倍を切っているとのことです。そして、コロナ感染拡大と関連する解雇や雇止めの見込み数は,今年1月22日時点で全国計が8万3713人で,北海道はその5番目3326人であるとのことです。
有効求人倍率は,2009年を底に,その後2018年まで,右肩上がりにほぼ直線で上昇,2019年は下降気味に横ばい。2020年一気に下落したことになります(統計を見ると,2011年(平成23年)の東日本大震災の年は,ほぼ直線での右方上がりの途中であり,同じく天災的現象といっても,コロナ禍の性質の違い,影響の独自性がうかがわれます。)。
人手不足が構造的に継続していた中,有効求人倍率の下落は,企業にとって,人員採用の労力を軽減するものですが,今回の下落は,コロナ禍の影響で売上減,収益減となった多くの企業側の事情からのものですので,経済,社会全体としてみると,採用の要否・可否の方向が相反しています。
問題,脅威は,機会,チャンスに転じさせよなどと言われても,一般的に即効的で特効薬などなく,相当数の企業は,生き残りに取り組むのがせいぜいというのが現実かもしれません。そして,少しだけ踏み込んで見てみると,求職者が多くなったとしても,コロナ禍が直撃し従業員を流出した業種は特定しており,採用を求める業種では,経験・スキルとの関係で,なかなか採用には至らないといった実情もあるようです。また,特にマスコミ報道を通じて,テレワークが労使双方からもてはやされている場面に遭遇することがしばしばですが,その実態を考えると,そう単純なものではありません。
出来事の外面だけでは一義的に見える場合もありますが,それを引き起こす重大要因の影響度,諸要因の影響する時間差,諸要因が影響をもたらす順序によって,その後の趨勢は大きく変わっていきます。
私共弁護士の業務の範囲を見ても,このような事態,一般論としては,企業の倒産,解雇,残業代請求,整理解雇などといったことは定番のように思われがちですが,コロナ禍という出来事の時間的流れ・構造によって,発生する問題の有無,数・割合も大きく変わってきます。
緊急事態宣言の発出・解除・延長もぎりぎりまで確定しないというのが実際です。また,緊急事態宣言との関係で「雇用調整助成金」(特例措置)などの現行措置について、一定の延長となったとはいえ,いつまで延長されるか予測できないのが実情です。
また,予防・治療の医学・医療現場の状況も,どう解決につながるかが見えない現状です。先が見えないコロナ禍の現況では,事態に即応して臨機応変に対処できるように,自分でコントロールできる範囲だけでも,体制でいるようにする必要性が益々高まっているようです。出来事の外面だけを一面的に把握してしまわず,自身の個別具体的な状況を押さえた上で,それとの関係性でコロナ禍の状況を把握して行かなければならないでしょう。
弁護士 前田 尚一(まえだ しょういち)
前田尚一法律事務所 代表
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、弁護士として30年を超える経験、実績を積んできました。
交通事故、離婚、相続、債務整理・過払い金請求といった個人の法律問題に加え、労務・労働事件、クレーム対応、債権回収、契約書ほか企業法務全般も取り扱っています。
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