初出:財界さっぽろ2021年9月号
連載[生活に潜むリーガルハザード]
最終回「質の高い本格リーガルサービスにこだわる」
法律事務所の流行は
〝定型・低価格化〟
連載の始まりは2011年5月号で、3月11日に東日本大震災が発生した年でした。
この10年で社会自体が激動していますが、弁護士業界も大きく変容しました。11年に3万485人であった弁護士数は、15年の法科大学院(ロースクール)の設置を介し、本年7月1日現在で4万3
166人と約1万3000人も増加しています。
この〝弁護士大量増員時代〟の到来は、必然的に法律事務所の形態・規模のあり方を変えています。その一つの大きな流れは、定型的・類型的な法律業務のサービスを低価格で迅速に提供するという
法律事務所の増加です。
これは長年問題とされてきた弁護士に対するアクセス障害の解消に貢献しました。しかし、サービスの品質を維持・向上させるためには、一定の規模を維持し、拡大方向で人員等を確保することが必
須であり、そのための費用と労力の投入は膨大なものとなります。しかし、反対にリーガルサービスの日常品化は、良くも悪くもコモディティ化につながり、価格競争が加速するでしょう。
企業に応じた 〝非定型〟
サービスを提供
一方、社会全体で大量生産・大量消費の時代が終わり、企業は独自性を基に必要なものを見極め、ピンポイントで活動していかなければならないのが現在です。
当事務所は流行とは真逆の役割も不可欠と考え、個々の企業と濃い関係を構築しながら、各企業の独自で固有の志向に合わせた個別的かつ具体的サービスを提供する方向で事務所運営を進めています。
労働紛争の解決業務としては、労組対策・団体交渉対応にも注力しています。顧問弁護士としては、メンタル面で顧問企業の人材の生産性向上を図るため、従業員のプライベートでの法律トラブルを支援する福利厚生として注目される「EAP(従業員支援プログラム)」を提案しているほか、現場でのクレーマー対策に求めるスキルを下げざるを得ない人手不足時代における「カスハラ(カスタマーハラスメント)に対する企業対応」のレクチャーも行っています。
また、的確な相談相手もおらず、批判してくれもる人もいない中小企業の経営者を支援するため、上場会社と趣を異にした「社外取締役」制度の活用などといった新たな仕組みの研究・開発にも取り組んでいます。
次はリアルの世界でお目にかかれれば幸いです。依頼者にとって重要なことは、自分の置かれた状況を把握できること。法律問題か不安でしたら、ぜひお声掛けください。