企業法務 | 札幌の弁護士なら前田尚一法律事務所

CORPORATE LEGAL AFFAIRS企業法務

企業関係のお客様の声

CORPORATE LEGAL AFFAIRS
取扱っている企業法務

WORK RECORD
企業法務に関する実績・実例

プライバシーの問題がありますので、判例集、判例雑誌に登載、
または新聞等マスコミで報道されたなど、一般に公表された案件に限ってご紹介致します。

会社の支配権・事業承継

家業を法人化した際、先代が株式払込金を支出した場合において、長男・長女を実質的株主として株式を取得させるため、その株式払込義務を代わって履行したものであるとして、長男・長女の株主権を認めた事例

閉鎖的な同族会社では、個々の家族構成間の利害関係を背景として、誰が株主なのか争いとなる場合があるが、本判決は、先代が資金を出したにもかかわらず、長男の株主権を認めた。

本件は、株式払込金の負担金ではないという形式だけで事柄を決することなく…実質を重視してきめ細かな判断を示し」ており「事例的意義を有するものとして、実務上参考」になるとして、判例雑誌「判例タイムズ」誌に紹介された(1011号240頁以下)。

誰が株主になるのかについては、東京地裁民事8部経験の元裁判官(元木)からの批判もあるが、判例は「実質説」に確定している。
ただ、“実質”説であるだけに、具体的事案において、何をどの程度主張・立証すれば実質的に株主であると認められるのかは必ずしも明らかではないように思われる。

現実に払い込みをしたことを主張・立証できれば、決定的な要素とはなるであろうが、会社設立後時を経ると、現実にそれを立証するのは困難であって(何十年も前の振込用紙を補完していることはむしろ稀であろう。)、教科書的説明としては理解しやすいけれども、実際の立証の可能性を考えると、現実的ではないように思われる。そして、払込以外の事実としてはどのような事実がプラス要素となるかについて実務的観点から検討を加えた文献は見あたらない。

理論的な検討は別として、“実質”説を採る以上、基準も抽象的にならざるを得ない宿命があるだけに、実務的には、事例的意義を有する裁判例が集積されることが期待されるものの、商法177条の裁判例として公表されている裁判例は、「見せ金」関係のものが多数である。
また、株式と名義というテーマでは、株式譲渡、名義書換に係る事例に関する裁判例は少なくないが、株式を原始的に取得した者について端的に判断した裁判例で公表されているものは、私の知る限り、東京地裁昭57・3・30判タ471・220だけであった。

(札幌地方裁判所平成9年11月6日判決:「判例タイムズ」1011号240頁)

オーナー社長の死亡に対する対処

会社の代表者の死亡による逸失利益について現実の報酬を基礎として算定された事例(被害者を代理)

保険会社の最終提示額6,000万円弱であった会社の代表者の死亡事故について、裁判を起こした結果、9,000万円を超える手取額となった。会社役員の逸失利益は、その算定の基礎収入から利益配当部分を控除すべきであるとする裁判例が少なくないが、判決は、現実の報酬額を基礎として算定された。

本件は、損害賠償額については、保険会社の提示額は6,000万円弱に過ぎなかったが、裁判を起こした結果、合計8,100万円強の金額が認容された事案であり、次のとおり、遅延損害金を含めると9,200万円を超えとなりました。最終的には3,000万円以上の増額となったことになります。
死亡あるいは重大な後遺症がある事案では、保険会社や自動車共済と裁判所との間には損害額の算定基準に差異があるほか、認められる損害にも違いがあるといった理由で、裁判を経た方が、金額が多くなるのが通常です。この点については、本稿の最後で触れることにします。

内容

裁判所認容額

保険会社最終提示額

治療費

121,838円

121,838円

逸失利益

48,185,280円

44,478,720円

慰謝料

24,000,000円

13.500,000円

葬儀費

2,000,000円

1,300,000円

損害の填補

▲121,838円

▲121,838円

弁護士費用

7,400,000円

0円

小計

81,585,280円

59,278,720円

遅延損害金

10,444,430円

0円

合計

92,029,710円

59,278,720円

さて、本判決は、「二つの会社の代表取締役を兼任する者の逸失利益について、現実の報酬額を基礎として算定した事例で、今後の同種事案の処理上参考になろう」として、判例雑誌「判例タイムズ」誌に紹介されました(990号228頁以下)。

本件は、ある会社グループ(総売上高約13億円)の現役ばりばりの創業者(61歳)が交通事故に遭遇し、不幸にも死亡してしまったという事案である。
会社役員が人身事故に遭った場合、逸失利益(死亡しあるいは後遺障害を負わなければ得られたであろう収入)や休業損害は、一般の給与所得者の場合と同様、現実の役員報酬を基に算定されると考える経営者の方も多いと思われる。

