札幌の弁護士「前田尚一法律事務所」です。
条文・判例・学説の3つは相互に関連しています。
例えば、判例を受けて条文が改正される場合があります。
かつての利息制限法1条2項は、
いわゆる過払い金(貸金業者に対して、法定利息を超過して返し過ぎた金銭)があっても、
借主はそれを返還請求する事ができない旨を定めていました。
しかし、昭和43年に登場した判例は、借主による過払い金の返還請求を認め、
利息制限法1条2項を事実上、空文化させました。
その後も借主を保護する判例が続々と現れ、平成18年の法改正により、
この規定が廃止されるに至りました。
その後CMでも多く放映されている過払い金の返還請求訴訟が提起されるようになりました。
また、判例が学説に影響を与える場合もあります。
刑法の共謀共同正犯がその代表例です。
共謀共同正犯とは、実行行為を行わなかった者であっても、
共謀に参加した場合には共同正犯(刑法60条)としての罪責を負うという理論です。
判例は大審院時代からこの理論を認めていましたが、
かつての学説の多くは、実行行為の共同がない以上は共同正犯とはいえないとして、
共謀共同正犯を否定してきました。
しかし、共謀共同正犯を認める判例が蓄積するに従い、学説でもこれを認めるものが登場し、
現在では共謀共同正犯を肯定する説が通説となっています。
学説が条文や判例に影響を与える場合もあります。
法改正にあたり、解釈に争いがあった条文について学説が参考にされ、
通説的な理解が改正後の条文に反映される事があります。
これは、学説が条文に影響を与える例です。
また、学説は判例を批判的に検討し、より良い解決策を提示していく役割を担っています。
最高裁判所が学説の意見を採用して判例を変更する事もあり、
これは、学説が判例に影響を与える例です。