札幌の弁護士「前田尚一法律事務所」です。
一つの法令の中にある様々な規定は任意規定と強行規定の2種類に分類されます。
特に私法では両者の区別が重要になってくるので、
その違いを理解していきましょう。
まずは任意規定からご説明します。
任意規定とは一般に法律に従わなくてはならないと考えられていますが、
条文の中には、必ずしもそれに従う必要のない規定もあります。
これを任意規定と呼びます。
任意規定とは、当事者が法令の規定と異なる合意をした場合には、
当事者の意思が優先され、その合意も有効とされる規定の事をいいます。
任意規定の定めと異なる内容の合意がある場合には、
その規定に従う必要はないのです。
任意規定は、当事者の意思表示が不明瞭な場合にそれを解釈したり、
当事者が合意していない部分を補填したりするための規定といえます。
民法第606条では、賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。
とあります。
これは任意規定なので、この規定と異なり、建物の賃貸人と賃借人が、
修繕は全て賃借人が行うと合意した場合にはその合意が優先され、
賃貸人は修繕義務を負いません。
一方、賃貸借契約の中で修繕について何も合意がない場合には、
この規定が契約の内容を補填し、賃貸人が修繕の義務を負う事になります。