しかし、実は、裁判上の法律的な理屈はそうではない。

中小企業(小規模会社・同族会社)の会社役員の報酬の中には、2つの部分があるとされる。
①役員として実際に稼働する対価としての部分(労務対価部分)と②利益配当等の実質を持つ部分(利益配当部分)だ。

そして、逸失利益の算定の基になるのは、労務対価部分(①)に限られるとするのが裁判実務家(裁判官)の基本的考え方であり、いわば常識となっている(大工強「役員の休業損害及び逸失利益の算定」人身賠償・補償研究第3巻268頁)。

理屈自体はもっともな面もあるが、役員報酬を利益配当部分と労務対価部分を区別する明確な基準があるわけではなく、実際に起きた事件で両者を区別するのは困難なことである。もしこの理屈が形式的・算術的に適用され、常に利益配当部分としてかなりの金額が減額されてしまうことになれば、例えば、生活の中に公私の区別もなく、コマネズミのように仕事に没頭してきた創業者などの場合に、納得できない結論が出てしまうことになる。

本件でも、被告は、立場上当然のことながら、常識とされる理屈を主張してきた。これに対して、理屈を常識として無批判に受け入れる訳にはいかないが、さりとて、ただただ理屈を批判するだけでは意味がない。

原告(被害者側)の弁護士としては、なぜこのような理屈が生まれたのを、生の眼で検討してみたうえで、有効な対抗手段がないかを今一度考えてみる必要がある。この理屈は、経営者が、ぼろ儲けし過大な収入を得ていたような場合に、それを常識的な範囲に制限しようという裁判官の動機から生まれたのではないかということである。

そうすると、私のなすべきことは、裁判官に本件に則した常識を、つまり死亡した経営者は、決して過大な収入を得ていたわけでないことを十分に認識してもらい、これに沿った常識を採用してもらうことである。
常識というと、唯一の真理であるかのように思われがちだが、そうとも限らない。それぞれの人が持つ常識は、すべてその人の環境から身につけたものであって、実は千差万別である。
どこにでも通用すると思われがちな常識とは、ある限られた場面の真実であるとも言える。
裏付けをきちんと示して、この場面の常識は何かをきちんと理解してもらう作業が必要となる。

そこで、当方の主張の中で、この理屈の本来の意味を明確に指摘するとともに、中小企業の経営者の収入・資産などの水準に関する資料を提出したうえ、会社の実体のほか被害者の会社との関わりなどの実情を明らかにすることを中心課題とした。
裁判官が、私の取り組みをどの程度くみ取ってくれたかは、もとより判決の中には明示されてはいないが、結論としては、現実に受け取っていた役員報酬(2社分)をすべて労務の対価と認定し、逸失利益の算定の基礎とした裁判例は、珍しいものであると思う。

本件を提起前に保険会社が提示した最終示談提案額は6,000万円弱であった。判決の認容額は、合計8,100万円強であり、遅延損害金も含めると、9,200万円余りになった。裁判を提起し、上記のような法律的争点をクリアーした結果、最終的には約3,000万円増額されたことになる。

死亡あるいは重大な後遺症がある事案では、保険会社と裁判所の算定基準に差異があり、さらに裁判の場合には、弁護士費用の一部が認められるほか、裁判に要した時間に応じ、遅延損害金がつけられる(年5分)ことなどから、裁判を経た方が、金額が多くなるのが通常です。
当法律事務所で取り扱った事件でも、本件のほか、重大な後遺症があった事案で、最終示談提案額(残額)がわずか54万円であったが、裁判を起こした結果、合計2,300万円を超える支払を受けることができるようになった実例があります。
交通事故後遺症 : 取扱事例集 >>

札幌地方裁判所平成9年1月10日民事第1部判決

交通事故で死亡した57歳の小規模な会社代表者の逸失利益について,役員報酬年額840万円全額を労務対価部分とし,70歳まで稼働可能として算出された事例(被害者を代理)

保険会社の最終提示額が約2,870万円余りであった会社の代表者の死亡事故について、裁判を起こした結果、5,490万円余りの手取額となった。判例雑誌に「本判決は、実務の一般的傾向より多くの逸失利益を認めた点に特色があるので、実務上の参考として紹介する。」と評釈されている。

