目次
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リツイート責任、二審も認定 橋下氏への名誉毀損、控訴棄却
「ツイッターで他人の投稿を体裁する「リツイート」で名誉を傷つけれたとして,元大阪府知事の橋下徹氏がジャーナリストの岩上安身氏に慰謝料など110万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が23日,大阪高裁であった。西川知一郎裁判長は岩上氏に33万円の支払いを命じた一審・大阪地裁判決を支持し,岩上氏側の控訴を棄却した。」とリードして掲載された令和2年6月25日朝日新聞で掲載された記事の見出しです。
以下では,この,ツイートが単純リツイートであっても,人の社会的評価を低下させる内容の表現を含むものであれば,その投稿について不法行為責任を負うと判断した判決を紹介します。
1 注目すべき点
(1)この大阪高等裁判所令和元年(ネ)第2126号同2年6月23日判決では,争点はいくつかありますが,まず,押さえておかなければならない最重要事項は,次のことです。
リツイートには単純リツイートと引用リツイートの2種類があり,前者は,自己のコメントを付けずに他者(元ツイート主)のツイートを他者(元ツイート主)の名義のまま転送するもの,後者は,自己のコメントを付けて他者(元ツイート主)のツイートを自己の名義で転送するものです。
この判決は,ツイートが単純リツイートであっても,人の社会的評価を低下させる内容の表現を含むものであれば,その投稿について不法行為責任を負うと判断したことです。
(2)しかし,ここで注意しなければならないことは,元大阪府知事の橋下徹氏の場合であっても,弁護士費用も含め,認められた損害賠償額は33万円にすぎないということです。
この判決をみると,双方,多大な時間と労力をかけ,徹底して闘ったこtごが窺われ,弁護士報酬だけ考えても,33万円では足りないだろうと推察されます。
もし,原告とし本訴をて提起するとすれば,極端にいうと,まずは,勝つことだけを目指し,もろもろの費用に糸目を付けない覚悟が必要となるでしょう。
2 本件訴訟について
本件は,【事案の概要】のとおり,橋下氏が岩上氏に対する本訴請求を,これに対し,岩上氏が橋下氏に対する反訴請求をした事案です。
第1審は,橋下氏の本訴請求のうち33万円及び遅延損害金の支払を認容する一方,岩上氏の反訴請求を棄却しました。
これに対し,岩上氏が控訴しましたが,大阪高裁は,【裁判所の判断】の説示して,控訴を棄却しました。
なお,ここでは掻い摘まんでのまとめをしますが,判決も掲載しておきますので,興味のある方のために,ご参照ください。
【事案の概要】
(1)本訴請求
橋下氏(原告,被控訴人)が,ツイッター(インターネットを利用してツイートと呼ばれる140文字以内のメッセージ等を投稿することができる情報ネットワーク)における岩上氏の橋下氏に関する投稿(以下「本件投稿」といいます。)が橋下の名誉を毀損すると主張して,岩上氏(被告,控訴人)に対し,不法行為に基づく損害賠償請求として,慰謝料(100万円)及び弁護士費用(10万円)の合計110万円及びこ遅延損害金の支払を求めた事案
(2)反訴請求
岩上氏(反訴原告,控訴人)が,橋下氏による本訴提起行為が訴権の濫用である「スラップ」に当たると主張して,橋下氏(反訴被告,被控訴人)に対し,不法行為に基づく損害賠償請求として,肉体的・精神的・財産的損害の300万円及び遅延損害金の支払を求めた事案
【裁判所の判断】
「(2)本件投稿行為と控訴人の不法行為
控訴人は,本件投稿をしたことを認めているところ,本件投稿は,本件元ツイートを単純リツイートしたものであるから,前記1(1)イのとおり,控訴人の本件投稿行為によって,本件元ツイートがそのままリツイート主である控訴人のツイッター画面のタイムラインに表示されるとともに,控訴人のアカウントをフォローしているフォロワーのタイムラインに表示されることになる。前記1(1)イのとおり,単純リツイートの場合,リツイート主のアカウントのフォロワーのツイッター画面のタイムラインには,元ツイート主のアイコン及びアカウントが表示されるとともに,その上部に,リツイート主(アカウントでもって表示)がリツイートしたことを表す記載が小さい文字で表示される。
以上によれば,単純リツイートに係る投稿行為は,一般閲読者の普通の注意と読み方を基準とすれば,元ツイートに係る投稿内容に上記の元ツイート主のアカウント等の表示及びリツイート主がリツイートしたことを表す表示が加わることによって,当該投稿に係る表現の意味内容が変容したと解釈される特段の事情がある場合を除いて,元ツイートに係る投稿の表現内容をそのままの形でリツイート主のフォロワーのツイッター画面のタイムラインに表示させて閲読可能な状態に置く行為に他ならないというべきである。そうであるとすれば,元ツイートの表現の意味内容が一般閲読者の普通の注意と読み方を基準として解釈すれば他人の社会的評価を低下させるものであると判断される場合,リツイート主がその投稿によって元ツイートの表現内容を自身のアカウントのフォロワーの閲読可能な状態に置くということを認識している限り,違法性阻却事由又は責任阻却事由が認められる場合を除き,当該投稿を行った経緯,意図,目的,動機等のいかんを問わず,当該投稿について不法行為責任を負うものというべきである。
本件投稿及び本件元ツイートの内容は,上記1(2)イのとおりであり,本件元ツイートに元ツイート主のアカウント等の表示及び控訴人がリツイートしたことを表す表示が加わることによって,本件元ツイートに係る表現の意味内容が変容したと解釈される特段の事情があるとは認められない。そうすると,控訴人の本件投稿行為は,本件元ツイートの表現内容をそのまま控訴人のアカウントのフォロワーのツイッター画面のタイムラインに表示させて当該フォロワーの閲読可能な状態に置いたことに他ならず,引用に係る原判決第2の2(2)ア(ア)の前提事実のとおり,本件投稿当時,控訴人のアカウントのフォロワーは18万人を超えていたというのであるから,控訴人の本件投稿行為によって,本件元ツイートの表現内容がそのまま18万人を超える控訴人のアカウントのフォロワーのツイッター画面のタイムラインに表示され,閲読可能な状態に置かれたものである(さらに,当該フォロワーが本件投稿を単純リツイート等すれば,本件元ツイートの表現内容が更に多くの閲読者の閲読可能な状態に置かれることになる。)。したがって,本件元ツイートの表現の意味内容が一般閲読者の普通の注意と読み方を基準として解釈すれば他人の社会的評価を低下させるものであると判断される場合,控訴人が本件投稿によって本件元ツイートの表現内容を自身のアカウントのフォロワーの閲読可能な状態に置くということを認識している限り,違法性阻却事由又は責任阻却事由が認められる場合を除き,本件投稿を行った経緯,意図,目的,動機等のいかんを問わず,本件投稿について不法行為責任を負うものというべきである。上記のとおり,控訴人は,本件投稿をしたことを認めており,本件投稿により本件元ツイートの表現内容を自身のアカウントのフォロワーの閲読可能な状態に置くことについての認識を欠いていたことをうかがわせるような証拠はないから,本件元ツイートの表現の意味内容,すなわち,本件投稿の表現の意味内容が被控訴人の社会的評価を低下させるものである限り,違法性阻却事由又は責任阻却事由が認められる場合を除き,控訴人は,被控訴人に対し,本件投稿について不法行為責任を負うものというべきである。」
[参考]
人の社会的評価を低下させる内容の表現を含むツイートを単純リツイートした者がその投稿について不法行為責任を負うとされた事例
(大阪高裁令和元年(ネ)第2126号同2年6月23日判決・公刊物未登載)
主 文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。
2 上記部分につき,被控訴人の請求を棄却する。
3 被控訴人は,控訴人に対し,300万円及びこれに対する平成29年12月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 訴訟費用は,本訴反訴を通じ,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
5 この判決は,第3項に限り,仮に執行することができる。
第2 事案の概要
1 事案の概要
本件は,被控訴人が,ツイッター(インターネットを利用してツイートと呼ばれる140文字以内のメッセージ等を投稿することができる情報ネットワーク)における控訴人の原判決別紙1のとおりの被控訴人に関する投稿(以下「本件投稿」という。)が被控訴人の名誉を毀損すると主張して,控訴人に対し,不法行為に基づく損害賠償請求として,慰謝料(100万円)及び弁護士費用(10万円)の合計110万円及びこれに対する不法行為日(本件投稿の日)である平成29年10月29日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める本訴請求と,控訴人が,被控訴人による本訴提起行為(以下「本件提訴」という。)が訴権の濫用である「スラップ」に当たると主張して,被控訴人に対し,不法行為に基づく損害賠償請求として,肉体的・精神的・財産的損害の300万円及びこれに対する不法行為日(本訴提起日)である平成29年12月15日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める反訴請求の事案である。
