過払い金請求|プロミスの過払い金返還債務の承継に関する主張 - 札幌の弁護士|前田尚一法律事務所
過払い金請求|プロミスの過払い金返還債務の承継に関する主張 - 札幌の弁護士|前田尚一法律事務所
目次
本件は、プロミス株式会社に対し、次のとおり主張して、不当利得返還請求権に基づき、過払金の返還及び法定利息の支払を求めた事案です。
訴え提起は、依頼者ご本人がされ、途中で依頼を受け、当事務所で担当した案件です。
依頼者ご本人は、第1審である旭川地裁が判決が認めたのと同じ範囲で主張していたのですが、
当事務所で下記2)のような主張を追加し、請求を増額する訴え変更をしました。
第1審は、変更した主張を認めませんでしたが、
第2審である札幌高裁で満額認めてもらうことができ、元金だけで260万円を超える増額させ590万円余りを獲得することができました(法定利息なども含めると640万円余り)。
1)本件取引1
貸金業者であるプロミスとの間で金銭消費貸借契約を締結して借入れと返済を繰り返し、この取引において、貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律(平成18年法第115号)による改正前の利息制限法1条1項所定の制限を超過する利息を支払い、この制限超過部分を元本に充当し、計算上元本が完済となった後にも支払った過払金がある。
2)本件取引2
併せて、本件取引1と並行して、株式会社クラヴィス(設立時のリッチ株式会社との商号が、株式会社ぷらっと、株式会社クオークローン、株式会社タンポートと順次商号を変更し、現商号になる。)との間でも金銭消費貸借契約を締結して借入れと返済を繰り替えした後(本件取引2の1)、ほかの子会社を再編したプロミスとの間で新たに基本契約を締結して、プロミスから借り入れた金員でクラヴィスとの取引残高を返済し、それ以降プロミスとの金銭消費貸借取引を継続した(本件取引2の2)ことについて、クラヴィスからプロミスへの契約上の地位の移転、プロミスへの併存的債務引受及び信義則違反を理由に、両取引が連続するものとして計算した上で、これらの取引においても過払い金がある。
第1審は、本件取引2について、クラヴィスとの取引がプロミスとの取引に連続するものといえない(発生した過払金返還債務を承継しない)として、本件取引1,2を併せて336万2100円の返還とその法定利息の支払のみを認めました。
しかし、第2審は、「控訴人と被控訴人とは、本件切替手続を行うに当たり、被控訴人が、控訴人との関係において、本件取引2の1に係る債権を承継するにとどまらず、債務についても全て引き受ける旨を合意したと解するのが相当であり、債務についても全て引き受ける旨を合意したと解するのが相当であり、この債務には過払金等の返還債務も含まれていると解される。そして、……。……、本件取引2全体を一連のものとして計算すべきことは明らかである。」として、本件取引1,2について変更後の請求全てある592万5732円の返還とその法定利息の支払を認めました。
この第1審と第2審の間には、最高裁判所平成23年(受)第516号・同年9月30日第二小法廷判決(貸金業者Yとその完全子会社である貸金業者Aの顧客Xとが,金銭消費貸借取引に係る基本契約を締結するに当たり,YがXとの関係において,AのXに対する債権を承継するにとどまらず,AのXに対する債務についても全て引き受ける旨を合意したものと解された事例)があります。
最後に要点をまとめた準備書面
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平成22年(ワ)第239号不当利得返還請求事件
原 告 ○○○○
被 告 プロミス株式会社
準 備 書 面
平成23年1月13日
旭 川 地 方 裁 判 所 民 事 部 御中
原告訴訟代理人弁護士 前 田 尚 一
同訴訟復代理人弁護士 〇 〇 〇 〇
原告は,被告第2準備書面の第3に対し,次のとおり反論する。なお,略語等は,本書面で新たに用いるもののほか,従前の例による。
被告は,原告との間で,平成19年9月5日,本件取引2を開始したところ,原告がクラヴィス(当時の商号 リッチ株式会社)との間で平成2年11月8日開始した取引(以下「本件旧取引」という。)により生じた過払金返還債務(以下「本件過払金返還債務」という。)を承継していないなどと主張する。
しかしながら,被告が,クラヴィスと共に平成19年7月2日から同年9月30日にかけて顧客に推奨して実施した貸主を被告に切り替える手続は,同年の貸金業関連法の改正等による事業環境の悪化に伴うプロミスグループの再編の一環として,クラヴィスの全店舗を閉鎖してその事業を縮小することに伴い,クラヴィスの優良顧客を取り込む戦略から行ったもので,経済的にはもとより法律的にも(クラヴィスは平成12年5月被告の完全子会社となっている。)