交通事故サイト(交通事故・後遺症 救済センター)はこちら
死亡事案・障害事案(後遺障害等級別)別事例集はこちら

当事務所で担当した,次の事件が,判例時報2045号130頁(平成21年9月1日号)に登載されました。

[登載判例]
交通事故で死亡した57歳の小規模な会社代表者の逸失利益について,役員報酬年額840万円全額を労務対価部分とし,70歳まで稼働可能として算定された事例(札幌地方裁判所平成21年2月26日民事二部判決)具体的成果に付いてみると,次のとおり,会社代表者の死亡事故につき,保険会社が提示した最終示談提案額は2,900万円足らずであったが、判決の認容額が4,200万円弱となり,遅延損害金も含めると4,600万円弱の支払になりました。

内容

裁判所認容額

保険会社最終提示額

備 考

治療費等

61,510円

61,110円

逸失利益

55,234,368円

48,393,072 円

死亡慰謝料

28,500,000円

24,000,000円

葬儀費用等

1,500,000円

1,000,000円

小計

85,295,878円

73,454,182円

中計

68,236,702円

58,763,346円

2割減

損害の填補(既払金)

▲30,061,110円

▲30,061,110円

大計

38,175,592円

28,702,236円

弁護士費用

3,790,000円

0円

保険会社はゼロ査定

合計

41,965,590円

28,702,236円

遅延損害金

3,979,924円

0円

保険会社はゼロ査定

総計

45,945,514円

28,702,236円

「判例時報」の中で次のとおり、評釈されています。

「本判決は、小規模な有限会社の57歳の代表取締役につき、役員報酬年額840万円の全額を労働対価と認め、70歳までを稼働可能年齢とと認めて逸失利益を算定したものであり,実務の一般的傾向より多くの逸失利益を認めた点に特色があるので、実務上の参考として紹介する。」

⇒ 20090226.pdf

なお、本件と同じ争点については、当事務所で10年以上前に担当した事件(札幌地方裁判所平成9年1月10日民事第一部判決)で、同様の判断がされており、判例雑誌「判例タイムズ」990号に登載されています。
原告がすべき主張に関心がある方は,当職の提出した書面の一部ですが,こちらをどうぞ。

⇒ 最終準備書面 20090226j1.pdf
⇒ 最終準備書面(補) http://www2.smaedalaw.com/20090226j2.pdf

⇒ 弁護士前田尚一法律事務所(札幌)
⇒ 札幌交通事故・後遺症救済センター
⇒ 札幌債務整理・過払い救済センター

公益法人の場合

益法人から除名処分を受けた会員の仮の地位を定める仮処分申立てについて、被保全権利の疎明がないとして却下された事例(公益法人を代理)

公益法人での除名処分という類似先例のない珍しいケースについて、今後の同種事案の処理上参考になるとして紹介された。

(旭川地方裁判所平成11年1月26日民事部決定)本件は、顧問先の公益法人から受任した事件であるが、「類似先例のない珍しいケースについての判断事例であり、今後の同種事案の処理上参考」なるとして、判例雑誌「判例タイムズ」誌に紹介された(1037号248頁以下)。
団体の除名決定に関しては、労働組合や農業協同組合の事案は多いが、公益法人の事案は不思議なほど少ない(なお、最近では、東京地判平成5・6・24判タ838号234頁。古くは札幌地判昭和49・1・30判タ307号272頁)。

除名という処分は重大処分である。それだけに団体としてもやむにやまれぬ状況で初めて行えるものであることは言うまでもないが、もう一つ大事なことがある。それは、手続の履践である。

正当な理由があれば当然処分して当たり前と考えられがちであるが、あせって結論を急ぐと飛んでもないことになりかねない。
その最終的な処分に先立ちなすべき手続、例えば弁明の機会の付与がなされなければ、その手続不備だけで処分が無効となることがある。

手続をきちんと行うことによって除名の判断が誤りであることが判明する場合もあるし、たとえ除名に値する事情が明らかであっても、手続が不備であったというだけで除名処分そのものの効力が否定されかねないのである。つまり、法的には、手続を行うこと自体に価値が認められているのである(なお、例えば労働法の分野で、経営者が、手続の配慮を欠くと、解雇のような場合はもとより、団体交渉等の労働組合への対応においても、ほとんど致命的である。)。
そして、その後予想される紛争も考えると、必ずしも定款などの規定を形式的に遵守すればそれで十分とも限らない。

本件の依頼者も、もとよりやまれぬ状況において除名処分を行ったものであるが、それに先立ち、当事務所で、時間をかけあらゆる状況を想定して、最終的な処分に及ぶまでの間に行うのが適切と考えられる手続を検討したうえ、実際にもこれを徹底して行った。
本件でも、相手方は例に漏れず手続の問題を提示してきたが、このような綿密な事前準備をし、適正を期していたので、最終段階で手続の問題は争点からはずることとなったのである。

