何をいまさら……「消えゆく 正社員の手当」 - 札幌の弁護士|前田尚一法律事務所
何をいまさら……「消えゆく 正社員の手当」 - 札幌の弁護士|前田尚一法律事務所
「消えゆく 正社員の手当」
「同一労働同一賃金の余波、反発で訴訟 給与体系改変で補償も」
日本経済新聞令和3年10月25日の記事の見出しです。
この記事のリード部分では,「非正規社員に正社員と不合理な待遇差をつけることを禁じた「同一労働同一賃金」法制に合わせ、正社員の手当を削る企業が増えている。中には正社員が反発して訴訟に発展する例も出てきた。格差是正の取り組みが事実上の賃金カットとの批判を招くか、給与体系の改善で従業員の士気を高めるか。各社の経営手腕が問われる。」と述べられています。
⇒ https://www.nikkei.com/article/DGKKZO76881930S1A021C2TCJ000/
しかし,正直申し上げて,何をいまさらというのが,実感です。
「同一労働同一賃金」の問題・対応が社会問題化した時点で,少し考えれば,そのような事態が頻繁に起こり出すことは明らかなことでした。
私も,「働き方改革関連法」制定・施行前に,二つの最高裁判決(「長沢運輸事件」,「ハマキュウレックス事件」)が出されたタイミングで触れるべきと考え,その解説で,次のように述べて,安易に,早急の抜本的な対策を実施すると,面倒が起きることを前提に対応すべきことを指摘しておきました。
「一般論としてはそのとおりですが,待遇格差を是正するということは,正社員の待遇をそのままにして非正規社員の待遇をそれに近づけていくということですから,企業としては,収入が伸びないまま,経費がかさんでいくといことで,拙速にやり方を間違えると,収益構造が崩壊いしかねません。一方,経営者側で考えなければならないことは,それでもなお,ここ数年に急激に進行した構造的な「人手不足」にどのように対応しなければなりません。人材の確保・定着の観点からすると,むしろ企業側で,積極的に待遇格差を是正していかなければならない場面が到来しています。」
しかし,世間では,この際も,賃金あるいは諸手当の支給の格差が問題となるかとか,二つの判決の違いはなにかといったことばかりが話題となっており,その先の,正社員との関係で起こり得る問題はほとんど意識されていなかったようです。
法律の制定・改正は,もちろん一定の目的があって実施されますが,多くの場合,「目的」は,スローガンに近く,その求めるところに従って対応するのと同時に同じ速度で,利害関係者が期待する成果が出るわけではありません。
その辺りをきちんと明確に確認し,リスクも踏まえて将来を見越し,対応しなければなりません。
特に,労働関係の法律については,経営者にとって,まずはゼロサムであることを踏まえて対応しなければならない
仕事柄,お客様ばかりではなく,多くの経営者と関わってきましたが,まずはゼロサムであることを踏まえて対応される方は手堅い経営を成功されています。中には,ゼロサムどころか,丸取り,錬金術志向の方もいらっしゃいましたが,,多くの場合,長いお付き合いにはなりませんでした。
もちろん,ゼロサムを踏まえて,特に成果をあげられる方は,加えての志向・行動が見られますが,それは,また別の機会に。
弁護士 前田 尚一(まえだ しょういち)
前田尚一法律事務所 代表
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、弁護士として30年を超える経験、実績を積んできました。
交通事故、離婚、相続、債務整理・過払い金請求といった個人の法律問題に加え、労務・労働事件、クレーム対応、債権回収、契約書ほか企業法務全般も取り扱っています。
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