一体化しているグループ内の単なる便宜的措置にすぎないこと,上記切替えに同意しない顧客については同年10月1日に債権を一括譲渡する扱いをしていること,クラヴィスは,同年9月全店舗が閉店し,同年10月貸金債権のほとんどを被告に譲渡して,同年12月貸金業を廃業したことも併せ考慮すると,実質的に被告がクラヴィスの営業基盤そのものを承継していると見ざるを得ないことに加え,上記貸金債権の譲渡を受けた場合については,被告はクラヴィスの過払返還債務を承継するものと解さざるを得ないが,もっぱら被告側の都合で実施される切替えの有無によって,顧客間に別異の法的効果が発生することを許容することは,理由に乏しく,明らかに均衡を失するものであることなどを総合すると,実質的観点から事態を観察する限り,被告が本件過払金返還債務を負担しないとすることは,著しく不合理な結論であるというほかない。
被告は,被告とクラヴィス(当時の商号 株式会社クオークローン)の間で平成19年6月18日締結された業務提携契約(乙24。以下「本件業務提携契約」という。)においては,契約上の地位の移転が明示されていないということを主たる理由として,被告・クラヴィス間において,本件旧取引に係る被告がクラヴィスの貸主としての地位を移転させる意思があったとは認められない旨主張する。
しかし,本件においては,上記クラヴィスの貸主としての地位が,被告に承継されたと認めるのが相当である。理由は以下のとおりである。
1 本件業務提携契約の意味
被告・クラヴィス間の本件業務提携契約(乙24)において,(1)契約切替えに関し,クラヴィスが被告のために申込みを取り次ぐ等の媒介業務を訴外会社に委託すること(3条1項),(2)クラヴィスが顧客に対して負う過払金返還債務及び利息債務について,被告・クラヴィスが連帯して責任を負うこと(5条2項),(3)クラヴィスの顧客との間の利息返還等に関する苦情や紛争は被告の責任において処理し,顧客に対しても切替後におけるすべての紛争に関する申出窓口を被告とする旨を告知すること(5条3・4項,6条1項・2項)などが合意されている。
上記のとおり,被告・クラヴィス間において,被告がクラヴィスの過払金返還債務及び利息債務について連帯責任を負うことに加え(もとより,「連帯」は,基本契約における内部関係ではなく,外部関係で用いられる法的概念であって,実際,別途内部関係における負担部分も定めている。つまり,原告との関係での法律効果を表現する概念である。),被告がクラヴィスの顧客とのすべての紛争の窓口になることをも定めていることを勘案すると,条項において「契約上の地位の移転」との文言はないとしても,被告とクラヴィスは,クラヴィスの貸主としての地位を承継することを合意したものと解釈するのが合理的である。
2 債権者たる原告の同意
契約上の地位の承継の効果が発生するためには,債権者の同意が必要となるところ,原告が被告との間で,新規の金銭消費貸借の体裁をとる本件取引2を開始した事情は次のとおりであって,クラヴィスの貸主としての地位を被告に移転することついて,原告の少なくとも黙示の同意を認めることができる。
すなわち,平成2年11月8日クラヴィス(当時の商号 リッチ株式会社)との取引を開始した原告は,平成19年8月下旬,被告から,原告の携帯電話に,クラヴィス(当時の商号 株式会社クオークローン)の店舗が全て閉鎖となり債権を被告に移管するので,近くの被告店舗で手続をして欲しいと連絡を受けたところ,次回返済約定日に,被告永山支店に赴いて対応すると返答した。
同年9月5日,原告が同支店に赴いたところ,被告担当者から,現在のカードは使用できなくなるため被告へ移管する手続を取らなければならず,被告から借入れをしてクラヴィスへ返済した形を取ってもらうことになると説明を受けた。
そして,利率は,現在より多少低めであること,新しいカード自体は返済だけに利用できるものとなるが,被告との取引は従来どおりであるとの説明を受けて,指示された書類の作成に応じた(乙10ないし13。)。
原告は,本件取引2について,原告の平成22年11月19日付け準備書面添付の別表1のとおり金銭の借入れと弁済を行った(甲3,4)。
上記各事実を総合すれば,原告が,従前からのクラヴィスとの取引関係を被告との間でも維持できるものと考えて,被告の求める対処に応じたものであることは明白であって,単に被告との新規の金銭消費貸借契約やその基本契約,振込代行を依頼するという形式だけを合意したものではなく,原告において,少なくともクラヴィスの貸主としての地位を被告に移転することについて黙示に同意したことは容易に認めることができる。
3 以上のとおりであるから,クラヴィスの原告に対する貸主としての地位は,被告に承継されたものである。