また、団体とその関係者(構成員、株主、役員・・・)に関する争いについては、もう一つ留意すべき点がある。それは、うっかりすると、裁判官に、紛争が単なる私情の主導権争いという先入観をもって事態を見られかねないということである。そこで、当事者としては、直接の争点ばかりに目を奪われることなく、攻撃防御のテーブルの設定にも十分に配慮しなければならない。

本件の、依頼者は、自動車教習所等を会員として組織された公益法人であり、業界団体としての性質も帯びている。相手方(債権者 なお、仮処分など保全手続では、申立てをした側が債権者、申立てを受けた側が債務者と呼ばれる。)は、主張の精緻さはともかく、業界団体の論理で攻撃を挑んできた。もとより当方は公益法人の論理で抗戦し、次の主張をベースとしたうえ、債権者のいう不利益は、存在しないか、いくばくか存在したとしても、反射的利益にすぎないものであることを主張した。

「債務者は、公益法人として公安委員会から指定試験車両管理機関としての指定を受け、届出自動車教習所全体の地位の向上を目指しているものであり、個々の自動車教習所の個別具体的な経済的利益の追求ないし確保を直接の目的とするものではない。債務者の業界団体としての役割は、指定試験車管理機関として公安委員会が保有していない試験車両を提供することにより、当該地域において、右試験車両の技能試験が実施できるようにし、右試験に関する教習を行っている届出自動車教習所全体がその業域を十分に確保するという点に尽きるものである。」

その結果、裁判所の決定中にも、「債務者は、会員相互の緊密な連絡強調において、交通安全に寄与することを目的とするとともに、届出自動車学校全体の地位の向上を目指し、北海統治時の認可を得て、昭和47年7月27日、民法34条に基づき設立された公益法人であり、…。債務者の業界団体としての役割は、指定試験車管理機関として公安委員会が保有していない試験車両を提供することにより、当該地域において、右試験車両の技能試験を実施できるようにし、右試験に関する教習を行っている届出自動車教習所全体がその業域を十分に確保するという点にあるものと認められること、…指定車両制度は個々の自動車教習所の個別具体的な経済的利益の追求ないし確保を直接の目的とするものではないものと解される。」と明記されている。

さて、本決定は、公益法人が行った除名処分について、元会員が、除名処分の無効を主張し、債務者の会員たる地位保全を求めた事案であり、裁判所は、除名決議の効力自体については判断しなかったものの、「地位保全の仮処分で保全しようとする権利ないし利益の具体的内容は、原則として、賃金請求権に限られるものというべく、本件のように営業上の損害賠償請求権を保全するために地位保全の仮処分がなされる場合には、被保全権利の疎明が必要であるほか、保全の必要として、地位を保全しておかなければ回復し難い著しい損害を生ずるか否かにより判断されるべき」としたうえ、債権者の主張する不利益は、認められないあるいは反射的利益に過ぎず、従って右不利益に起因するとされる営業損害との間に因果関係は認めることができず、被保全権利の疎明がない」として、債権者の申立てを却下した。

なお、前記判示事項に関連して、「・・・許可を受けた者が営業上の利益を受けることがあっても、それはいわゆる反射的利益に過ぎないのである。・・・・・・更に、債権者は不法行為に基づく損害賠償請求権を以て本件仮処分の被保全権利であると主張するが、かかる損害賠償請求権は仮差押の被保全権利とはなり得ても、営業妨害排除の仮処分の被保全権利とはなり得ない。」と判示するものがある(浦和地決昭和37・12・10下民13巻12号2463 頁)。

土地区画整理組合の場合

仮換地指定がなされた従前地についてその占有者に対し明け渡しを認めた事例(土地区画整理組合を代理)

土地区画整理事業の中で、別の土地に移転できる状態になったにもかかわらず、土地を占有し続ける旧所有者に対する民事的手続による明渡が認められた。

(札幌地方裁判所平成9年6月26日判決、札幌高等裁判所平成9年10月31日判決)
(札幌地方裁判所平成9年6月26民事第5部判決)
(札幌高等裁判所平成9年10月31日第2民事部判決)

本判決は、「施行者が、民事的手続により、仮換地指定がなされた従前地についてその占有者に対し明け渡しを認めた事例として参考になる」とされ、(社) 全国土地区画整理組合連合会発行の月刊誌「組合区画整理」(第59号32頁以下)に紹介されたものである(解説は、建設省都市局区画整理課)。

