★和久井キャスター 大きな社会問題ともなった 血液製剤を介して感染した「薬害C型肝炎」。 民主党の福田衣里子議員などの被害者たちが、 各地で国などを訴えた裁判の結果、 3年前、「薬害肝炎救済法」が成立しました。 しかし、法律ができても患者の救済は進んでいません。 そのワケを追うと、法律の課題が見えてきました。
★VTR (水谷和子さんを訪ねる) 札幌市清田区の水谷和子さんです。 水谷さんはC型肝炎の感染者です。
(水谷和子さん) 30年以上前に旭川市内の病院で受けた手術が、 感染の原因だと考えています。
(水谷和子さん) 「(何の手術?)子宮筋腫」 「旭川では大出血したし、止血剤は絶対していると思う」
(フィブリノゲン) 水谷さんが指摘した止血剤。 旧ミドリ十字社製の血液製剤「フィブリノゲン」です。 大量出血の際の止血剤などとして使用されていました。 このフィブリノゲンなどに混入していた ウイルスが原因で引き起こされたのが「薬害C型肝炎」です。
(CG) 現在、肝炎ウイルスは主にA型からE型までの5種類が確認されています。 このうち特に深刻なのが、「B型」と「C型」です。
(札幌緑愛病院・川西輝明医師) 「持続的に感染して、肝硬変や肝がんの原因となる ウイルスはB型とC型で、気をつけなければならない。 肝硬変になると薬の効きが悪い。いかに早く見つけるかが一番」
(札幌緑愛病院・川西輝明医師) C型肝炎については治療法が確立されてきたものの、 危険な病気であることは間違いないといいます。
(2008年参議院) 「賛成239、反対0。全会一致をもって可決されました」
(国会) 2008年1月、患者の状態に応じて、 1200万円から4000万円を支給する、 薬害C型肝炎の救済法がスタートしました。
(福田康夫首相・当時) 「時間をかけてしまったことに本当に申し訳なく思っている。 薬害が再発しない仕組みも考えていかなければいけない」
(福田康夫首相・当時) 問題は解決したかに見えました。
(厚生労働省) しかし、全国に1万人以上いるとされる薬害C型肝炎の患者のうち、 救済法の支給対象となったのは、先月末で1684人。 法律の開始から3年が経過しても8割以上が救済されていません。
(横内記者) 「救済を受けるためには、国を相手に裁判を起こし、 その中で感染の原因を証明する必要があります。 証明の前提となっているのが当時のカルテです」
(カルテ) カルテの記録や医師の証言により、 C型肝炎の薬害感染を証明することが 救済の前提となっているのです。
(水谷和子さん) 「(病院に)カルテは、何十年前ですけど残っていますかって、 こういう名前ですけどと言って。 子宮筋腫で手術した記憶があるんですけどと。 (病院の返事は)『とっくにないです』って」
(資料を見せてもらう) カルテの保存義務は5年。 それならば、当時の医師に証言してもらおうと、 水谷さんは書類を病院に送って問い合わせました。 返事は水谷さんを失望させました。 記録が残っていないため「35年前の状況については解答できない」。 これが病院の結論でした。
(書類と水谷さん) 個人で証拠を集めて裁判を起こすことの難しさを 水谷さんは痛感しています。
(水谷和子さん) 「これで肝臓の病気で命を落とした人にしてみれば、 本当に悔しいことですよね。かわいそうだなと思いますね」
(血液製剤の納入先リスト) これは製薬会社が血液製剤を納入していた病院の一覧です。 厚生労働省が公開しています。
(「廃院」、「不明」の文字) そこには「廃院」、「廃止」などの文字が並びます。 血液製剤が出回っていたのは数十年前。 カルテどころか病院の存続も危うい状態です。 これが救済が進まない大きな理由です。
(原告の女性) 「カルテの記述というのであれば、 ほとんど(救済)しませんよというようなもの」
(原告の女性) 札幌市内に住む50代の女性です。 女性はC型肝炎に感染し、慢性肝炎を発症。 現在、救済を受けるために、国を相手に裁判を起こしています。 周囲の偏見や仕事への影響を考え、 匿名を条件に取材に応じてくれました。
(原告の女性) 「出産したんですけども、その後出血が止まらなかった。 どんどん出血がひどくなって、 バケツをひっくり返したような感じでどばっと何回も出て。 子宮破裂だったんです」
(手術室・イメージ映像) 女性は26年前に受けた手術の際に使われた血液製剤が原因で、 C型肝炎に感染したと主張しています。
(原告の女性) 「肝炎で入院して、退院後もずっと体調不良でした。 それも赤ちゃんを抱えてどうやって面倒見ればいいのか、 すごい大変でしたね」
(薬を見せてもらう) 女性は今も薬を手放すことができません。 国に救済を求めることを決意しましたが、 すでに当時の病院は移転し、カルテも残っていませんでした。
(原告の女性) 「お医者さんも探せないし、 医師会に問い合わせしましたら個人情報なので教えられないと(言われた)」
(記録を見せてもらう) 女性は保険会社に保管されていた入院の記録を手がかりに、 当時の医師を探し出し、裁判までこぎつけました。 費やした時間は、2年をこえています。
(裁判所) 救済は時間との戦いでもあります。 救済法の対象となるためには、 再来年1月までに裁判を起こすことが必要だからです。
(前田尚一弁護士) 多くのC型肝炎の裁判を手がける前田弁護士は、 患者側に証明を求める現在のシステムには、 大きな問題があると指摘します。
(前田尚一弁護士) 「医者が今何をやっているか、どこの病院にいるか、 一番簡単にわかりやすい立場は厚生労働省じゃないですか。 そこで調べてもらうシステムが当初からあれば、 こんなに苦労しないということになる」 「本来は行政の中で手続きを進めていけば足りる話を 裁判所に行かなければだめにしてしまったり、 その(裁判の)中で自分で(書類を)探せとなることが 一番良くないことだと思う」
(裁判所) カルテがない患者のうち、 これまで救済対象となったのは291人です。 1万人以上とされる患者の多くが “カルテなしの患者”とみられています。 救済法の成立から3年、提訴期限まではあと2年です。 END
★和久井キャスター 4月には、カルテがない患者数十人が、 道内では初めて国を相手に集団で裁判を起こす予定です。 なお、厚生労働省では、患者の特定のため 「1994年より前」に手術で大量出血をした人などに対して、 肝炎検査を呼びかけています。 以上、ココに注目でした。 |