データ消失・・・損害賠償請求は? - 札幌の弁護士|前田尚一法律事務所
データ消失・・・損害賠償請求は? - 札幌の弁護士|前田尚一法律事務所
毎日新聞 平成12年1月30日朝刊に寄稿したもので、
いわば“先駆け”の内容です。
私は,ファイナンシャル・プランナーの資格を取り,毎日,ノートパソコンを片手に,クライアント(顧客)の間を走り回っています。
必要な資料や顧客データはすべてノートパソコンに管理していました。
ところが,車で移動中,信号無視の車に追突され,パソコンが壊れ,中のデータがすべて消失してしまいました。
このデータ消失による損害賠償を請求することはできるでしょうか。
(ファイナンシャル・プランナー、35歳)
あなたにとって顧客データーの消失は死活問題でしょう。しかし,現実問題として,裁判所でその被害の大きさを証明できるかが問題となります。
参考になる事例として,毎日新聞1999年9月3日朝刊に掲載された神戸地裁の判決があります。
定年退職後に農業をするため学んだデータをノートパソコンに保存していた男性が,パソコンを修理に出したところ,ハードディスクがなくなり,データーが消失したとして,家電量販店に損害賠償を求めたというケースでした。
裁判所は,「データに経済的な価値があるとはいえないが,男性の並々ならぬ労力が投入されている」としてデータ消失の慰謝料は100万円と算出しましたが,「パソコン使用者はバックアップ用データも保存しておくべきだ」として過失相殺したうえ,60万円の支払いを命じました。
ハードディスク自体が壊れてしまったような場合であれば,通常,どのようなデータが入っていたかを証明するのは大変難しいものです。
しかも,データーの「価値」を正面から認めるのもなかなか困難で,「労力」に目を向けなければならざるを得ない場合が少なくないでしょう。
一方で,使用者がデータのバックアップをとることも常識であるともいえるでしょう。
相談者の場合も,データー消失によって起きた数々の不利益を補てんするのに十分な賠償金を認めてもらうことは難しいと考えられます。
やはり大事なモノを守るために自分で可能な防衛策をとっておくことも日ごろから心がけておかなければならないでしょう。
弁護士 前田 尚一(まえだ しょういち)
前田尚一法律事務所 代表
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、弁護士として30年を超える経験、実績を積んできました。
交通事故、離婚、相続、債務整理・過払い金請求といった個人の法律問題に加え、労務・労働事件、クレーム対応、債権回収、契約書ほか企業法務全般も取り扱っています。
前田法律事務所
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