本件は、顧問先の土地区画整理組合から受任した事件である。

土地区画整理事業は、独特の手法が採用された大規模な事業であり、多くの法律効果を生ずる一連の手続であり、公法と私法が錯綜する中で、施行者は、数々の処理すべき法律問題に直面し、問題を事業計画全体の流れの有機的な事象と位置づけ、総合的判断を踏まえて解決していかなければならない。
土地区画整理組合も、組織運営上はもとより、地権者のほか各種多様な利害関係を有する人々との関わりの中で、法律問題と直面している。

そして、土地区画整理事業の施行に当たっては、建物等の移転または除却が円滑に進まなければ当然事業工事の進捗に大きな影響を与え、事業全体が遅延する重大な原因となるが、仮換地指定を行なわれたにもかかわらず、所有者から移転または除却について協力が得られない場合が発生することがある。
まずは地道な協議・交渉ということになるのであるが、うまくいくとは限らない。
そのため、土地区画整理法は、施行者が、裁判手続を経ることなく早急に解決するための手段として、直接施行という方法を定めている(77条1項)。しかし、施行者が個人または組合である場合には、市町村長の認可を受けなければならないこととされている(同条6項)。そして、市町村長は、矢面に立つことを嫌い、この認可をすることを躊躇するのが一般であり、せっかくの手段が有名無実となっているのが実情である。
そこで、施行者としては、民事訴訟を提起するほかない場合がある。

本判決は、従来の判例(最高裁昭和58年10月28日第二小法廷判決・判例時報1095号93頁)の考え方を踏襲したものである(事例判決)が、本件は、従前地所有者も原告となっている点で特色がある。

ところで、同じ依頼者(土地区画整理組合)から受任した事件で、これまで裁判上の先例が見あたらない事案がある。
すなわち、裁判所は、「仮換地指定処分がなされた従前地にあたる係争地ついて、この係争地を仮換地とする指定が別途なされたが使用又は収益を開始することができる日が未だ定めらていない場合、土地区画整理法100条の2により、換地処分がなされるまでの間、施行者が管理するものとなるとして、施行者自身が、係争地を権限なく不法に占有する者に対し明渡を求めることができる」ものとした(札幌地裁平成10年4月28日民事第5部判決、札幌高裁平成10年9月10日第3民事部判決)。

このような場合の解決方法についてはこれまでほとんど議論されておらず、ようやく、大場民男弁護士が執筆された論稿が見つかった。そのなかでは、「仮換地の指定を受けた人の協力さえ得られれば、(その仮換地の指定を受けた人が原告となって)民事的明渡し請求の方法をとることができる。」あるいは「施行者はいっそのこと「使用収益開始日」を「追って通知する」などとせず、効力発生日を即使用収益開始日とする。そうすれば仮換地指定を受けた者は仮換地上の支障物件の所有者等に対し建物収去土地明渡の訴を提起できるのである。」とされており、施行者自身による明渡請求ができないことを前提としているとみられる見解が示されていた(「土地区画整理ーその理論と実際ー」210頁、「続土地区画整理ーその理論と実際ー」29頁、「新版縦横土地区画整理法上」424頁註(5)。

しかし、施行者が土地区画整理事業を施行していくうえで、事業の進捗状況をみながら、「使用収益開始日」を「追って通知する」としておくこと(「追而指定」)は、実務上の必要が高いしなことであるし、仮換地の指定を受けた人の協力を得て、つまり原告になってもらって裁判を起こすという面倒であるばかりか、協力が得られない場合には、解決自体できないことになってしまう。いずれにしても、施行者は主体的な事業をすることが困難となると言わなければならない。

本判決は、このような場合であっても、施行者自身が明渡請求ができるのが当然であるという当方の主張を認めたものである。

宗教法人の場合

「札幌・円山葬儀場問題 住民監査請求」※宗教法人をメンバーとする住民側を代理

宗教法人に隣接する市有地に民間の葬儀場建設されることについて、不明朗な点が見られたため、対抗手段として、住民監査請求を申立てた。その後、住民訴訟に発展。

(NHK北海道ニュース平成6年8月23日放映、その他の日刊紙)

本件は、札幌市交通局所有地に民間業者によって葬儀場建設が計画されたことに、地元住民が反対運動を展開し、双方が、仮処分・損害賠償請求、住民訴訟を提起し合う事態となっていたところ、世間的にはある日突然解決したという事案である。この間の事情について、讀賣新聞平7・2・16朝刊は、「この問題は、同社が93年2月ころから、…市交通局所有地に葬儀場建設を計画したことに、地元住民や隣接する宗教団体が反対。同8月に土地の賃貸契約を結んだ市交通局も巻き込み、昨年3月から相次ぐ訴訟合戦に発展していた。」と報じている。