2 前提事実(当事者間に争いがないか,掲記の証拠及び弁論の全趣旨により明らかに認定できる事実),争点及び争点に関する当事者の主張は,後記3において「当審における控訴人の補充主張」を,後記4において「当審における控訴人の補充主張に対する反論」を追加するほかは,原判決「事実及び理由」中第2の2ないし4記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決9頁11行目の「原告は,」を「控訴人は,」と,11頁4行目の「本件提起」を「本件提訴」と各改める。
3 当審における控訴人の補充主張
(1) 本件投稿による名誉棄損の有無
本件投稿の閲読者は,被控訴人のA知事時代の言動にも関心を持ち,過去に実際にA職員の中で発生した自殺事件のことに関心を持ち続けており,そのような背景や意図等を十分理解し又はそれを理解しようとする者と捉えるべきであり,本件投稿の内容が,被控訴人の公人であった時期の公的評価に関わる言論で,「対抗言論」の可能性が十分にあったのであるから,本件投稿が被控訴人の社会的評価を低下させるべき性質のものであったかは疑問である。
ア 単純リツイートの表示と閲読者の読み方
リツイートには単純リツイートと引用リツイートの2種類があり,前者は,自己のコメントを付けずに他者(元ツイート主)のツイートを他者(元ツイート主)の名義のまま転送するもの,後者は,自己のコメントを付けて他者(元ツイート主)のツイートを自己の名義で転送するもので,本件投稿は単純リツイートである。
元ツイート主の投稿を単純リツイートするには,その投稿の下部に表示された□のアイコンをクリックして「リツイート」と「コメントを付けてリツイート」を表示させ,そのうちの「リツイート」という表示をクリックするという瞬時かつ簡単な動作をするだけでよい。これにより,そのツイート内容がリツイート者をフォローする人々の画面にも表示されるようになる。単純リツイートされた投稿は,元ツイート主の顔写真(アイコン)と氏名が画面上に表示されるという点で,元ツイートと同様の表示方法となる。
これに対し,引用リツイートをするには,元ツイート主の投稿の下部に表示された□のアイコンをクリックして「リツイート」と「コメントを付けてリツイート」を表示させ,そのうちの「コメントを付けてリツイート」という表示をクリックした上で,自己のコメントを入力してから「ツイート」のアイコンをクリックするという作業が必要で,したがって,単純リツイートのように操作が瞬時に完了するというものではない。引用リツイートも自分のフォロワーのツイッター画面に表示されるが,画面上は元ツイート主の投稿ではなく,あくまで自分のオリジナルの投稿として表示される。画面には自己の顔写真(アイコン)と氏名が表示されるものである。
ツイッターの投稿は,その冒頭に投稿者の顔写真(アイコン)と氏名が大きく表示されるが,上記のとおり,単純リツイートの場合は,リツイートした者ではなく元ツイート主の顔写真と太文字の氏名が大きく表示される。それがリツイートであることは,「〇〇〇さんがリツイート」という小文字の表記を注視すれば判読できるが,その表記は元ツイート主の顔写真や氏名のように大きく表示されないので,通常の閲読者が直ちに気付くことはない。したがって,単純リツイートを読む者は,それを「元ツイート者の投稿」として受け取ることになるのであるから,前後のツイートからリツイート主の意図が看取できる場合でない限り,単純リツイートからリツイート主の賛成・反対の意図は読み取れないというべきである。
イ 一般閲読者の解釈とリツイート文の読み方
およそ一つの表現は,当該表現が発信された状況に着目し,その発信状況の中に置かれた一般閲読者(本件ではツイッターメディアの一般読者)が当該表現を普通の注意と読み方で読むとき,どのような意味内容で受け取るかを吟味すべきである。また,政治的影響力を持った公人への批判的表現は,民主主義社会の中での自己統治的価値を有する表現として憲法上最大限に保護,尊重されなければならないから,このような表現が名誉棄損に当たるか否かを判断するに当たっては,かかる表現がなされるに至った経緯,公人への批判的表現の意図,批判の相手先など諸事情に着目して,これを受け取る一般読者が,この表現をいかに理解して読むかに着目した読み方がされるべきである。
ウ 本件では,公党であるBの会の創立者であり,近い過去にA知事,C市長という公職にあった被控訴人が,ツイッターメディアにおいて,D衆議院議員(以下「D議員」という。)に対し「ボケ」という言葉を連発する侮辱的な発信を行っていたことに端を発している。このツイート内容のやり取りを閲読している一般通常人としては,被控訴人とD議員という二人の公人が,(年上の人間に対する)口の利き方,ものの言い方をめぐって熱い議論をしていることは当然認識し得ることである。元ツイート主は,上記の被控訴人とD議員との間のやり取りにおける被控訴人のD議員への度重なる暴言に対する公の憤りから本件投稿をしたものである。
そして,元ツイートの本文で指摘されている事実関係も,ツイート文面から「意味内容」が無理なく特定できるものである。すなわち,「時期」は,被控訴人が平成20年2月に「30代でA知事になったとき」で,その時の被控訴人の満年齢は38歳であった。「20歳以上年上のAの幹部たちに随分と生意気な口をきき」という文言は,被控訴人が,知事就任時,実際に目上,年上のA幹部たちにも遠慮なく命令口調を使用し,知事の指揮命令権を前提に,いわゆる「尊大で生意気な口」をきいていたという歴史的事実を述べるものである。そして,「自殺にまで追い込んだことを忘れたのか!恥を知れ!」につながる。ここまでの経過に鑑みれば,ここで「自殺にまで追い込んだこと」というのは,被控訴人の知事就任後の度重なる「尊大で生意気な口のききかた」が継続し,それが帯状に各方面に影響を及ぼし,その延長線上に現実としてAの中で発生し,その旨の報道・出版も相次いだ●年●月のE参事の入水自殺事案(以下「本件自殺事件」という。)のことを指し示すとしか他に理解のしようがない。
以上からすれば,本件投稿の本文で指摘されている事実関係が,「被控訴人が30代でA知事になった時期」に複数の幹部たちに対し,「被控訴人がA知事の権限・威光を背に高圧的かつ尊大な態度を取り」,そのプロセスと,広がる影響の中で実際に発生した本件自殺事件のことを指し示すことは,本件投稿の文言上明らかであり,本件投稿において指摘されている自殺事案が,●年●月に実際にA職員の中で発生したE参事の事案(本件自殺事件)であることは,当時の報道記録内容やAの調査結果の存在等からも,元ツイート主のツイートに至る経過から考えても,決して無理筋の解釈ではない。被控訴人も,原審における文書提出命令却下決定前には,本件投稿について,被控訴人によるパワハラと職員の自殺との間に直接的因果関係が必要であるとの主張をしていなかった。
エ 本件投稿の閲読者は,上記ウの被控訴人とD議員のやり取りに特段の興味・関心もなく,本件自殺事件にも特段何らの関心も示さない政治的・社会的無関心層を念頭に置くべきではなく,かつてA知事やC市長の公職にあり,現在も大きな政治的影響力のある被控訴人の言動に心を痛め,過去の同人のA知事時代の言動にも関心を持ち,過去に実際にA職員の中で発生した本件自殺事件のことに関心を持ち続けており,公的立場での発言を繰り返す上記2人のやり取りや,本件元ツイート主の意図等を十分理解し又はそれを理解しようとする者と捉えるべきである。表現の自由(憲法21条)の憲法的価値に着目すれば,その表現が政治的影響力の大きい被控訴人への批判として行われているときは,文理だけでなくその表現がどのような人物のいかなる行為への批判として発せられたのかに着目すべきことは当然である。そして,次のとおり双方向性を有する言論空間に参入する一般閲読者がリンク先や本件投稿に先行する被控訴人のツイート内容に注目するのはむしろ当然のことというべきである。
なお,本件元ツイート主のツイートがされた背景・経過は,SNS上双方向的な議論の空間の中で,次々と展開される議論・発言の中で出てきたものである。そこでの表現は,常に動的なものであり,可変的であり得る。相手方の指摘を受け修正する余地もあれば,より表現の意図が明確になる場合も十分にある。その方法と手段を双方が持ち得ている,それがSNSを媒体として利用する表現方法の特質でもある。したがって,本件のように,言論の相手方が公人であった時期の公的評価に関わる言論であり,「対抗言論」の可能性が十分にある中での本件投稿の内容は,それ自体,本当に被控訴人の社会的評価を低下させるべき性質のものだったのかは疑問である。
(2) 本件投稿に関する違法性阻却事由の有無
本件投稿に先行する報道,論文,書籍等から被控訴人の言動が間接的要因となり,その結果,本件自殺事件が惹起されてしまったという事実が認められるから,本件投稿には真実性が認められ,また,控訴人は,上記報道,論文,書籍等に目を通し,予備取材も行ったのであるから,控訴人が本件投稿が真実と信じるについて相当な理由がある。さらに,本件元ツイートの記載が被控訴人の威圧的言動が間接的要因となりその結果本件自殺事件が惹起されてしまったと表現しているものと理解してリツイート(本件投稿)をしたことについて,控訴人に過失も認められない。
ア 真実性及び真実相当性
