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取引履歴の開示 - 札幌の弁護士|前田尚一法律事務所

 

 

開示義務

サラ金業者等の貸金業者は、顧客やその代理人から取引履歴の開示請求を受けた場合、これを開示する義務を負っています。

 

開示義務の根拠

その根拠は、以下のとおりです。 まず、平成17年7月19日最高裁判決は「貸金業者は、債務者から取引履歴の開示を求められた場合には、その開示要求が濫用にわたると認められるなど特段の事情のない限り、貸金業の規制等に関する法律の適用を受ける金銭消費貸借契約の付随義務として、信義則上、その業務に関する帳簿に基づいて取引履歴を開示すべき義務を負う」とした上で、貸金業者がこの義務に違反して取引履歴の開示を拒絶したときには、不法行為に基づく損害賠償義務を負うこととなると判示しています。

 

さらに、上記の最高裁判決でも言及されているのですが、金融庁事務ガイドライン3-2-7(1)では、貸金業者への監督にあたっての留意事項として「債務者、保証人その他の債務の弁済を行おうとする者から、帳簿の記載事項のうち、当該弁済に係る債務の内容について開示を求められたときに協力すること」が規定されています。

 

したがって、弁護士等の法的専門家に依頼せずとも、貸金業者と取引のある顧客は、貸金業者に対し、貸金業者の保管する取引履歴の開示を求めることができ、貸金業者はこの顧客の要求を拒絶することはできません。

 

開示請求をしないサラ金業者など

しかしながら、上記の最高裁判決が出されて数年が経過する現在でも、法的専門家に依頼しないまま取引履歴の開示請求を行う場合、サラ金業者等の担当者が、何かと理由をつけては、取引履歴の開示請求に応じようとしない場合が、ままあるようです。

 

悪質な貸金業者の対応

さらに、悪質な貸金業者の場合、弁護士が代理人として取引履歴の開示請求を行っても、取引履歴の開示請求に一切応じない、事実と異なる虚偽の取引履歴を開示する、一部の取引履歴しか開示しない、という対応をとることもあります。

 

このような場合には、上記に指摘した最高裁判決や金融庁事務ガイドラインを根拠に、監督官庁に対して、当該貸金業者に関し行政処分を求める申告書を提出して、取引履歴を開示させるようにします。

 

それでも取引履歴の開示請求に応じない貸金業者に対しては、取引履歴の不開示を理由に、損害賠償請求訴訟を提起し、その訴訟の中で、文書提出命令申立を行って、裁判所を通じて、貸金業者の保有する取引履歴の開示を求めていくことも検討しなくてはなりません。

 

しかし、監督官庁や裁判所を通じて、貸金業者に取引履歴を開示させようと考える場合、その貸金業者との間で実際に取引があったことを示す書類(契約書、領収書等)等の証拠がなければ、開示を求める側の主張が認められない場合もありますので、いずれにしても、貸金業者と取引があったことを示す書類を保管しておくことは重要と言えます。


弁護士 前田 尚一(まえだ しょういち)
前田尚一法律事務所 代表
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、弁護士として30年を超える経験、実績を積んできました。
交通事故、離婚、相続、債務整理・過払い金請求といった個人の法律問題に加え、労務・労働事件、クレーム対応、債権回収、契約書ほか企業法務全般も取り扱っています。


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