ところで、『この弁護士に聞け!』(日経BP社)というベストセラーがあるが、その中に、「住民エゴ助長する行政指導」という弁護士の法律コラムが掲載されている。本件と同じ葬儀場建設に関する事例を紹介しているが、「自治体が住民運動に協力しているという様相を呈していた」という事案について、解説者は「理不尽な行政指導」と批判している。

しかし、本件は、この事例とはまったく逆で、「自治体が住民をまったく無視」していたという様相を呈していた。市交通局が業者のために定期借地権を設定し、事前の説明会すら開催されないまま、着工されようとした事案である。

ところで、「住民運動」というと、必ず誰かによって、「住民エゴ」という評価がなされる。

しかし、「住民運動」、民主主義の基本的手段であるが、住民つまり「地域」という一部に属する人々が、「地域」に根ざした問題に取り組む以上、「部分の利益」を追求することとなるのは、むしろ当然のことであると言わなければならない。

それ自体は共通の価値・利害ではないが、皆が共通に持つ価値観に基づいて、受忍することができない価値・利害がある。身近なことで例えるなら、その人の思い出の品。他の人から見れば価値がなくとも、その人にとってはとても大切というモノがある。そして、他の人も、モノ自体は別の物だが、誰もが同じような考えで価値を認めるモノがあることを考えてみればよい。

民主主義というと、、「多数」の利益とか、「全体」の福祉とかいうイメージがつきまとうが、それだけに、「寛容」の視点が欠けてしまうと、個人の価値はすべてエゴと決めつけられかねず(集団リンチ)、それは全体主義という間違った方向導くための理念になってしまう。

事の実態を見ることなく、単純に、「住民エゴ」と評することは、容易だが、極めて危険なことである。
一つのもっとも簡単な判断方法は、自分を国民とか、市民とか全体の立場で見下ろすのではなく、自分の地域に同じことが起こったら、一体どう対応するか、ということである。

本件では、住民側は、運動の中で、行政の不透明な部分を指摘してきた。
報道された例だけみても、札幌交通局は、葬儀場建設について、周辺の多数町内会が同意していることを錦の御旗としていたが(住民エゴと世間に思わせるのは常套手段である。)、実は、半数の町内会が総会などを開かないまま、役員会や会長の独断で承諾書を提出していたのである(「行政が住民頭ごし」北海道新聞平成6年10月22日)。

なお、住民運動は、まさに“権利のための闘争”の集約形態であるが、闘争である以上、スローガンだけではなく、目的を達成するための戦略と戦術が不可欠である。本件では、裁判所を舞台にした動きだけ見ても、業者側は、建築工事妨害禁止の仮処分を申立て間接強制に至り、営業利益を失ったとして損害賠償請求事件を提起してきたし、住民側は、住民監査請求をし、住民訴訟を提起した(そのころになると、実はそろそろ解決の糸口が見え始めていた。)。
その他双方相手に対する告訴のほか、報道の対象とはならなかったこと諸々、本件は、まさしく、総力戦の様相を呈した闘争であった。私は、もっぱら参謀役であったが、十分手応えのある役割であった。

「道内唯一の演劇専用劇場 競売、年内閉鎖へ」(見出し)(新オーナーである宗教法人を代理)(北海道新聞平成12年8月1日朝刊)

「札幌の演劇ホール『マリアテアトロ』 25日の「舞台」最後に15年の歴史の幕」(見出し)(新オーナーである宗教法人を代理)

礼拝堂などの教会として利用するため、不動産競売により取得した物件について、従来からの賃借人らとの法律問題を解決。

(フロンティアタイムス平成12年12月20日)

名誉毀損の場合

「札幌市議菅井氏北海道新聞を名誉毀損で訴える」(ニューステロップ)
(市議会議員を代理)
(NHKネットワークニュース平成8年7月8日放映、その他日刊紙)

本判決は、市議会議員に対する名誉毀損による損害賠償として200万円が認容された事案であり、「慰藉料額の認定も含め、実務上参考になるものとして」、判例雑誌「判例タイムズ」誌に紹介された(1047号215頁以下)。

もっとも、市議会議員が政治生命を失いかねない状況になったにもかかわらず、200万円という認容額はむしろ低すぎるのではないかと思う方もおられるかも知れない。
しかし、わが国の裁判実務上、損害賠償の認容額は、世間常識からみると、驚くほど低く(参考:アメリカの場合)、殊に、名誉・信用といった無形の財産に関する慰藉料は、著しく低いというのが実情だ。