被控訴人は,平成22年9月5日から同月8日までFを訪問したが,その際,日程調整を担当していたのは商工労働部であった。被控訴人は,G側から反発される可能性があったことから,民間の経済交流の範囲内に限定したのに,Fの経済大臣との会談が設定されており,被控訴人は,訪F後,職員に指示して日程を変更させた。被控訴人は,このことについて,同月14日の部長会議において,商工労働部長等に対し,厳しく叱責する発言を繰り返したが,この議事録概要は直ちに公開され,参事も閲覧して大きなショックを受けたものと認められる。叱責された商工労働部長は,訪F日程の現場責任者であった商工労働部参事とその上司である商工振興室長を強く叱責し,さらに室長が参事に叱責を加えた。以上のように,被控訴人の部長会議での商工労働部長に対する叱責が参事を追い詰めていたこと,商工部長等を通じて被控訴人の叱責が参事に及んだことが参事の自殺(本件自殺事件)の引き金となった。したがって,被控訴人の言動が間接的要因となり,その結果A職員の自殺が惹起されてしまったという事実は真実である。
控訴人は,本件投稿をする以前,本件自殺事件について,先行報道,必要な書類・議事録に目を通し,予備取材も行っており,相当の知識を持って本件投稿をした。したがって,控訴人が,「20歳以上年上のAの幹部たちに随分と生意気な口をきき,自殺にまで追い込んだ」との本件投稿を真実と信じるについて相当な理由がある。
イ 過失の不存在
控訴人は,本件投稿をする以前,本件自殺事件について先行報道,必要な書類・議事録に目を通し,予備取材も行い,相当の知識を持っており,そうした認識状況から,「20歳以上年上のAの幹部たちに随分と生意気な口をきき,自殺にまで追い込んだ」との本件元ツイートを読み,この記載は,被控訴人の威圧的言動が間接的要因となり,その結果,本件自殺事件が惹起されてしまったと表現しているものと理解し,そこで,本件投稿を行ったものである。本件元ツイートの「20歳以上年上のAの幹部たちに随分と生意気な口をきき,自殺にまで追い込んだ」との文言は,被控訴人が随分と生意気な口をきいたAの幹部たちと自殺した人物が同一であると明確に指摘しているわけではなく,自殺した人物が被控訴人が生意気な口をきいたAの幹部たちに含まれるかどうかが不明であるから,控訴人が本件元ツイートの記載を上記のとおり理解したことについて過失は認められない。
(3) 被控訴人の損害の有無・内容
本件においては,裁判所が賠償を命じるべき損害は何ら証明されておらず,賠償金の支払によって回復されるべき被控訴人の損害は存在しない。
ア 控訴人は,社会問題や政治問題について取材活動を重ねているジャーナリストであり,H社のウェブサイトやSNSを媒体として数多くの取材映像を発表しているが,テレビのレギュラーコメンテーターを務めていたのは平成23年6月までであり,雑誌の定期執筆記事はない。また,控訴人の見解や論稿が説得力あるものとして論壇で注目されたり,他の評論や文献において引用されたりする例はほとんどなく,控訴人の評論活動が現代社会の風潮や世論に多大なる影響を与えているというものではない。
イ 上記(1)アのとおり,ツイッターにおけるリツイートの表示方法は,リツイート主(本件においては控訴人)が自ら発信したかのような体裁で表示されるものではなく,元ツイート主(本件においては「@(以下省略)」氏)が自ら発信した体裁で表示される。そのため,ツイッター利用者が自らのパソコンやスマートフォンのツイッター画面(タイムライン)を閲覧した場合に,「@(以下省略)」が発信したものか控訴人がリツイートしたものか,あるいは他の第三者がリツイートしたものかは明確に判別されない。
また,新聞や雑誌における署名記事とインターネット上で他者の氏名表示の下で引用した文章とは体裁上も明確に区別でき,読者にとって,それがジャーナリストとしての調査取材に基づくものであるか否かは一目瞭然である。読者が各表現内容に対して抱く信用性の大きさは,こうした表現形態に大きく左右されるのであって,本件投稿を読んだ者は,あくまで「@(以下省略)」を名乗る氏名不詳の他者が発信した情報という程度にしか受け取らない。このようなリツイートとしての本件投稿の体裁からすれば,控訴人がリツイートしたものであるからといってその信用性や影響力が大きくなるというものではない。
本件投稿の文字数はわずか約130字という短さであり,自殺に追い込んだとする被控訴人の発言や行動について具体的事実の叙述もないのであって,特に根拠となる報道記事や資料を摘示しているものでもない。
したがって,これを読んだ者は,投稿内容が事実である蓋然性が高いものとは到底思わないはずである。
ウ インターネット上の言論表現は,次々に新規の情報が流される中で早期に忘却される情報である。また,控訴人のツイッターにはフォロワーが約18万人いるが,ツイッターは1人の者が多数の人物をフォローしているので,フォロワーからすれば,控訴人は多数のフォロー対象のうちの1人にすぎず,ツイッターを開いてみたときに,たまたま控訴人のリツイートが目に入る人数は18万人より相当少ないはずである。
控訴人は,本件投稿をした翌日または数日以内に本件投稿を削除した。ツイッター画面の特性として,次々に新規投稿が上部に表示され蓄積されるから,古い投稿やリツイートは,順次下方に押し出されていき,ついには過去の投稿に格納されて画面上に表示されなくなり,画面の一番下に表示される「続きを見る」という文字をクリックしなければ見ることはできなくなる。したがって,本件投稿が1か月半後まで多数人の目に触れたという事実はない。
エ 上記ウのとおり,控訴人のツイッターのフォロワー18万人の全員が本件投稿を読んだとは認められず,どの程度にまで本件投稿が拡散したかは明らかでない。
他方で,被控訴人のフォロワーは約214万人いるが,被控訴人は自らに向けられた本件投稿の内容を公表しているから,本件投稿の内容は被控訴人にとって公開や拡散をされたくないものとはいえないことがうかがわれ,このことは被控訴人の損害が存在しないか小さいことを裏付け得るものである。
名誉棄損と評価される行為が存在したとしても,被害者が精神的苦痛を味わったか否かとは別の問題であるし,裁判所が賠償を命ずべき程度の損害があったか否かとも別問題である。そして,名誉棄損行為の成否も損害の有無及び程度も,加害行為以降における被害者側の言動をも判断材料の一つとして検討されなければならない。ましてや,名誉棄損行為があったとしても他方の保護法益として言論表現の自由が対置されている場合においては,法的に保護されるべき利益の侵害があったか否かという別個の観点からも検討を加えることによってはじめて損害の有無及び程度が判断されるべきである。本件投稿については,本件投稿後の被控訴人の攻撃的な言動も問題であり,被控訴人としては,本件投稿に対し,言論の舞台で反論をすれば足りることである上,十分にそれが可能であり有益である。以上からすれば,被控訴人には,賠償を命ずべき精神的苦痛は生じていないか又は極めて僅少である。
(4) 本件提訴が訴権の濫用に該当し,控訴人に対する不法行為を構成するか
被控訴人の控訴人に対する本件提訴は,訴権の濫用としてスラップに当たり,控訴人の主張が認められるべきである。
ア 名誉棄損訴訟については,「当該記事が社会的評価を低下させるものではないことを知りながら,又は,真実性・真実相当性の法理の抗弁が成り立つことを知りながら,あえて提訴した場合」には,その提訴自体が違法なスラップに当たる。そして,名誉棄損の法理は,表現の自由と人格権並びに裁判を受ける権利との調和を図った法理であるから,当該訴えが「裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く」といえるか否かを判断する上で,提訴者の意図すなわち提訴の主たる目的を重要な考慮要素とすべきである。
イ 控訴人が,平成31年3月27日の原審における本人尋問の終了後,法廷のやり取りをツイートしたところ,被控訴人代理人から同ツイートの削除と謝罪を求められ,控訴人が直ちにこれに応じるという出来事があったが,この経緯を見ても,本件投稿について,被控訴人が対抗言論等で反論してくれば控訴人はこれに応じる用意があり,かつ,被控訴人がかかる反論手段を取り得たことは明らかである。それにもかかわらず,被控訴人は,何の前触れもなく,内容証明一つ送らず,控訴人に対し,年末の慌ただしい時期を見計らうように突然訴状を送り付けた。
また,被控訴人は,公開の場で「Hは反Iでしょ?反Jですもんね?」と控訴人及びH社への嫌悪を露わにし,自身に対する控訴人及びH社の批判的言説をチェックして反撃の機会をうかがっていた。被控訴人が提出した控訴人のフェイスブックからのリツイート画面(甲5)は,「K15分前 Twitter」の表示から明らかなように,本件投稿が自動的にフェイスブックに転送された後,わずか15分で証拠化されたものである。かくも短時間で控訴人のリツイートを証拠化したこと自体,被控訴人が初めから訴訟を前提として,控訴人の発言を収集していたことを物語っている。
以上によれば,被控訴人の本件提訴の真の目的が,控訴人の言論抑圧にあったことは明らかである。
ウ 上記(1)ウのとおり,被控訴人は,本件提訴時,本件投稿の内容の解釈として,被控訴人がパワハラをした相手と自殺者の同一性を前提としていなかったことからすると,自身のパワハラにより間接的にせよAの職員が自殺したとの多数の報道がされたことを知っていた被控訴人は,本件投稿により社会的評価の低下がないこと,真実性・真実相当性の抗弁が成立することを知っていたことも明らかである。
エ 上記(3)のとおり,本件投稿により被控訴人に損害が発生した事実は認められない。また,被控訴人は弁護士であり,訴訟代理人は被控訴人の法律事務所の所属弁護士であるから,訴訟に被控訴人が費やした費用は実質的にはないに等しい。これに対し,控訴人は,一介のジャーナリストであり,本件提訴により狭心症の発作に見舞われ,一時期は絶対安静を命じられるほどに健康状態が悪化した。控訴人が経営するH社は,控訴人の稼働低下により売上が激減した上,調査費用や弁護士費用などで多額の裁判対策費用を支出し,H社の損害は,平成30年の1年間に限っても約1800万円近くに上ったため,控訴人は,役員報酬を半額に減額せざるを得ず,さらに,年間50万円を超える医療費がかかった。
