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インターネット上での誹謗中傷・風評被害紛争における「名誉毀損」、「名誉権侵害」 - 札幌の弁護士|前田尚一法律事務所

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インターネット上での誹謗中傷・風評被害紛争における「名誉毀損」、「名誉権侵害」

 

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 インターネット上での誹謗中傷・風評被害紛争の法的解決するにあたっては、民法、プロバイダ責任制限法を解釈、適用する上で、しばしば、「名誉毀損」、「名誉権侵害」ということが重大テーマとなります。

 それは、名誉権が、被害者救済の法的根拠となる代表的な被侵害権利の一つであって、例えば、次の場面で問題とされるからです。

 (1)削除を求める場合の要件(プロバイダ責任制限法4条)

 (2)発信者情報開示を求める場合の要件

 (3)名誉毀損訴訟(不法行為に基づく損害賠償請求・謝罪広告掲載等名誉回復措置請求)

   ア 投稿者(発信者)に対する請求(民法709条、723条)

   イ サイト管理者、アクセスプロバイダ等(開示関係役務提供者)に対する請求(プロバイダ責任制限法4条4項)

 (4)刑事責任(刑法230条、230条の2)

 

  なお、プロバイダ責任制限法(正式名称:特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)については、令和3年4月21日改正法が成立しましたが[令和3年4月28日公布]、改正法が施行されていない時点で掲載するこの記事中では、条文の引用は、改正前の法律によることとします。

 

 いずれの場面も、個別の検討が必要ですので、それぞれ別稿で論じることとし、以下は、もっとも基本的な共通事項についての最高裁判例を紹介いたします。

 理解を深めていただくため、次のような事案・争点で審理された参考裁判例(大阪地方裁判所令和元年(ワ)第11023号同2年6月25日判決・公刊物未登載)で当てはめの判断プロセスも引用紹介していきます。

【参考裁判例の概要】

[事案の概要]

 参考裁判例は、インターネット上の短文投稿サイトであるツイッターに氏名不詳者が投稿した記事によって名誉を毀損されたと主張する原告が、経由プロバイダである被告に対し、①プロバイダ責任制限法4条1項に基づき、一定の時刻頃にIPアドレスを割り当てられていた契約者の氏名等の情報の開示を求めるとともに、②被告には、裁判外における原告からの開示請求に応じないことにつき、プロバイダ責任制限法4条4項本文にいう「故意又は重大な過失」があると主張して、名誉権侵害の不法行為に基づく損害賠償として慰謝料及びその遅延損害金の支払を求めた事案です。

 ちなみに、原告は、平成27年12月に地域政党の代表者及び国政政党の共同代表に就任しています。また、原告は、平成31年3月24日まで大阪府知事を務めており、同年4月8日から大阪市長を務めていました。

[争点]

(1)本件各記事の投稿によって原告の権利が侵害されたことが明らかであるといえるか(プロバイダ責任制限法4条1項1号所定の要件を充たすか)

(2)原告が開示を求める別紙発信者情報目録記載の情報が当該権利の侵害に係る発信者情報に当たるといえるか(プロバイダ責任制限法4条1項本文所定の要件を充たすか)

(3)原告に発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるといえるか(プロバイダ責任制限法4条1項2号所定の要件を充たすか)

(4)被告が発信者情報の開示請求に応じないことにつき故意又は重大な過失があるといえるか(プロバイダ責任制限法4条4項本文所定の要件を充たすか)

(5)被告が発信者情報の開示請求に応じないことにより原告が被った損害の有無及びその額

第1 名誉毀損の判断基準

 1 最高裁判所昭和31年7月20日第二小法廷判決・民集10巻8号1059頁

 最高裁判所は、名誉毀損にあたるかどうかをどのように判断すべきかについて、次のとおり判示し、「一般読者の普通の注意と読み方を基準」とすべきであるとしています。

「名誉を毀損するとは、人の社会的評価を傷つけることに外ならない。それ故、所論新聞記事がたとえ精読すれば別個の意味に解されないことはないとしても、いやしくも一般読者の普通の注意と読み方を基準として解釈した意味内容に従う場合、その記事が事実に反し名誉を毀損するものと認められる以上、これをもつて名誉毀損の記事と目すべきことは当然である。」

 2 裁判所の判断の実際

 この最高裁が判示した法理を、参考裁判例では、次のように当てはめの判断をしています。

【裁判所の当てはめ】

「1 争点(1)-権利侵害の明白性について

 (1)本件各記事による原告の名誉権侵害の成否について

   ア 本件各記事の内容が原告の社会的評価を低下させるか否かは、本件各記事を閲読する一般の読者の普通の注意と読み方を基準として解釈した意味内容にしたがって判断すべきものである(最高裁判所昭和31年7月20日第二小法廷判決・民集10巻8号1059頁参照)。