この点については、法務省民事局参事官、東京高裁裁判官を歴任した著明な実務家は、80以上に及ぶ裁判例を分析したうえ、「実務上は、新聞、週刊誌等のマスコミによる名誉毀損の場合、だいたい慰謝料として100万円が認められるのが相場といった感覚があるように思われる。」と指摘している(升田純「名誉と信用の値段に関する一考察」NBL627号42頁以下)。

本判決は、その当時の、わが国の裁判実務におけるの相場に照らす限り、かなり高額の賠償額を認容してもらえた事例の一つであると言ってよいと考えられる。

もっとも、私は、名誉・信用保護訴訟において認容額がいくらになるかという自体は、さしたる意味を持っていないとも考えている。

名誉、信用は、あらゆる活動の基礎である。名誉、信用それ自体の価値も重要だが、その侵害された結果、波及して引き起こされる事態は極めて深刻である。

ひとたび名誉・信用が失墜される事態に陥れば、企業であれば、経済活動が停止しかねないし、政治家であれば政治生命を奪われかねない。また、公益団体であっても、社会活動に影響を及ぼし、その存在自体否定されかねない。
そして、名誉・信用が損なわれた状態が継続する中で、そのような致命的な結果がいったん現実化すれば、元に戻すことはほとんど不可能であるし、名誉・信用そのものを超えて現実に発生した損害の賠償を求めたとしても、裁判の仕組みの中では、因果関係、損害などについて立証上重大な困難に直面することになるであろう。

私は、名誉・信用保護訴訟の真髄は、名誉・信用に限らず、それまで培ってきた「すべての本来」を守ることにあると考えている。 すなわち、報道その他の名誉・信用毀損行為に対する訴訟提起は、適切な時期に訴訟を提起して、正当な反論の場を作り(この段階では、泣き寝入りしない姿勢を示す段階である。)、正当な判決をもらうことによって、名誉・信用毀損行為の誤りを正すことにこそ、ほぼ唯一の価値があると考えている。

本件でも、当該新聞記事が掲載された当時、依頼者は、市民から、「◎◎新聞がウソを書くはずがない。ウソであるなら証明してみろ。」と詰め寄られた。冷静に考えれば、実際にありもしなかったことを証明することなどできるわけがないことがわかる(「悪魔の証明」)。しかし、世間が、虚偽を鵜呑みにして信じ込んだまま、存在しない事実が、一人歩きし続けると、いつのまにか存在するかのような地位を確立してしまう。本当に怖いことだ。
依頼者が、泣き寝入りしそのまま放置したなら、その政治生命に壊滅的な打撃を与えたに違いない。

本件では、依頼者が、訴訟を提起し、本来あるべき姿勢をきちんと示すことによって、世間が誤りを信じ込むという事態を回避した。そして、あしかけ3年に及ぶ闘いの結果、社会に真実を明らかにすることができた。

私が、名誉・信用保護訴訟を受任するうえでもっとも重要な前提条件は、私自身が当該行為が誤りであることを確信できることはもちろんであるが、依頼者が、誤りを正すために闘い続けるという信念を持っていることである。

「前田尚一弁護士が道新記者を一喝 記者会見で「道新は書かなくてもいい」」(見出し)
(市議会議員を代理)
(人事エクスプレス平成8年7月15日)

「札幌市議の名誉毀損訴訟道新敗訴の判決」(見出し)
(市議を代理)
(読売新聞平成11年3月2日朝刊その他の日刊紙)

札幌市議がパチンコ店の出店工作をした旨の新聞記事について、名誉毀損による損害賠償として200万円を認容した事例
名誉毀損に対する慰謝料100万円というのが裁判例の相場であるといわれ、著しく低額であった時代に、本判決は、200万円を認容した。
(札幌地方裁判所平成11年3月1日判決:「判例タイムズ」1047号215頁

本判決は、市議会議員に対する名誉毀損による損害賠償として200万円が認容された事案であり、「慰藉料額の認定も含め、実務上参考になるものとして」、判例雑誌「判例タイムズ」誌に紹介された(1047号215頁以下)。

もっとも、市議会議員が政治生命を失いかねない状況になったにもかかわらず、200万円という認容額はむしろ低すぎるのではないかと思う方もおられるかも知れない。
しかし、わが国の裁判実務上、損害賠償の認容額は、世間常識からみると、驚くほど低く(参考:アメリカの場合)、殊に、名誉・信用といった無形の財産に関する慰藉料は、著しく低いというのが実情だ。

この点については、法務省民事局参事官、東京高裁裁判官を歴任した著明な実務家は、80以上に及ぶ裁判例を分析したうえ、「実務上は、新聞、週刊誌等のマスコミによる名誉毀損の場合、だいたい慰謝料として100万円が認められるのが相場といった感覚があるように思われる。」と指摘している(升田純「名誉と信用の値段に関する一考察」NBL627号42頁以下)。