このように,本件投稿により損害を受けたわけでもない被控訴人に対し,控訴人に多大な犠牲を強いてまで裁判を受ける権利(憲法32条)を保障する必要性は低い。著書やネット,テレビなど数多くのメディアを用い自身の言論を発信できる被控訴人は,対抗言論で容易に社会的評価の低下を食い止めることができたのであり,弁護士という立場を利用して(濫用といってもよい)安易に訴訟という手段に飛び付いた被控訴人を,同条により保護する必要性は皆無である。公平の観点から見たとき,被控訴人による本件提訴は,侵害された個人の権利の回復という裁判制度の趣旨目的に照らし,著しく相当性を欠いている。
4 当審における控訴人の補充主張に対する反論
(1) 本件投稿による名誉棄損の有無
一般閲読者の普通の注意と読み方を基準とすれば,本件投稿は,A知事であった被控訴人が,Aの幹部職員に対して生意気な口をきき,当該幹部職員の誰かを自殺に追い込んだ事実を摘示する表現である。
ア リツイートには,単純リツイートと引用リツイートがあり,単純リツイートには他者のツイートがそのままの形で表示され,リツイートした者の意見(コメント)が付されるわけではないから,元ツイートの投稿内容に賛同できない,共感できないと考える場合は,自身の意見を述べるため,引用リツイートの方法がとられることが一般的であるが,ツイッターは字数制限付の短文投稿サイトであるから,連続して投稿がされる場合も多く,単純リツイートであるという理由だけでリツイート主が元ツイートに賛同したものと解するのは適切ではないから,一般閲読者の普通の注意と読み方を基準に,前後にされたツイートの内容も踏まえて判断されるべきである。
本件投稿は,単純リツイートの形であるだけでなく,前後のツイートにも控訴人が本件投稿をした趣旨に関するツイートは何ら存在しないのであるから,一般閲読者の普通の注意と読み方を前提とする限り,控訴人は本件元ツイートの内容に賛同,共感し,本件投稿を行ったものと読み進めることは疑いようがない。
もっとも,上記にかかわらず,そもそも,名誉棄損の成立は,当該表現行為の内容について,一般閲読者の普通の注意と読み方を基準に読み進めた際に,対象者の社会的評価が低下するか否かのみで判断されるのであり,表現者はいかなる内容の表現をするのかについて認識さえしていればそれで足りる。
したがって,リツイートにおいて,元ツイートの内容に賛同する意図を有していたかどうかは名誉棄損の成立とは関係がない。
イ 本件投稿は,A知事であった被控訴人が,Aの幹部職員に対して生意気な口をきき,当該幹部職員の誰かを自殺に追い込んだ事実を摘示する表現である。本件投稿については,被控訴人に対し,「恥を知れ」と強く糾弾していることからして,被控訴人自身の言動,つまり,「生意気な口のききかた」を問題視した投稿であることは明らかであるところ,そのような生意気な口のきき方をしていることが直接の原因となって,自殺にまで追い込まれた職員がいたからこそ,被控訴人の言動を問題視し,「恥を知れ」などと強く糾弾しているのだと読み進めるのが普通の読み方であり,本件投稿内容を閲覧した一般読者(閲読者)の中に,被控訴人が生意気な口をきいていた幹部職員と,自殺にまで追い込まれた職員とは別人であるなどとあえて事実を付加して読み進める者など普通はいない。
控訴人は,本件投稿にいう「自殺にまで追い込んだこと」とは,被控訴人のA知事就任後の度重なる尊大で生意気な口のきき方が継続し,それが帯状に各方面に影響を及ぼし,その延長線上に現実としてAの中で発生したE参事の入水自殺事案(本件自殺事件)のことを指し示すとしか理解しようがなく,それが,「被控訴人が30代でA知事になった時期」に複数の幹部たちに対し,「被控訴人がA知事の権限・威光を背に高圧的かつ尊大な態度を取り」,そのプロセスと,広がる影響の中で実際に発生した本件自殺事件のことを指し示すことは,本件投稿の文言上明らかであり,その自殺事案が,●年●月に実際にA職員の中で発生したE参事の事案であることは,当時の報道記録内容やAの調査結果の存在等からも,元ツイート主のツイートに至る経過から考えても,決して無理筋の解釈ではない旨主張する。
しかしながら,控訴人の上記主張は,本件投稿の文言上明らかであるとの結論に至る過程が全く論じられておらず論理に明らかな飛躍があるし,被控訴人が尊大な態度を取り,それが各方面に影響を及ぼしている事実等の立証は何らされておらず,控訴人自身が,決して無理筋の解釈ではないなどと遠回しな主張しかできないことからすると,自身の主張が論理性・合理性に劣る無理筋な解釈であると自認しているというほかない。
被控訴人は,被控訴人がAの職員に対し生意気な口をきいたという事実は存在せず,また,そのような被控訴人の言動によって直接的にも間接的にも自殺した者などいないという主張を行ってきたのであり,本件投稿の解釈として本件投稿に摘示された事実が間接的因果関係を含むという趣旨の主張をしたことは一度もなく,被控訴人の主張は,何らの変遷もしていない。
控訴人は,本件自殺事件に関する報道について主張するが,そのような事実は本件投稿に記載された内容からは読み解くことができず,また,そのような事実を一般閲読者が認識していたことについては何らの立証もされていないのであるから,そのような前提事実を一般閲読者が知っていたものとして本件投稿の表現内容を解釈することは相当ではない。
(2) 本件投稿に関する違法性阻却事由の有無
控訴人は,本件投稿において摘示された事実が真実であることについて立証できていない。
ア 真実性の不存在
本件投稿は,A知事であった被控訴人が,Aの幹部職員に対して生意気な口をきき,当該幹部職員の誰かを自殺に追い込んだ事実を摘示する表現であるが,控訴人は,その事実についての立証を放棄している。
また,控訴人の間接的因果関係を含むという主張を前提としても,第三者機関である分限懲戒審査会が職員に対するパワハラ自体を否定し,Aの元副知事であったL証人も被控訴人によるパワハラの存在を明確に否定しており,控訴人は,自身の主張を前提とする事実についてすら何らの立証もできていない。
イ 真実相当性(過失)の不存在
控訴人は,本人尋問において現在も本件投稿に関する事実については調査中であることを明言している上,取材を裏付けるメモすら一切証拠としては提出されておらず,真実相当性について議論をする余地はない。
(3) 被控訴人の損害の有無・内容
被控訴人が本件投稿によって受けた精神的苦痛については,本件投稿の客観的な事情を基に計算するほかないところ,控訴人は,著名なジャーナリストであり,18万人ものフォロワーに対して本件投稿を一斉にしており,そこから更にリツイートがされた可能性は否定できず,少なくとも18万人以上の人間が,被控訴人が生意気な口のきき方をしたことによって自殺にまで追い込まれた職員がいるとの情報を受け取ったのであり,かかる損害は極めて大きいことは疑いようがない。
控訴人は,控訴人のフォロワー18万人全員が本件投稿を閲読したわけではないなどと主張するが,被控訴人としては,控訴人のフォロワー18万人に本件投稿にある情報が送信されたとの事実を証明すれば損害の立証としては十分であり,仮にフォロワーのほとんどが控訴人のツイートを読んでいないという特殊事情があるのであれば,それは控訴人が立証すべきである。
(4) 本件提訴が訴権の濫用に該当し,控訴人に対する不法行為を構成するか
本件提訴はスラップ訴訟などではなく,控訴人の反訴こそ正にスラップ訴訟である。
第3 当裁判所の判断
1 事実認定
後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(1) ツイッター,リツイート等(争いのない事実,乙125ないし131,弁論の全趣旨)
ア 「ツイッター」とは,「ツイッター社(Twitter,Inc.)」が管理するインターネット上の情報サービスで,ユーザーが「ツイート」と呼ばれる140字以内の短文を投稿し,他のユーザーがそれを読んだり返信したりすることができるものである。
ユーザーがツイートをしたい文章を入力しツイートボタンをクリック(スマートフォンの場合はタップというが,以下はすべてクリックの語を用いる。)すると投稿され,当該ツイートがツイッターの画面に表示される。ツイッターの画面では,アイコン(ツイート主を象徴する顔写真等の画像),アカウント(ツイッター上でユーザーを特定する氏名等の名称)等が表示されるが,複数のツイートは,新しいツイートが上にくるように上下に並べて表示される(この表示を「タイムライン」という。)。
他者のアカウントから投稿されたツイートを自分のタイムラインに表示されるように設定することを「フォロー」といい,特定のアカウントをフォローしている者を「フォロワー」という。
イ 自分若しくは他者のアカウントのツイートをタイムラインにシェアする機能を「リツイート」という。リツイートには,元のツイートをそのまま投稿する「単純リツイート」と,自分のコメントを追加した上で投稿する「引用リツイート」がある。リツイートされたツイートは,元ツイート主,リツイート主及びフォロワーのタイムライン上に表示される。
単純リツイートをするには,リツイートしたいツイートの下にある□ボタンをクリックして「リツイート」と「コメントを付けてリツイート」を表示させ,このうち「リツイート」をクリックする。単純リツイートをすると元のツイートがそのまま元ツイート主,リツイート主及びフォロワーの各タイムラインに表示される。単純リツイートの場合は,画面上のアイコン,アカウント等は元ツイート主のものであるが,冒頭に「〇〇さんがリツイート」と記載され(「○○さん」にはリツイート主のアカウントが表示される。),リツイート主がリツイートしたことが表示される。この場合,リツイート主がリツイートしたことを表す上記表示は,リツイート主及びそのアカウントのフォロワーのタイムライン上,元ツイート主のアイコン,アカウント等の上部に小さい文字でされる。
