妻の視点からみた離婚時年金分割制度|札幌弁護士.com - 札幌の弁護士|前田尚一法律事務所
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これまでパートナーであった夫又は妻と離婚する場合,相手方に対し,何を請求できるか。
特に,一般的に,女性が経済的弱者である場合が多いため,離婚後の新生活のためにも,この問題は重要といえるでしょう。
離婚時に相手方に請求するものとしては,財産分与・慰謝料・養育費等が挙げられますが,今回は,主に妻の視点からみた離婚時年金分割制度について,簡単に述べようと思います。
離婚時に請求する財産分与や慰謝料においては,一括又はこれに近い回数での分割で支払われることが多く,一生涯毎月固定額を支払うという形式はあまり現実的なものではありません。また,離婚時の年齢によっては新たに職を見つけることが難しいことも大いにあり得ます。
さらに,専業主婦の方には,就労した経験がない又は短い方も相当数いるため,離婚時年金分割制度を利用しなければ,高齢期に十分な年金を受給できないという事態も予想されます。
では,離婚時年金分割制度とは何か。簡単にいうと,「年金額を計算する基礎である,保険料納付実績(共済年金では掛金払込記録)を分割する手続」です。最大で2分の1ずつでの分割請求が可能となります。
勘違いされやすいのですが,例えば,将来夫が20万円の年金を受給する場合に,2分の1での分割請求をしても,妻が将来10万円の年金を受給できるというものではありません。あくまで20万円を受給するために夫が納めていた保険料の2分の1を妻が納めていたことになるだけであり,実際の受給額は10万円よりも低いものとなります。
さらに,全国民の基礎年金である国民年金(1階部分)及び国民年金基金や厚生年金基金といった,いわゆる3階部分は分割の対象とはならず,①厚生年金,②国会公務員共済年金,③地方公務員等共済年金,④私立学校教職員共済年金で構成される2階部分のみが分割の対象となります。
そして,年金分割の請求が可能なのは,平成19年4月1日以降に離婚した者に限られますが,同日以降の離婚であれば,婚姻期間全部がその対象となります。これを,「合意分割」といいますが,平成20年4月1日以降は,配偶者の一方が,同日以降に,厚生年金保険法上の第3号被保険者であった期間について,他方配偶者(第2号被保険者)の保険料納付実績を当然に2分の1に分割できる,「3号分割」も可能となりました。
なお,年金を受給するには,原則として保険料納付済期間,保険料免除期間,及び合算対象期間の合計である受給資格期間が,25年以上であることを要します。それ以外の方が年金分割請求をしても,年金をもらうことはできません。
次に,具体的な手続の内容について見ていきましょう。
まず,手続上は,夫婦であった者のどちらか一方から,厚生労働大臣等に対する請求となるため,請求者の現住所を管轄する日本年金機構事務所(共済年金の場合は共済組合等)へ所定の請求書を提出することとなります(なお,離婚前に全ての手続を完了させることはできません。)。
そして,この請求書に添付しなければならない基本的な書類として,当事者の基礎年金番号のわかる書類,戸籍謄本や抄本等,分割する割合を定めた書類の謄本や抄本(合意分割の場合:公正証書,調停調書,和解調書等)などが挙げられますが,これらはその取得に一定の手続が必要となるものばかりです。
また,年金分割の請求は,原則として離婚の翌日から2年以内にしなければなりませんが,法律上の婚姻に限られず,いわゆる内縁関係といった事実婚の場合であっても,その解消に伴い,年金分割の請求が可能な場合もあります。
次に,当然に2分の1に分割される3号分割とは異なり,合意分割においては,あくまで当事者間に,分割する割合についての合意がなければなりません。当事者間のみで合意が成立しない場合には,調停や審判といった,裁判所での手続を行う必要があります。
そして,年金分割の調停や審判は,離婚調停等と合わせて同時に行うことが通常であり,ご自分のみで全てを処理することは大変なご負担になることでしょう。
当事務所では,離婚に関する現在の問題を解決するだけではなく,その方の今後の新生活のために何がベストなのかを常に視野に入れて動いています。
そして,ベストを尽くすためにはタイミングも重要です。
まずは,ご相談ください。専門家である我々弁護士と話をすることによって初めてご自分の抱えている問題の大きさに気付かれる方も多数いらっしゃいます。
弁護士 前田 尚一(まえだ しょういち)
前田尚一法律事務所 代表
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、弁護士として30年を超える経験、実績を積んできました。
交通事故、離婚、相続、債務整理・過払い金請求といった個人の法律問題に加え、労務・労働事件、クレーム対応、債権回収、契約書ほか企業法務全般も取り扱っています。
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