(初出:財界さっぽろ2021年03月号)
求人倍率が激減 解雇も増加傾向
厚生労働省によると、2020年の有効求人倍率は1.18倍で、4月以降は1倍を切っています。これは45年ぶりの下げ幅であり、平均休業者数は過去最大となったとのことです。
有効求人倍率は09年を底として18年まで右肩上がりに上昇し、19年は下降気味の横ばい、そして20年に一気に下落しました。なお、東日本大震災が起きた11年は右肩上がりの途中でした。天災的現象といっても、コロナ禍の特異性がわかります。
コロナに関連する解雇や雇止めの見込み数は、今年1月22日時点で全国で8万3713人。北海道は3326人と試算され、全国5番目の多さです。
外面だけを見ないでコロナ禍全体を捉えよ
本来、有効求人倍率の下落は人手不足に悩む企業にとって、人員採用の労力を軽減するものです。しかし、今回はコロナ禍による売上・収益の減少という企業側の事情によるものであり、社会経済全体としてみると、採用の要否・可否が相反しています。
〝ピンチはチャンス〟と言われても、即効的な特効薬などはなく、大半の企業は生き残りに手一杯というのが現実でしょう。求職者が多くなっても、コロナ禍で従業員が流出した業種は限定されており、企業が求める経験やスキルが乏しく、なかなか採用には至らないといった実情もあるようです。
また、特にマスコミ報道を通じてテレワークが労使双方からもてはやされていますが、その実態を考えるとそう単純なものではありません。出来事の上辺だけでは一義的に見える場合もありますが、それを引き起こす重大要因の影響度と諸要因が影響を及ぼすまでの時間差、そして諸要因が影響をもたらす順序によって、その後の趨勢は大きく変わっていきます。
コロナ禍は、われわれ弁護士の業務の範囲で言うと、企業の倒産や解雇、残業代請求、整理解雇が増えると思われがちです。しかし、時間的流れと出来事の構造によって発生する問題の有無や数、割合は大きく変わってきます。
緊急事態宣言の発出・解除・延長はぎりぎりまで確定しませんし、緊急事態宣言との関係で「雇用調整助成金」(特例措置)などの現行措置についても、いつまで延長されるかは予測できません。窮迫する医療現場の解決策もいまだ妙案はありません。
つまり、先が見えないコロナ禍の現況では、事態に即応して臨機応変に対処できるように、自分でコントロールできる体制を構築しておく必要性が高まっています。出来事の外面だけを一面的に把握するのではなく、自身の個別具体的な状況を押さえた上で、コロナ禍という出来事全体を見渡していかなければならないでしょう。