これに対し,引用リツイートは,リツイートしたいツイートの下にある□ボタンをクリックして「リツイート」と「コメントを付けてリツイート」を表示させ,このうち「コメントを付けてリツイート」をクリックし,自分のコメントを追加した上で投稿する。引用リツイートは,元のツイートを引用したリツイート主のツイートとしてタイムラインに表示され,これがフォロワーの画面にも表示される。引用リツイートは,リツイート主のツイートであるから,画面上のアイコン,アカウント等はリツイート主のもので,元ツイート主以外に「〇〇さんがリツイート」との記載もない。
(2) 本件投稿
ア 平成28年10月の衆議院議員選挙でBの会から立候補して当選したD議員が,同選挙後,ツイッターに「衆院選総括と代表選なしに前に進めない」などと投稿したことに関連して,被控訴人が,平成29年10月24日以降,ツイッターに「お前が勝てたのはMさんが知事をやっているからだ。ボケ!代表選を求めるにも言い方があるやろ。ボケ!」,「DのボケにNの力を学ばせるしかなさそうだ。それとまず言葉遣いから学べ,ボケ!」などと数回にわたり投稿した(乙99ないし102)。
イ 元ツイート主(ユーザー名「@(以下省略)」)は,上記アの投稿後の平成29年10月28日,上記引用にかかる原判決第2の2(2)イのとおり,次の内容のツイート(本件元ツイート)を投稿した。
「J氏,D議員の党代表「茶化し」2度目...M代表「20歳も年下に我慢している」
headlines.(以下省略)
Jが30代でA知事になったとき,20歳以上年上のAの幹部たちに随分と生意気な口をきき,自殺にまで追い込んだことを忘れたのか!恥を知れ!」
控訴人は,同月29日,上記引用にかかる原判決第2の2(2)ア(ア)のとおり,元ツイート主(@(以下省略))の本件元ツイートを単純リツイートした(本件投稿)が,その内容は次のとおりである。
「Retweeted (以下省略)C市解体の住民投票は中止な(@(以下省略)):
J氏,D議員の党代表「茶化し」2度目...M代表「20歳も年下に我慢している」
https:(以下省略)
Jが30代でA知事になったとき,20歳以上年上のAの幹部たちに随分と生意気な口をきき,自殺にまで追い込んだことを忘れたのか!恥を知れ!」
(3) 本件自殺事件及びその報道等
ア ●年●月●日,A商工労働部商工振興室経済交流促進課参事であった職員(以下「本件自殺職員」という。)が遺書と思われるものを残して死亡するという出来事(本件自殺事件)があり,同年12月15日付けで,被控訴人が同年9月Fに出張した際の日程調整等を本件自殺職員が担当しており,被控訴人が報道陣に対し,被控訴人がA商工労働部に日程変更を命じたことが影響した可能性を指摘し,「現場に過度の負担をかけてしまった。配慮が足りず,遺族に申し訳ない。」と述べた旨の新聞報道がされた(乙47)。
イ 本件自殺事件の発生後から平成24年にかけて,本件自殺職員が被控訴人に追い込まれて自殺した趣旨の記事や,被控訴人のA知事に就任後に複数の職員が自殺している趣旨の記事を掲載した雑誌や書籍が複数出版されたほか,A議会において,本件自殺事件を含むA職員の自殺問題が取り上げられた。これらの報道,出版物の内容やA議会の議事録は,本件投稿時点において,検索機能を通じてネットニュースやAホームページ等で確認することができる(乙52ないし54,56ないし66,124)。
2 本件投稿による名誉棄損の成否
(1) ある表現の意味内容が他人の社会的評価を低下させるものであるかどうかは,当該表現についての一般閲読者の普通の注意と読み方を基準として解釈した意味内容に従って判断すべきであり(最高裁昭和29年(オ)第634号同31年7月20日第二小法廷判決・民集10巻8号1059頁),ツイッターにおける投稿による表現についてもこれと別異に解すべき根拠はないというべきである。
控訴人は,ツイッターにおける投稿は,SNS上双方向的な議論の空間において,次々と展開される議論・発言の中での表現であって,常に動的なもので可変的であり得,相手方の指摘を受け修正する余地もあれば,より表現の意図が明確になる場合も十分にあり,その方法と手段を双方が持ち得ているという特質があるから,本件投稿のように言論の相手方が公人であった時期の公的評価に関わる言論であり,「対抗言論」の可能性が十分にある中での投稿の内容は,それ自体,社会的評価を低下させるべき性質のものかは疑問である旨主張する。
しかしながら,控訴人の主張するようなツイッターという表現媒体及びこれを用いた表現行為の特質を踏まえても,その表現内容によって他人の社会的評価を低下させることがあり得ることは他の表現方法と変わりはないことに加え,リツイートによる投稿をも含めて,ツイッターにおける投稿が,当該投稿に係る表現内容を容易な操作により瞬時にして不特定多数の閲読者の閲読可能な状態に置くことができることをも考慮すれば,当該投稿に係る表現の意味内容が他人の社会的評価を低下させるか否かの判断基準を上記説示と異なって解すべき理由はなく,当該表現内容が公人であった時期の公的評価に関わるものであるとの点は,違法性阻却事由の成否において検討されるべきものである。したがって,控訴人の上記主張は採用できない。
(2) 本件投稿行為と控訴人の不法行為
控訴人は,本件投稿をしたことを認めているところ,本件投稿は,本件元ツイートを単純リツイートしたものであるから,前記1(1)イのとおり,控訴人の本件投稿行為によって,本件元ツイートがそのままリツイート主である控訴人のツイッター画面のタイムラインに表示されるとともに,控訴人のアカウントをフォローしているフォロワーのタイムラインに表示されることになる。前記1(1)イのとおり,単純リツイートの場合,リツイート主のアカウントのフォロワーのツイッター画面のタイムラインには,元ツイート主のアイコン及びアカウントが表示されるとともに,その上部に,リツイート主(アカウントでもって表示)がリツイートしたことを表す記載が小さい文字で表示される。
以上によれば,単純リツイートに係る投稿行為は,一般閲読者の普通の注意と読み方を基準とすれば,元ツイートに係る投稿内容に上記の元ツイート主のアカウント等の表示及びリツイート主がリツイートしたことを表す表示が加わることによって,当該投稿に係る表現の意味内容が変容したと解釈される特段の事情がある場合を除いて,元ツイートに係る投稿の表現内容をそのままの形でリツイート主のフォロワーのツイッター画面のタイムラインに表示させて閲読可能な状態に置く行為に他ならないというべきである。そうであるとすれば,元ツイートの表現の意味内容が一般閲読者の普通の注意と読み方を基準として解釈すれば他人の社会的評価を低下させるものであると判断される場合,リツイート主がその投稿によって元ツイートの表現内容を自身のアカウントのフォロワーの閲読可能な状態に置くということを認識している限り,違法性阻却事由又は責任阻却事由が認められる場合を除き,当該投稿を行った経緯,意図,目的,動機等のいかんを問わず,当該投稿について不法行為責任を負うものというべきである。
本件投稿及び本件元ツイートの内容は,上記1(2)イのとおりであり,本件元ツイートに元ツイート主のアカウント等の表示及び控訴人がリツイートしたことを表す表示が加わることによって,本件元ツイートに係る表現の意味内容が変容したと解釈される特段の事情があるとは認められない。そうすると,控訴人の本件投稿行為は,本件元ツイートの表現内容をそのまま控訴人のアカウントのフォロワーのツイッター画面のタイムラインに表示させて当該フォロワーの閲読可能な状態に置いたことに他ならず,引用に係る原判決第2の2(2)ア(ア)の前提事実のとおり,本件投稿当時,控訴人のアカウントのフォロワーは18万人を超えていたというのであるから,控訴人の本件投稿行為によって,本件元ツイートの表現内容がそのまま18万人を超える控訴人のアカウントのフォロワーのツイッター画面のタイムラインに表示され,閲読可能な状態に置かれたものである(さらに,当該フォロワーが本件投稿を単純リツイート等すれば,本件元ツイートの表現内容が更に多くの閲読者の閲読可能な状態に置かれることになる。)。したがって,本件元ツイートの表現の意味内容が一般閲読者の普通の注意と読み方を基準として解釈すれば他人の社会的評価を低下させるものであると判断される場合,控訴人が本件投稿によって本件元ツイートの表現内容を自身のアカウントのフォロワーの閲読可能な状態に置くということを認識している限り,違法性阻却事由又は責任阻却事由が認められる場合を除き,本件投稿を行った経緯,意図,目的,動機等のいかんを問わず,本件投稿について不法行為責任を負うものというべきである。上記のとおり,控訴人は,本件投稿をしたことを認めており,本件投稿により本件元ツイートの表現内容を自身のアカウントのフォロワーの閲読可能な状態に置くことについての認識を欠いていたことをうかがわせるような証拠はないから,本件元ツイートの表現の意味内容,すなわち,本件投稿の表現の意味内容が被控訴人の社会的評価を低下させるものである限り,違法性阻却事由又は責任阻却事由が認められる場合を除き,控訴人は,被控訴人に対し,本件投稿について不法行為責任を負うものというべきである。
(3) 本件投稿に係る表現の意味内容について