    本件各記事は、「原告が、女子中学生を強姦し、それにより当該女子中学生を自殺に追い込んだ」との事実を適示するものであるところ、本件各記事を閲読する一般の読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、同事実は、原告について、過去に女子中学生に対し強制性交等罪(刑法177条)に該当する行為をなし、それにより当該女子中学生を自殺に追い込んだ人物であるとの印象を与えるものであるから、本件各記事は原告の社会的評価を低下させるものであると認められる。

  イ この点、被告は、本件各記事の内容は抽象的である上、本件各記事のような匿名アカウントを用いた投稿記事は信用性があるものとは評価されていないから、本件各記事は原告の社会的評価を低下させるものではない旨主張する。

    しかしながら、本件各記事の内容は、証拠等をもってその存否を決することが可能な特定の事項を表現するものであり具体的な事実を摘示するものにほかならない上、本件各記事が匿名アカウントを用いた投稿記事であるとの一事をもっておよそ信用性があるものとは評価されないとはいえないのであって、この点に関する被告の主張は採用できない。」

第2 免責事由(違法性・責任阻却事由)

 1 最高裁昭和41年6月23日第一小法廷判決・民集20巻5号1118頁

 最高裁判所は、名誉毀損の不法行為における免責について、次のとおり判示し、「真実性・相当性の法理」を明らかにしています。

「民事上の不法行為たる名誉棄損については、その行為が公共の利害に関する事実に係りもつぱら公益を図る目的に出た場合には、摘示された事実が真実であることが証明されたときは、右行為には違法性がなく、不法行為は成立しないものと解するのが相当であり、もし、右事実が真実であることが証明されなくても、その行為者においてその事実を真実と信ずるについて相当の理由があるときには、右行為には故意もしくは過失がなく、結局、不法行為は成立しないものと解するのが相当である(このことは、刑法二三〇条の二の規定の趣旨からも十分窺うことができる。)。」

 2 裁判所の判断の実際

 この真実性・相当性の法理を、参考裁判例では、次のように当てはめの判断をしています。

【裁判所の当てはめ】

「(3)違法性阻却事由の存在をうかがわせる事情の有無について

   ア 法4条1項1号の「権利が侵害されたことが明らかであるとき」とは、発信者の有するプライバシー及び表現の自由の利益と被害者の権利回復を図る必要性との調和を図るために、発信者情報開示請求の要件として、被害者の権利が侵害されたことが明白であることを要するとする趣旨であり、不法行為等の成立を阻却する事由の存在をうかがわせるような事情が存在しないことまでを意味するものと解される。

     事実を摘示してする名誉毀損にあっては、その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、摘示された事実がその重要な部分において真実であることの証明があったときには、上記行為には違法性がなく、仮に上記証明がないときにも、行為者において上記事実の重要な部分を真実と信じるについての相当の理由があれば、その故意又は過失は否定されるものというべきであるから(最高裁昭和41年6月23日第一小法廷判決・民集20巻5号1118頁参照)、発信者情報開示請求の要件として、それらの違法性阻却事由の存在をうかがわせる事情のないことを要する。

   イ 公共性、公益目的の有無

     原告が「A」及び「B」の代表であり、また、かつて大阪府知事を務め、現在大阪市長を務める者であることからすると、本件各記事については、原告の政治家としての評価に影響を与えるものとして公共の利害に係る事実であるといえ、そのような事実を摘示したものであることからすると、専ら公益を図る目的で表現されたものであることを否定することはできない。

   ウ 真実性、又は真実相当性の有無

     原告が女子中学生を強姦し自殺に追いやったなどとする事実がないことは証拠(甲9、10)により認められる。

     証拠(甲1の1、2、乙8)によれば、本件発信者は、本件各記事にリンクを貼り付けており、リンク先の投稿記事にも原告が女子中学生を強姦しその被害者が自殺した旨の記載があること、また、他にも同様の内容が書き込まれたサイトの記事があり、本件発信者がそのサイトのURLを示していることが認められる。しかし、それらは客観的裏付けのない匿名の投稿記事や書き込みであるのに、本件発信者がその内容につき真偽を調査・確認した上で本件各記事の投稿に至ったことがうかがわれる事情はみられないことからすると、本件発信者がその内容を真実であると信じるについて相当な理由があるとはいえないと認められる。

