熟年離婚とは
熟年離婚とは、結婚して20年以上など長年、夫婦関係にあった者、または熟年と呼ばれる年齢にある者同士が離婚することを指します。明確な基準はありませんが40~50代以降の夫婦の離婚が熟年離婚とされることが多いです。
熟年離婚の実態
熟年離婚は年々増加傾向にあり、社会問題の一つにも数えられることがあります。
厚生労働省の「令和3年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、令和3年に離婚した184,386件のうち、同居期間が20年以上になる夫婦は38,968件で、約21%を占めています。5組1組は同居期間が20年を超える夫婦であり、離婚件数全体に占める割合も年々増えてきます。
熟年離婚の原因について、夫に原因があるものとしては、モラルハラスメント、不貞行為をはじめとした不倫や暴力などが挙げられます。妻に原因があるものとしては、性格の不一致、浪費、両親との不和などがよく挙げられます。
熟年離婚の財産分与
現金・預貯金
熟年離婚は普通の離婚と同様に、離婚の際に財産分与が行われ、婚姻中に夫婦が築いた財産は、2分の1ずつに分与するのが原則です。
不動産
不動産はそのままでは分割できないので、「家を売却して現金化し分け合う」もしくは「一方は住み続け、一方は現金を受け取る」のどちらかの方法で分与されます。住宅ローン等が残っている場合、不動産価値を算定するにあたって、残ローンの金額は価値から差し引かれます。まずは固定資産評価証明書を取得し、どの程度のローンが残っているかを確認しましょう。
退職金
退職金も財産分与の対象になります。退職金は必ず全額が財産分与の対象にはならず、婚姻期間中に積み上げられたものが対象となります。また、別居期間中も財産分与の対象にはならないため、別居期間を差し引いた金額を計算で求めることになります。
年金
年金分割は、すべての年金に対し請求できるわけではありません。請求できる年金の種類は「厚生年金」や「共済年金」に限られます。
年金の分割割合について、2008年4月以前に納付した年金については、分配の割合の決定にはお互いの合意が必要となります。2008年4月以降離婚するまでの加入分の年金分割の割合は、2分の1と決まっています。
熟年離婚に関する3つの手続き
協議離婚
協議離婚では、夫婦で離婚の協議を行ないます。離婚をするか否か、財産分与・慰謝料・子が未成年者である場合には親権・養育費といったことについて話し合って決めます。
夫婦間で話し合いがまとまった場合は「離婚協議書」を作成します。これによって協議後から離婚時までに気持ちが変わっても、離婚を成立させることができます。
調停離婚
協議での離婚がまとまらない場合、調停手続きによって離婚の成立を目指します。調停とは、家庭裁判所に申立てをし、当事者の間に調停委員が入り、双方の意見や主張を聞きながら、妥協案を探すことです。これによって合意が得られる場合、調停調書を作成して離婚します。調停でも合意が得られないような場合、多くは裁判離婚に進みます。
裁判離婚
調停が整わないときには、当事者の一方が裁判を起こします。なお、離婚裁判では、以下のような離婚の事由が必要になります。
・不貞行為や悪意の遺棄
・3年以上の生死不明
・回復の見込みがない精神病
・婚姻の継続をしがたい事由
裁判手続きで最終的には和解や判決という形で離婚の可否・財産分与・慰謝料などが決められます。
熟年離婚は弁護士に相談を
婚姻期間が長い夫婦の離婚ほど、請求できるものが増え、受け取れる金額も増えるでしょう。しかし、準備が不足で不利な条件で離婚をしてしまい、生活に困る状況に陥ることもありますので、十分な準備をしたうえで離婚の手続きをしましょう。
熟年離婚を円満に解決するため、弁護士の協力が必要不可欠です。弁護士の介入により、しっかり準備をしたうえで離婚の手続きを行なうことができます。そのため、一度法律家に相談することをお勧めします。