ア 本件投稿は,上記1(2)イのとおり,「J氏,D議員の党代表「茶化し」2度目...M代表「20歳も年下に我慢している」」との一文及びURLを前置きした上で,「Jが30代でA知事になったとき,20歳以上年上のAの幹部たちに随分と生意気な口をきき,自殺にまで追い込んだことを忘れたのか!恥を知れ!」という文章を記載するものである。本件投稿のうち被控訴人が被控訴人の社会的評価を低下させる表現であると指摘する部分は,「Jが30代でA知事になったとき,20歳以上年上のAの幹部たちに随分と生意気な口をきき,自殺にまで追い込んだ」という部分(以下「本件部分」という。)であると解されるところ,この表現は,一般の閲読者の普通の注意と読み方を基準としてみれば,証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項を主張するものと解されるから,事実を摘示するものと見るべきである(最高裁平成6年(オ)第978号同9年9月9日第三小法廷判決・民集51巻8号3804頁参照)。
イ(ア)本件部分,すなわち,「Jが30代でA知事になったとき,20歳以上年上のAの幹部たちに随分と生意気な口をきき,自殺にまで追い込んだ」という表現の意味内容は,一般閲読者の普通の注意と読み方を基準として解釈すれば,被控訴人が,30代でA知事になった当時,20歳以上年上のAの幹部たちに随分と生意気な口をきいたことによって,被控訴人から生意気な口のきき方をされた職員の中に自殺に追い込まれた者がいたという趣旨のものと解される。
(イ) 控訴人は,「被控訴人が30代でA知事になった時期」に複数の幹部たちに対し,「被控訴人がA知事の権限・威光を背に高圧的かつ尊大な態度を取り」,そのプロセスと,広がる影響の中で実際に発生した本件自殺事件のことを指し示すことは,本件投稿の文言上明らかであるとした上,本件投稿の閲読者は,被控訴人とD議員のやり取りに特段の興味・関心もなく,本件自殺事件にも特段何らの関心も示さない政治的・社会的無関心層を念頭に置くべきではなく,かつてA知事やC市長の公職にあり,現在も大きな政治的影響力のある被控訴人の言動に心を痛め,過去の同人のA知事時代の言動にも関心を持ち,過去に実際にA職員の中で発生した自殺事件のことに関心を持ち続けており,公的立場での発言を繰り返す上記2人のやり取りや,本件元ツイート主の意図等を十分理解し又はそれを理解しようとする者と捉えるべきであるなどと主張する。
しかし,控訴人の上記主張は,次の(ウ)において説示するとおり,採用することができない。
(ウ)a 本件部分には,何ら本件自殺事件をうかがわせる文言はなく,自殺にまで追い込んだとの表現の意味内容が本件自殺事件のことを指し示すことが本件部分の文言上明らかとはいえない。
b もっとも,名誉毀損の成否が問題となっている表現部分の意味内容については,そこに用いられている語のみを通常の意味に従って解釈するにとどまらず,当該部分の前後の文脈や,当該表現当時に一般の閲読者が有していた知識ないし経験等をも考慮して,当該表現についての一般の閲読者の普通の注意と読み方を基準として判断すべきである。
c そうであるところ,前記1(3)ア,イのとおり,被控訴人がA知事に在任中の●年●月,本件自殺職員が遺書と思われるものを残して死亡するという出来事(本件自殺事件)があり,同年12月15日付けで,被控訴人が同年9月にF出張した際の日程調整等を本件自殺職員が担当しており,被控訴人が報道陣に対し,被控訴人がA商工労働部に日程変更を命じたことが影響した可能性を指摘し,「現場に過度の負担をかけてしまった。配慮が足りず,遺族に申し訳ない。」と述べた旨の新聞報道がされたこと,本件自殺事件の発生後から平成24年にかけて,本件自殺職員が被控訴人に追い込まれて自殺した趣旨の記事や,被控訴人のA知事に就任後に複数の職員が自殺している趣旨の記事を掲載した雑誌や書籍が複数出版されたほか,A議会において,本件自殺事件を含むA職員の自殺問題が取り上げられたこと,これらの報道,出版物の内容やA議会の議事録は,本件投稿時点において,検索機能を通じてネットニュースやAホームページ等で確認することができること,以上の事実が認められる。
しかしながら,本件投稿がされた時点において,上記認定の本件自殺事件ないし本件自殺事件を含むA職員の自殺に関する報道や出版ないしA議会における審議がされた時点から約5年ないしそれ以上の期間が経過しているのであって,この間の政治,社会,経済等の諸情勢の変動等に鑑みると,本件投稿当時一般の閲読者が本件自殺事件ないし当時A知事であった被控訴人が本件自殺職員を自殺に追い込んだとの記事等が公表されていたことについての知識を広く共有していたとは認め難いのであり,本件投稿時点においてこれらの報道,出版物の内容やA議会の議事録が検索機能を通じてネットニュースやAホームページ等で確認することができることを考慮しても,そのことから直ちに上記の知識が本件投稿当時一般の閲読者に広く共有されていた事実を推認することはできず,他にこの事実を認めるに足りる証拠はない。また,本件投稿によってその表現内容が閲読可能な状態に置かれた閲読者,すなわち,控訴人のツイッターのアカウントのフォロワー(上記のとおりその人数は18万人を超えている。)に限ってみても,本件投稿当時上記の知識が広く共有されていたとは認め難いのであり,控訴人の主張するように,本件投稿の閲読者の相当部分が,かつてA知事やC市長の公職にあり,現在も大きな政治的影響力のある被控訴人の言動に心を痛め,過去の同人のA知事時代の言動にも関心を持つ者であるとしても,そのことから直ちに本件投稿当時これらの閲読者に上記の知識が広く共有されていた事実を推認することはできず,これらの閲読者が過去に実際にA職員の中で発生した自殺事件のことに関心を持ち続けており,公的立場での発言を繰り返す被控訴人とD議員のやり取りや本件元ツイート主の意図等を十分理解し又はそれを理解しようとする者であるとの控訴人主張事実を認めるに足りる証拠もない。のみならず,前記のとおり,リツイートによる投稿をも含めて,ツイッターにおける投稿が,当該投稿に係る表現内容を容易な操作により瞬時にして不特定多数の閲読者の閲読可能な状態に置くことができるという特質に鑑みると,本件投稿の閲読者がさらに本件投稿を単純リツイート等することによって本件投稿の表現内容が更に多くの閲読者の閲読可能な状態に置かれることも,抽象的危険の域にとどまらないというべきである。
そうであるとすれば,本件投稿の閲読者を,上記2人のやり取りに特段の興味・関心もなく,本件自殺事件にも特段何らの関心も示さない政治的・社会的無関心層を念頭に置くべきではない旨の控訴人の主張も,採用することができない。
d 他方で,本件部分の前後の記述を見ると,「M代表「20歳も年下に我慢している」」との記述及びリンク先のURLの表示に続けて本件部分が記載され,本件部分に続けて,「(・・・追い込んだ)ことを忘れたのか!恥を知れ!」という被控訴人を叱責する趣旨の記述がされているのであって,これらの本件部分の前後の文脈からすると,被控訴人の主張するとおり,本件投稿は,被控訴人が30代でA知事になったときの20歳以上年上のAの幹部たちに対する生意気な口のきき方を問題視し,これを糾弾する趣旨の表現であると無理なく解釈されるのであり,そのような文脈の中に本件部分を位置付ければ,本件部分の意味内容については,被控訴人が生意気な口のきき方をしたことによって,生意気な口のきき方をされた職員の中に自殺にまで追い込まれた者がいたとの事実を摘示したものと解釈するのが,一般閲読者の素直な読み方というべきである。
e さらに,前記1(2)アのとおり,本件投稿に先行する近接した時期に,D議員が,ツイッターに「衆院選総括と代表選なしに前に進めない」などと投稿したことに関連して,被控訴人が,「ボケ!代表選を求めるにも言い方があるやろ。ボケ!」,「DのボケにNの力を学ばせるしかなさそうだ。それとまず言葉遣いから学べ,ボケ!」などと数回にわたり投稿した事実が認められ,また,本件投稿にリンク先として表示された上記URLは,本件投稿中の「J氏,D議員の党代表「茶化し」2度目...M代表「20歳も年下に我慢している」」との記述部分と同じ表題のO新聞のインターネット上の記事(乙26)と関連するウェブページである可能性が高いと認められるのであって,これらの事情も,本件部分の意味内容についての上記解釈の裏付けとなるものといえる。
(エ) 以上のとおり,本件部分において用いられている文言に加えて本件部分の前後の文脈等上記認定説示の諸事情を総合的に考慮すると,一般閲読者の普通の注意と読み方を基準として本件部分の意味内容を判断すれば,本件部分の意味内容は,被控訴人が,30代でA知事になった当時,20歳以上年上のAの幹部たちに随分と生意気な口をきいたことによって,被控訴人から生意気な口のきき方をされた職員の中に自殺に追い込まれた者がいたという趣旨のものと解されるのであり,控訴人の主張するように,被控訴人が複数のAの幹部たちに対しA知事の権限・威光を背景に高圧的かつ尊大な態度をとり,そのプロセスと,広がる影響の中で実際に発生した本件自殺事件のことをも含む趣旨であると解する余地はないものというべきである。
ウ 上記イのとおり,本件部分の意味内容は,一般閲読者の普通の注意と読み方を基準として解釈すれば,被控訴人が,30代でA知事になった当時,20歳以上年上のAの幹部たちに随分と生意気な口をきいたことによって,被控訴人から生意気な口のきき方をされた職員の中に自殺に追い込まれた者がいたという趣旨のものと解されるのであり,その意味内容からすれば,本件投稿中の本件部分は,被控訴人の社会的評価を低下させるものというべきである。