   エ 以上によれば、本件各記事の投稿に公共性、公益目的があるとしても、本件各記事の内容が真実であるとは認められず、本件発信者がそれを真実であると信じるについて相当な理由があるともいえないのであって、本件各記事の投稿につき違法性を阻却する事由の存在をうかがわせる事情は存在しないと認められる。

 (3)したがって、本件各記事の投稿により、原告の権利が侵害されたことは明らかであると認められる。

第3 名誉権に基づく出版差止め[北方ジャーナル事件]

 最高裁昭和61年6月11日大法廷判決・民集40巻4号872号

 北方ジャーナル事件は、元旭川市長で北海道知事選挙に立候補する予定の者に対する表現行為が問題となり、出版よりも前の時点におけるその差止めを命じたことの当否が問われた事案ですが、名誉権に基づく削除請求を裏付ける基本的な法理を判示するものですので、付記します。

 1 最高裁判所は、「事前差止めの合憲性に関する判断」としてですが、実体法上の差止請求権の存否について、次のとおり判示しています。

「実体法上の差止請求権の存否について考えるのに、人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価である名誉を違法に侵害された者は、損害賠償(民法七一〇条)又は名誉回復のための処分(同法七二三条)を求めることができるほか、人格権としての名誉権に基づき、加害者に対し、現に行われている侵害行為を排除し、又は将来生ずべき侵害を予防するため、侵害行為の差止めを求めることができるものと解するのが相当である。けだし、名誉は生命、身体とともに極めて重大な保護法益であり、人格権としての名誉権は、物権の場合と同様に排他性を有する権利というべきであるからである。」

 2 真実性・相当性の法理に関連する説示として、次のとおり判示しています。

「出版物の頒布等の事前差止めは、このような事前抑制に該当するものであつて、とりわけ、その対象が公務員又は公職選挙の候補者に対する評価、批判等の表現行為に関するものである場合には、そのこと自体から、一般にそれが公共の利害に関する事項であるということができ、前示のような憲法二一条一項の趣旨(前記(二)参照)に照らし、その表現が私人の名誉権に優先する社会的価値を含み憲法上特に保護されるべきであることにかんがみると、当該表現行為に対する事前差止めは、原則として許されないものといわなければならない。ただ、右のような場合においても、その表現内容が真実でなく、又はそれが専ら公益を図る目的のものでないことが明白であつて、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があるときは、当該表現行為はその価値が被害者の名誉に劣後することが明らかであるうえ、有効適切な救済方法としての差止めの必要性も肯定されるから、かかる実体的要件を具備するときに限つて、例外的に事前差止めが許されるものというべきであり、このように解しても上来説示にかかる憲法の趣旨に反するものとはいえない。」

第4 風評被害対策を弁護士に相談する必要性

 インターネット上の誹謗中傷は、会社に落ち度がなくても、世間の誤解に基づく投稿がなされ、その情報が瞬時に広まってしまうことは起こり得ます。そのため、インターネット上のトラブルが発生してしまった際には、迅速に対応するのが重要になります。
 前田尚一法律事務所は、風評被害や誹謗中傷対策に関する相談について、単に削除請求をするだけでなく、御社のご予算や潜在的なニーズを包括した解決策のご提案を心掛けています。当事務所にご相談いただければ、投稿内容に応じて適切な方法をアドバイスし、風評被害問題の解決への道筋を示します。ひとりで悩まずに、まずはお気軽に弁護士までご相談ください。

メールでのお問い合わせコチラをクリックください。
お電話は0120-481-744までご連絡ください。

 

第5 弁護士報酬

いずれも,事実関係を確認させていただいた上で,事案の性質・難易,相談者の状況などを勘案し,協議して確定するということになりますが,弁護士費用の一応の目処は次のとおりです。
サイト数,記事数,申立て数により増額される場合があります。
実費は別途ということになります。
なお,簡易な対応で解決可能な場合は,低額対応を協議させていただきます。

法律相談
 初回1時間まで 1万1000円(税込)

削除請求
 着手金     33万円(税込)以上
 成功報酬    22万円(税込)以上

発信者情報開示請求
 着手金     33万円(税込)以上
 成功報酬    22万円(税込)以上

損害賠償請求
 着手金     33万円(税込)以上
 成功報酬金   ご相談

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弁護士 前田 尚一(まえだ しょういち)
前田尚一法律事務所 代表
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、弁護士として30年を超える経験、実績を積んできました。
交通事故、離婚、相続、債務整理・過払い金請求といった個人の法律問題に加え、労務・労働事件、クレーム対応、債権回収、契約書ほか企業法務全般も取り扱っています。



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