浮気、一度許したけれど - 札幌の弁護士|前田尚一法律事務所
浮気、一度許したけれど - 札幌の弁護士|前田尚一法律事務所
「毎日新聞」『La Femme~ラ・ファム~』連載
1998年(平成10年)11月29日 日曜日
(注)この記事は、当時、毎日新聞に連載された内容のままで復元したものであり、
掲載された移行の法律改正や新しく制定された法律を反映したものではありません。
その後についてはこちらを。
夫が浮気をしたのですが「やり直したい」と土下座して誤ったので、一度は許すことにしました。しかし、その時の浮気が尾を引いて、夫婦の関係は結局壊れてしまっています。このような場合、裁判で離婚請求ができるのでしょうか。
(主婦、37歳)
浮気を許したということだけでは、あなたの離婚請求権がなくなってしまことはありません。浮気が原因となって夫婦関係が壊れてしまった実態が認められれば、裁判で勝訴できる場合があります。
民法は、不貞行為を離婚原因の一つとして定めていますが、相手の浮気を理由に離婚請求ができるかどうかについては「許したこと」が問題になることがあります。
要するに、一旦は許しておきながら、蒸し返すのはいかがなものか、という考え方なのですが、あえて問題とされるのは、歴史的な背景も関係があるようです。
戦前の民法では、相手を許した場合を「宥恕(ゆうじょ)」と呼び「相手を一度許せばもう離婚請求はできない」ということを定めた規定がありました。
もっとも、戦前の民法では、不貞をしたという理由で離婚されるのは妻だけでした。夫は浮気をしたとしても、別に「姦淫(かんいん)罪」という刑事罰で処罰されなければ、離婚されるませんでした。
「姦淫罪」というは、戦前の刑法で定められていた犯罪で、既婚女性が夫以外の男性と男女関係を持った場合、その夫の告訴によって、女性と相手の男性(「間男」)が処罰されることになっていました。つまり、男性は、既婚者であっても、相手の女性が独身であればおよそ処罰の対象にはならず、従って、妻から離婚されることもなかったのです。旦那さんが、お妾さんをいっぱい抱えて家を持たせていても、法律的に妻は文句の言いようさえもなかったのです。戦前は、民法も、刑法も、“男尊女卑”が徹底していたと言えます。「リストラ離婚」といった言葉が定着した現在ではとても考えられない時代でした。
このような封建的な仕組みの中で、「宥恕」は夫の特権や横暴を抑制する機能を果たしていたとも考えられます。
現在の民法は、離婚原因についても男女平等であり、「宥恕」の規定もありません。相手を一度許したとしても、判断材料の一つになるに過ぎず、裁判所は、離婚に至る原因が何であるかを総合的に判断されることになります。
弁護士 前田 尚一(まえだ しょういち)
前田尚一法律事務所 代表
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、弁護士として30年を超える経験、実績を積んできました。
交通事故、離婚、相続、債務整理・過払い金請求といった個人の法律問題に加え、労務・労働事件、クレーム対応、債権回収、契約書ほか企業法務全般も取り扱っています。
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