控訴人は,本件投稿が,言論の相手方が公人であった時期の公的評価に関わる言論であり,「対抗言論」の可能性が十分にある中での本件投稿の内容は,それ自体,本当に被控訴人の社会的評価を低下させるべき性質のものであったか疑問であると主張するが,本件投稿ないし本件元ツイートが,D議員のツイッターにおける投稿を契機として,被控訴人がツイッターにおいてD議員の「言い方」ないし「言葉遣い」を「ボケ!」という文言を交えて非難等する趣旨の投稿をしたことを受けて行われたものであるとしても,その意味内容がそれ自体他人の社会的評価を低下させるものと認められる限り,違法性阻却事由又は責任阻却事由が認められる場合を除いて,名誉毀損に該当し不法行為を構成するものというべきであり,控訴人の主張するようなツイッターという表現媒体の特性ないしツイッターにおける投稿によって形成される言論空間の特性をもってこれと別異に解する根拠とすることはできないことは,前記説示のとおりである。
3 本件投稿に関する違法性阻却事由等の有無について
(1) 事実を摘示しての名誉毀損にあっては,その行為が公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあった場合に,摘示された事実がその重要な部分について真実であることの証明があったときには,上記行為には違法性がなく,仮に上記行為が真実であることの証明がないときにも,行為者において上記事実を真実と信じるについて相当の理由があれば,その故意または過失は否定されるというべきである(最高裁昭和37年(オ)第815号同41年6月23日第一小法廷判決・民集20巻5号1118頁,最高裁昭和56年(オ)第25号同58年10月20日第一小法廷判決・裁判集民事140号177頁参照)。
上記2(3)ウのとおり,本件投稿中の本件部分の意味内容は,被控訴人が,30代でA知事になった当時,20歳以上年上のAの幹部たちに随分と生意気な口をきいたことによって,被控訴人から生意気な口のきき方をされた職員の中に自殺に追い込まれた者がいたという趣旨のものと解されるから,本件投稿についての真実性の立証は,被控訴人が,30代でA知事になった当時,20歳以上年上のAの幹部たちに随分と生意気な口をきいたことによって,被控訴人から生意気な口のきき方をされた職員の中に自殺に追い込まれた者がいたという事実が摘示されているものとして,その重要な部分について真実であることを証明すべきものである。そして,上記認定説示したところからすれば,上記摘示された事実中被控訴人から生意気な口のきき方をされた職員の中に自殺に追い込まれた者がいたという事実がその重要な部分であることは明らかというべきである。そうであるところ,控訴人は,本件投稿にいう自殺に追い込んだという事件が本件自殺事件を指すと主張しており,被控訴人から生意気な口のきき方をされた職員の中に自殺に追い込まれた者がいたという事実の真実性については何ら主張も立証もしていないのであるから,上記事実が真実であるとは認められない。また,控訴人が上記事実を真実と信ずるについて相当の理由があることについての主張,立証もない。
したがって,控訴人が本件投稿を行ったことについて違法性がないとはいえないし,控訴人の故意又は過失が否定されるともいえない。
(2) 控訴人は,本件投稿をする以前,本件自殺事件について先行報道,必要な書類・議事録に目を通し,予備取材も行い,相当の知識を持っており,そうした認識状況から,本件元ツイートを読み,本件部分に係る記載は,被控訴人の威圧的言動が間接的要因となり,その結果,本件自殺事件が惹起されてしまったと表現しているものと理解して,本件投稿を行ったものであり,本件元ツイートの「20歳以上年上のAの幹部たちに随分と生意気な口をきき,自殺にまで追い込んだ」との文言は,被控訴人が随分と生意気な口をきいたAの幹部たちと自殺した人物が同一であると明確に指摘しているわけではなく,自殺した人物が被控訴人が生意気な口をきいたAの幹部たちに含まれるかどうかが不明であることに鑑みると,控訴人が本件元ツイートの記載を上記のとおり理解したことについて過失はないと主張する。
上記認定のとおり,被控訴人がA知事に在任中,本件自殺事件が発生し,被控訴人が報道陣に対し「配慮が足りず,遺族に申し訳ない。」などと述べた旨の新聞報道がされたほか,本件自殺事件について,本件自殺職員が被控訴人に追い込まれて自殺した趣旨の記事や,被控訴人のA知事に就任後に複数の職員が自殺している趣旨の記事を掲載した雑誌や書籍が複数出版されるなどした事実が認められるのであり,控訴人の主張するとおり,本件自殺事件について先行報道,必要な書類・議事録に目を通し,予備取材も行い,相当の知識を持っていたとすれば,本件元ツイートを閲読した控訴人が,上記のような認識状況の下において,本件部分に係る記載について,その意味内容を,被控訴人の威圧的言動が間接的要因となり,その結果,本件自殺事件が惹起されてしまったと表現しているものと即断したとしても,やむを得ない面がなくはないといえる。
しかしながら,上記認定説示のとおり,本件部分において用いられている文言に加えて本件部分の前後の文脈等の諸事情を総合的に考慮すると,一般閲読者の普通の注意と読み方を基準として本件部分の意味内容を判断すれば,本件部分の意味内容は,被控訴人が,30代でA知事になった当時,20歳以上年上のAの幹部たちに随分と生意気な口をきいたことによって,被控訴人から生意気な口のきき方をされた職員の中に自殺に追い込まれた者がいたという趣旨のものと解されるのであり,控訴人の主張するように,被控訴人が複数のAの幹部たちに対しA知事の権限・威光を背景に高圧的かつ尊大な態度をとり,そのプロセスと,広がる影響の中で実際に発生した本件自殺事件のことをも含む趣旨であると解する余地はないものというべきであって,そのことは,控訴人においても,本件元ツイートを普通の注意と読み方でもって客観視すれば容易に理解し得たものというべきである。
他方で,上記説示のとおり,リツイートによる投稿をも含めて,ツイッターにおける投稿が,当該投稿に係る表現内容を容易な操作により瞬時にして不特定多数の閲読者の閲読可能な状態に置くことができる特性を有するものであるにとどまらず,当該投稿を閲読した者が更にその投稿内容をリツイート等することによってその表現内容を容易な操作により更に多くの閲読者の閲読可能な状態に置き,そのような行為が繰り返されることによって,当該投稿の表現内容が短期間のうちに際限なく拡散していく可能性を秘めており,そのような危険性は抽象的危険の域にとどまらないものというべきであることからすれば,単純リツイートの場合を含めて,ツイッターにおける投稿行為を行う者には,投稿行為に際し,その投稿内容に含まれる表現が,人の品性,徳行,名声,信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価を低下させるものであるか否かについて,相応の慎重さが求められるものというべきである。そのような制約は,もとより表現の自由の内在的制約にすぎないのであり,かえって,ツイッターにおける投稿行為がそのような配慮の下に行われることが担保されることによって,控訴人の主張するようなツイッターの表現媒体としての特性が活かされ,ツイッターにおける投稿を通じた自由かつ双方向的な言論空間の形成,発展に資することになるというべきである。
以上に加え,上記認定のとおり,控訴人のツイッターのアカウントのフォロワーが18万人を超えていることをも併せ考えると,控訴人が本件投稿当時本件自殺事件等について上記のような認識状況にあったとしても,本件部分に係る記載について,その意味内容を,被控訴人の威圧的言動が間接的要因となり,その結果,本件自殺事件が惹起されてしまったと表現しているものと理解して,本件投稿を行ったことについて,過失がなかったということはできない。
(3) 以上のとおり,本件投稿のうち本件部分の意味内容は,被控訴人の社会的評価を低下させるものであり,控訴人が本件投稿を行ったことについて,違法性阻却事由又は責任阻却事由は認められないから,控訴人は,被控訴人に対し,本件投稿について不法行為に基づく損害賠償責任を負うというべきである。
4 被控訴人の損害の有無・内容について
(1) 上記認定説示したとおり,控訴人の本件投稿行為は,ツイッターにおける単純リツイートという方法により,被控訴人の社会的評価を低下させる内容の事実が摘示された表現(本件部分)を含む表現内容を控訴人のアカウントのフォロワーのツイッター画面に表示させてその閲読可能な状態に置いたものであり,控訴人の本件投稿行為によって,上記のような本件投稿の表現内容が18万人を超えるフォロワーのツイッター画面に表示されてその閲読可能な状態に置かれたにとどまらず,当該投稿を閲読した者が更にその投稿内容をリツイート等することによってその表現内容を容易な操作により更に多くの閲読者の閲読可能な状態に置き,そのような行為が繰り返されることによって,当該投稿の表現内容が短期間のうちに際限なく拡散していくことが可能な状態に置いたものであって,そのような拡散の危険性は,抽象的危険の域にとどまらないものというべきである。また,上記認定説示したとおり,控訴人が,本件自殺事件について先行報道,必要な書類・議事録に目を通し,予備取材も行い,相当の知識を持っていたがゆえに,本件元ツイートを閲読して,本件部分に係る記載の意味内容を,被控訴人の威圧的言動が間接的要因となり,その結果,本件自殺事件が惹起されてしまったと表現しているものと即断して,本件投稿を行ったものであるとしても,本件部分の意味内容が控訴人の主張するような趣旨を含むものであると解する余地はなく,そのことは,控訴人においても,本件元ツイートを普通の注意と読み方でもって客観視すれば容易に理解し得たものというべきである。これらからすれば,本件投稿のその後の拡散状況が証拠上不明であることや,引用に係る原判決第2の2(2)ア(イ)の前提事実のとおり,本件投稿が遅くともその約1か月半後の本件提訴時までに削除されており,控訴人の主張するようにそれよりも更に早い時点で削除された可能性があることを考慮しても,本件投稿行為は,その内容及び態様等に照らし,違法性の程度が重大でないということはできない。