仮に,何らかの理由で,本件業務提携契約においては,契約上の地位の移転についての合意が認められないとしても(もっとも,併存的債務引受の主張は,契約上の地位の移転の主張と請求原因として同価値であって,予備的主張にはあたらず,両者は選択的主張の関係にある。),本件においては,被告は,第三者のためにする契約と構成される併存的債務引受の効果として,原告に対する本件過払金返還債務を負担することになる。
理由は以下のとおりである。
1 本件業務提携契約の意味
本件業務提携契約(乙24)は,クラヴィスの顧客の利益の保護を図ることも目的の一つであるところ,見出しが《(併存的債務引受と費用負担)》とされた5条中の2項は,クラヴィスが顧客に対して負う過払金返還債務及び利息債務について,被告・クラヴィスが連帯して責任を負う旨定めており,同条項における合意は,クラヴィスの顧客の利益の保護を図ることを目的とするものであって,第三者のためにする契約ということができる。
2 第三者たる原告の受益の意思表示
第三者のためにする契約に基づいて当該第三者の引受人に対する権利を取得するのは,当該第三者が受益の意思表示をしたときであるが(民法537条2項),原告が被告との間で新規の金銭消費貸借の体裁をとる本件取引2を開始した事情は前記第1の2のとおりであるところ,本件取引2を開始するに当たって,被告が契約を引き継ぐものと認識し,「私は,プロミスグループ再編により,株式会社クオークローン/サンライフ株式会社に対して負担する債務を,新たにプロミス株式会社からの借入により完済する契約の切替について,以下の1から4の内容を確認・依頼・同意のうえ署名します。」という記載のある被告及びクラヴィス(当時の商号 株式会社クオークローン)等宛の「残高確認書兼振込代行申込書」と題する書面に署名している(乙13)のであるから,原告は,同申込書を提出することをもって,本件旧取引に係るクラヴィスの契約上の地位が被告へと移転するとの認識の下に,これに同意したものとみることができる。
そして,契約上の地位の移転は,移転元が相手方当事者に対して同契約に基づく債務を負う場合には,これを移転先が引受承継することもその内容とするというべきであるから,これに対する同意は,移転元(クラヴィス)が相手方当事者(原告)に対して負う債務を,移転先(被告)が引受承継することの同意を含むものということができる。
したがって,本件においては,原告が,本件過払金返還債務存在あるいは被告・クラヴィス間の併存的債務引受の合意があることを明確に認識していたかどうかにかかわらず,上記のとおりクラヴィスの貸主たる契約上の地位が被告へと移転することに同意することをもって,第三者のためにする契約について受益の意思表示をしたものと解釈するのが合理的である。
3 以上のとおり,併存的債務引受に係る被告・クラヴィス間の第三者のためにする契約が成立し,これについて原告が受益の意思表示をしているのであるから,被告は原告に対し,本件過払金返還債務を負担することになる。
4 しかるに,被告は,被告とクラヴィス(当時の商号 株式会社タンポート)間で締結された変更契約において,被告は何らの債務を負担しないことが合意されたことから,本件業務提携契約5条2項(乙24)は変更され,本件過払金返還債務を負担しないと主張する。
しかしながら,原告の受益の意思表示がされたのが,平成19年9月5日であるのに対し,上記変更契約が締結されたのは,平成20年12月15日であるところ,いったん権利が発生すれば,債務者と引受人との間の合意のみをもって権利の内容を変更し,又は消滅させることはできないのであるから(民法538条),一見すると抗弁であるかのような被告の上記主張は,主張自体失当であるといわなければならない。
蛇足の主張ではあるが,原告は,念のため,仮に,何らかの理由で契約上の地位の移転の主張及び併存的債務引受の主張がいずれも認められないとしても,前記第1で述べた実質的事情,前記第2,3で述べた本件の経緯に係る事情を総合考慮すると,被告が本件過払金債務を負担しないと主張することは信義則に反して許されないものである,と主張しておく。
なお,被告がする信義則違反に関連する主張は,上記の視点とは異なり,併存的債務引受との関係で述べるものであるが,過払金返還債務を承継しないと主張することは信義則に反するものでもないとするが,前提とする原告の受益の意思表示と主張の変更契約締結の先後関係を誤ってする主張であり,およそ採用する余地はない。
以上
弁護士 前田 尚一(まえだ しょういち)
前田尚一法律事務所 代表
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、弁護士として30年を超える経験、実績を積んできました。
交通事故、離婚、相続、債務整理・過払い金請求といった個人の法律問題に加え、労務・労働事件、クレーム対応、債権回収、契約書ほか企業法務全般も取り扱っています。
前田法律事務所
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