復古ページ:近くの横断歩道を渡らなかった自転車につき、重大な過失ではないとし,将来の介護料を認めた事例 - 札幌の弁護士|前田尚一法律事務所
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当事務所が取り扱った事案の解説
交通事故
近くの横断歩道を渡らなかった自転車につき、重大な過失ではないとし,将来の介護料を認めた事例
札幌地方裁判所平成9年6月27日民事第1部判決
本件は,「新しい判例」として,次の見出しで「自動車保険ジャーナル」紙に掲載されたものである(平成9年10月30日 第1219号)。
近くの横断歩道渡らなかった自転車
重大な過失ではない 過失3割
呼吸管理の1級3号者 病院入院の介護料 日額5000円なお,損害賠償額については,自動車共済の最終提示額(残額)はわずか54万円でしたが,裁判を起こした結果,合計2300万円以上の支払を受けることができることになった。この点について詳しくは,本稿の後半で具体的な金額も参考としてあげながら触れることにします。
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被害者が,近くの横断歩道を渡らず無灯のまま自転車に乗って幹線道路を横断中,交通事故に遭い首から下が不随となったという事案である。
被告は,このような場合,7割以上の過失相殺をすべきであると主張していたが,当方も徹底した反論をした結果,判決は,近くの横断を通行しなかったとしても重大な過失とはいえないとして,過失割合を3割にとどめる判断をした。
また,将来の介護料として日額5000円が認められた。
なお,本件では,近親者らの慰藉料も認められている。本件では,訴訟提起前にも,裁判の結果,近親者らの慰藉料も含め,総額1900万円弱の賠償が認められた(実際の受取額は,遅延損害金も含めて,2300万円強)。
この金額は,全損害額として認定された約9700万円(逸失利益と将来介護費用等については中間利息を控除)について過失相殺をしたうえ(3割減),すでに支払済みの治療代など既払金約5000万円を差引いて(損害の填補),弁護士費用を加算した金額である。
しかし,自動車共済は,訴訟提起前に,過失割合が4割5分であると主張し,残額としてわずか54万円の支払を提示していたにすぎない。死亡あるいは重大な後遺症がある事案では,保険会社や自動車共済と裁判所との間には算定基準それ自体に差異があるなどの理由で,裁判を経た方が,金額が多くなるのが通常である(裁判を経て金額が大きくなった別の事案(死亡事故の裁判例))。
もちろん,裁判となれば,保険会社・自動車共済側もプロであるから,賠償額を減額するために,いろいろな法律的な争点を提示してくるのが一般であり,それに対抗するためにはの専門知識も必要になる。本件が上記のとおり「自動車保険ジャーナル」紙で紹介されたのは,自動車共済側が問題とした過失相殺や将来の病院入院介護料についても,裁判所で闘った結果,被害者の立場で納得できる程度にまで解決できたからである。
しかし,それにしても,本件で自動車共済の提示した金額は,驚くのを通り越して,あきれるほかない。専門家に相談することもなく,「こんなものか?!」と信じ込み,言われるままに示談してしまう被害者・遺族も,きっと多いに違いない。わが国は,保険制度が相当整備されているはずなのに,実に残念なことである。
本件でも,ご本人が病院で寝たきりだったので,息子さんが自動車共済と話をしていたが,もし共済の担当者の提示を鵜呑みにしていたら,・・・・・・。そう,なんとも言いいようのない,そんな事態になっていた,かもしれない。
まさに, 『法律』は,弱い立場にあるからといって味方をしてくれる訳ではなく,『法律』は,“ 法律を知っている者に味方する!!”と言わざるを得ない場面である。
【金額の対比】
裁判所認容額(円) 共済提示額(円)
治療費 12,829,713 12,820,000
入院雑費 490,000 280,000
休業損害 3,122,695 2,660,000
逸失利益 25,145,916 26,550,000
将来の介護料 27,189,032 16,190,000 大きく違う
生活装具 61,487 60,000(?)
慰藉料 25,000,000 12,500,000 大きく違う
近親者慰藉料 3,000,000 0 共済はゼロ査定
その他 60,000
小 計 96,838,844 71,060,000 この段階で2500万円以上違う
過失割合 30%(減) 55%(減) 過失割合には大きな違い
損害の填補 50,748,329 38,540,000 ここは算定した時期の違い
弁護士費用 1,700,000 0 共済はゼロ査定
合 計 18,738,861 540,000
遅延損害金 4,410,049 0 共済は,事故後2年後でもゼロ査定総合計 23,148,910 540,000 22,608,910の増額!!
弁護士 前田 尚一(まえだ しょういち)
前田尚一法律事務所 代表
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、弁護士として30年を超える経験、実績を積んできました。
交通事故、離婚、相続、債務整理・過払い金請求といった個人の法律問題に加え、労務・労働事件、クレーム対応、債権回収、契約書ほか企業法務全般も取り扱っています。
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