以上に加え,証拠(甲2,乙97)によれば,控訴人は,昭和62年にフリーのジャーナリストになり,P・Qを取材して執筆したノンフィクションで受賞するなどした後,テレビのコメンテーターを務めたこともあり,平成22年にはH社を設立し,上記のとおり,ツイッターの控訴人のアカウントのフォロワーも約18万人に及んでいるのであって,そのツイートの影響は決して小さいとはいえず,他方で,上記1(1)イのとおり,本件投稿は,控訴人のアカウントのフォロワーのツイッター画面上,小さい文字にせよ,控訴人が本件元ツイートをリツイートしたことを表す表示とともに表示されるのであって,少なくとも控訴人のアカウントをフォローしている閲読者は,本件投稿は控訴人が本件元ツイートをリツイートしたものであることを容易に理解することができるはずであり,上記のような地位及び経歴を有する控訴人が本件投稿を行ったことを念頭に置いてその表現内容を閲読するものと認められることを併せ考えると,本件投稿によって被控訴人が被った損害の程度は,決して軽微とはいえない。
控訴人は,被控訴人のツイッターのフォロワーは約214万人おり,被控訴人は自らに向けられた本件投稿の内容を公表しているから,本件投稿の内容は,被控訴人にとって公開や拡散をされたくないものとはいえないことがうかがわれ,このことは被控訴人の損害が存在しないか小さいことを裏付けるものである旨主張するが,上記のとおり,本件投稿は,被控訴人の社会的評価を低下させる内容の事実が摘示された表現(本件部分)を含むものであるから,本件投稿によって被控訴人に精神的苦痛という損害が発生したことは明らかであり,上記説示のような本件投稿の内容及び態様等に鑑みても,控訴人の主張するような事実をもって被控訴人の損害が存在しないか小さいことを裏付けるものということはできず,控訴人の上記主張を採用することはできない。
控訴人は,名誉毀損行為の成否も損害の有無及び程度も,加害行為以降における被害者側の言動をも判断材料の一つとして検討されなければならず,本件投稿については,本件投稿後の被控訴人の攻撃的な言動も問題であり,被控訴人としては,本件投稿に対し,言論の舞台で反論すれば足りることであり,十分にそれが可能であり有益であるから,被控訴人に賠償を命ずべき精神的苦痛は生じていないか又は極めて僅少であるとも主張する。しかし,人の社会的評価を低下させる表現行為が行われれば,それによる精神的苦痛という損害は直ちに発生するというべきであって,その後の被害者の行為により損害が消滅等するものではなく,控訴人の主張するように被害者において当該表現行為に対し言論をもって反論することが十分に可能であるとしても,当該表現行為が被害者の名誉を毀損する不法行為に該当する限りにおいて,その一事をもって被害者が加害者に対し不法行為による損害賠償を求める方法によってその損害の回復を図るみちが閉ざされるものでないことは明らかというべきである。上記に認定説示したとおり,本件投稿の内容,態様等に照らして本件投稿による被控訴人の名誉毀損の違法性の程度が重大でないということはできないこと,及び本件投稿によって被控訴人が被った損害の程度が決して軽微とはいえないこと等に鑑みると,被控訴人が控訴人の主張するように本件投稿に対し言論の舞台で有益な反論を行うことが十分に可能であるとしても,控訴人に賠償を命ずべき精神的苦痛が生じていないということも,それが極めて僅少であるということもできず,控訴人の上記主張を採用することはできない。
以上認定説示した事情その他本件に現われた一切の事情を総合考慮すれば,控訴人の本件投稿による名誉毀損行為により被控訴人が被った精神的苦痛を慰謝するための金額は,30万円と認めるのが相当である。
(2) 被控訴人は,本件訴訟を追行するために弁護士に委任しているところ,弁護士費用のうち控訴人による上記名誉毀損行為と相当因果関係を有する損害は,本件訴訟の経過等に照らし,3万円と認めるのが相当である。
5 本件提訴が訴権の濫用に該当し、控訴人に対する不法行為を構成するかについて
控訴人は,引用に係る原判決第2の4(4)(被告の主張)及び前記第2の3(4)のとおり,本件提訴がスラップとして訴権の濫用に該当し,控訴人に対する不法行為を構成すると主張する。
しかし,控訴人の本件投稿行為が被控訴人に対する名誉毀損として不法行為を構成し,控訴人は被控訴人に対し当該不法行為に基づく損害賠償として33万円及びこれに対する遅延損害金の支払義務を負うと認められることは,上記1ないし4において認定説示したとおりであるから,被控訴人が本件訴訟において主張した権利が事実的,法律的根拠を欠くものということはできず,本件提訴が裁判制度の趣旨,目的に照らして著しく相当性を欠くということはできない。したがって,本件提訴が訴権の濫用に該当するということはできず,また,控訴人に対する違法な行為として不法行為を構成するものということもできない。
控訴人は,名誉毀損に係る訴えが裁判制度の趣旨,目的に照らして著しく相当性を欠くといえるか否かについては,提訴者の意図すなわち提訴の主たる目的を重要な考慮要素とすべきであるところ,被控訴人は,本件投稿により自身の社会的評価の低下がないこと等,本件投稿行為について被控訴人に対する名誉毀損が成立しないことを知っていたのであり,また,本件投稿により被控訴人に損害が発生した事実は認められず,しかも,被控訴人は,対抗言論で容易に社会的評価の低下をくい止めることができたにもかかわらず,かねてから自身に対する控訴人及びH社の批判的言説をチェックして反撃の機会をうかがい,本件投稿が自動的に控訴人のフェイスブックに転送されてからわずか15分でこれを証拠化した上,弁護士という立場を利用し,内容証明郵便を送付することすらせずに,自身の法律事務所の所属弁護士を訴訟代理人として,控訴人に対し,年末の慌ただしい時期を見計らうように突然訴状を送り付け,これによって,控訴人は,健康状態の悪化を招いた上,多額の裁判対策費用の支出を余儀なくされたのであるから,本件提訴は,被控訴人による控訴人の言論抑圧を真の目的とするものであって,公平の観点から見たとき,侵害された個人の権利の回復という裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠いているといった趣旨の主張をする。
しかし,控訴人の本件投稿行為が被控訴人に対する名誉毀損として不法行為を構成すると認められるのみならず,本件投稿の内容,態様等に照らして本件投稿による被控訴人に対する名誉毀損の違法性の程度が重大でないということはできないこと,本件投稿によって被控訴人が被った損害の程度が決して軽微とはいえないことは,前記認定説示のとおりである。また,控訴人の主張するように被害者において当該表現行為に対し言論をもって反論することが十分に可能であるとしても,当該表現行為が被害者の名誉を毀損する不法行為に該当する限りにおいて,その一事をもって被害者が加害者に対し不法行為による損害賠償を求める方法によってその損害の回復を図るみちが閉ざされるものでないことも,前記認定説示のとおりである。そして,リツイートによる投稿をも含めて,ツイッターにおける投稿は,出版物等による表現行為とは異なり,当該投稿に係る表現内容を容易な操作により瞬時にして不特定多数の閲読者の閲読可能な状態に置くことができる表現方法であるのみならず,当該投稿に係る表現内容が電磁的方法によって短期間のうちに際限なく拡散していく可能性を秘めており,そのような拡散の危険性は抽象的危険の域にとどまらないものというべきである反面,その表現内容が人の社会的評価を低下させるものである場合,これを事前に予防することはもとより,事後速やかにその損害の拡大の防止を図ることも極めて困難であるという特質を有するものである。このようなツイッターにおける投稿の表現行為としての特質にも鑑みると,控訴人の主張するように,被控訴人において本件投稿が自動的に控訴人のフェイスブックに転送されてからわずか15分でこれを証拠化した上本件提訴に及んだとしても,控訴人の主張に係る被控訴人の真の目的のいかんにかかわらず,そのことから直ちに,本件提訴が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くとして,訴権の濫用に当たるとも,控訴人に対する不法行為を構成するとも,いうことはできない。
以上のとおりであるから,控訴人の上記主張を採用することはできない。
6 結論
以上によれば,被控訴人の本訴請求は33万円及びこれに対する不法行為の日(本件投稿の日)である平成29年10月29日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金を求める限度で理由があり,他方,控訴人の反訴請求は理由がないから,これと同旨の原判決は相当である。
よって,本件控訴は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
大阪高等裁判所第7民事部
裁判長裁判官 西川知一郎
裁判官 長谷部幸弥
裁判官 善元貞彦
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