今ひとつ,「コンプライアンス」の意味がピンとこない!? - 札幌の弁護士|前田尚一法律事務所
今ひとつ,「コンプライアンス」の意味がピンとこない!? - 札幌の弁護士|前田尚一法律事務所
先日,で,個人情報の価値を流出した企業側のトンデモナイ結末や逆の事例などをご紹介いたしました。
⇒ 個人情報の流出と企業のトンデモナク重い責任と災いを福に転じた例
このお話は,ますます重要視されるようになった「コンプライアンス」にかかわることなのですが,今ひとつ,「コンプライアンス」の意味がピンとこない方が多いようなので,ほんのさわりだけご説明いたします。
さて,日本では,「法令遵守」と意味で用いられています。この場合,法令という言葉には,法律だけではなく,広く倫理・道徳などの社会的規範も含んで使われるのが通例です。
コンプライアンスは,各人の遵法精神を期待し,「法令遵守」を唱えるというだけではなく,現実に法令が遵守されている状態を継続するために,ルール,体制,手段を整えるなど有効な仕組み作りを実施することまでも含む考え方なのです。
法律などを守らなければならないことは,言うまでもない当たり前のことです。しかし,現場は現実を優先しがちですから,外部の温度差があり,回避するための仕組みが必要なのです。
背景を理解すると分かりやすいと思います。
特に2000年以降,消費者や投資家の被害が意識されるような企業の不祥事が多発しました。企業の違法行為・背信的行為に対する社会の目が厳しさを増し,社会の意識は大きく変化しました。このような中で,企業にとって,利益優先で活動することはかえってリスクが大きくする一方,法令遵守を実現する企業は,その企業価値を高めることになる状況となったのです。
個人情報流出事件として,51万人分の顧客リストが社外へ流出したジャパネットたかたの事案が有名です。同社の売上げは,前年705億円でしたが,この事件が起きた2004年には663億円にまで落ち込みました。しかし,同社の売上げは2006年には1000億円を超え,2008年には1371億円となっています。同社は,事件発覚後,テレビや新聞で謝罪を繰り返し続
け、消費者に対し適切な対応をしたことが評価されており,かえって企業イメージを向上させた好例です。
このような背景の中で,コンプライアンスが重要視されるのは,今日,一旦不祥事を起こした場合の企業責任は極めて大きなものであって,企業の存立さえもおびやかしかねないものであるということです。企業が不祥事を引き起こした場合の責任としては,民事責任,刑事責任,行政責任といった法的責任が考えられます。今日では,一旦不祥事が発覚すると,社会的責任や道義的責任までも徹底して追及されることになります。引責辞任はもとより風評被害といった社会的制裁に及ぶことも少なくありません。雪印集団食中毒事件を発端としてグループの解体・再編を余儀なくされた雪印企業グループの例は衝撃的なことでした。
しかも,企業自体または担当者が思っている以上に,不祥事が発覚しやすくなっているという現状にあることも重要でしょう。もちろん発覚しなければよいという意味ではありませんが,外部の監視の目が厳しくなっていることに加え,公益通報者保護法が施行されたとおり,内部告発を原則的に正当化するのが現在の流れなのです。
なお,このように考えると,現実に法令が遵守されている状態を継続する仕組みの中には,場合に,損害を最小限に抑えるための対応としては,記者会見・謝罪・説明,リコールなどの在り方も含まれることになるでしょう。
弁護士 前田 尚一(まえだ しょういち)
前田尚一法律事務所 代表
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、弁護士として30年を超える経験、実績を積んできました。
交通事故、離婚、相続、債務整理・過払い金請求といった個人の法律問題に加え、労務・労働事件、クレーム対応、債権回収、契約書ほか企業法務全般も取り扱っています。
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