本判決は、その当時の、わが国の裁判実務におけるの相場に照らす限り、かなり高額の賠償額を認容してもらえた事例の一つであると言ってよいと考えられる。

もっとも、私は、名誉・信用保護訴訟において認容額がいくらになるかという自体は、さしたる意味を持っていないとも考えている。

名誉、信用は、あらゆる活動の基礎である。名誉、信用それ自体の価値も重要だが、その侵害された結果、波及して引き起こされる事態は極めて深刻である。
ひとたび名誉・信用が失墜される事態に陥れば、企業であれば、経済活動が停止しかねないし、政治家であれば政治生命を奪われかねない。また、公益団体であっても、社会活動に影響を及ぼし、その存在自体否定されかねない。

そして、名誉・信用が損なわれた状態が継続する中で、そのような致命的な結果がいったん現実化すれば、元に戻すことはほとんど不可能であるし、名誉・信用そのものを超えて現実に発生した損害の賠償を求めたとしても、裁判の仕組みの中では、因果関係、損害などについて立証上重大な困難に直面することになるであろう。

私は、名誉・信用保護訴訟の真髄は、名誉・信用に限らず、それまで培ってきた「すべての本来」を守ることにあると考えている。
すなわち、報道その他の名誉・信用毀損行為に対する訴訟提起は、適切な時期に訴訟を提起して、正当な反論の場を作り(この段階では、泣き寝入りしない姿勢を示す段階である。)、正当な判決をもらうことによって、名誉・信用毀損行為の誤りを正すことにこそ、ほぼ唯一の価値があると考えている。

本件でも、当該新聞記事が掲載された当時、依頼者は、市民から、「◎◎新聞がウソを書くはずがない。ウソであるなら証明してみろ。」と詰め寄られた。冷静に考えれば、実際にありもしなかったことを証明することなどできるわけがないことがわかる(「悪魔の証明」)。しかし、世間が、虚偽を鵜呑みにして信じ込んだまま、存在しない事実が、一人歩きし続けると、いつのまにか存在するかのような地位を確立してしまう。本当に怖いことだ。
依頼者が、泣き寝入りしそのまま放置したなら、その政治生命に壊滅的な打撃を与えたに違いない。

本件では、依頼者が、訴訟を提起し、本来あるべき姿勢をきちんと示すことによって、世間が誤りを信じ込むという事態を回避した。そして、あしかけ3年に及ぶ闘いの結果、社会に真実を明らかにすることができた。

私が、名誉・信用保護訴訟を受任するうえでもっとも重要な前提条件は、私自身が当該行為が誤りであることを確信できることはもちろんであるが、依頼者が、誤りを正すために闘い続けるという信念を持っていることである。

住民運動の場合

「札幌・円山葬儀場問題 住民監査請求」(ニューステロップ)
(住民側を代理)
市有地に民間の葬儀場建設されることについて、不明朗な点が見られたため、対抗手段として、住民監査請求を申立てた。その後、住民訴訟に発展。
(NHK北海道ニュース平成6年8月23日放映、その他の日刊紙)

本件は、札幌市交通局所有地に民間業者によって葬儀場建設が計画されたことに、地元住民が反対運動を展開し、双方が、仮処分・損害賠償請求、住民訴訟を提起し合う事態となっていたところ、世間的にはある日突然解決したという事案である。この間の事情について、讀賣新聞平7・2・16朝刊は、「この問題は、同社が93年2月ころから、・・・市交通局所有地に葬儀場建設を計画したことに、地元住民や隣接する宗教団体が反対。同8月に土地の賃貸契約を結んだ市交通局も巻き込み、昨年3月から相次ぐ訴訟合戦に発展していた。」と報じている。

ところで、『この弁護士に聞け!』(日経BP社)というベストセラーがあるが、その中に、「住民エゴ助長する行政指導」という弁護士の法律コラムが掲載されている。本件と同じ葬儀場建設に関する事例を紹介しているが、「自治体が住民運動に協力しているという様相を呈していた」という事案について、解説者は「理不尽な行政指導」と批判している。

しかし、本件は、この事例とはまったく逆で、「自治体が住民をまったく無視」していたという様相を呈していた。市交通局が業者のために定期借地権を設定し、事前の説明会すら開催されないまま、着工されようとした事案である。

ところで、「住民運動」というと、必ず誰かによって、「住民エゴ」という評価がなされる。

しかし、「住民運動」、民主主義の基本的手段であるが、住民つまり「地域」という一部に属する人々が、「地域」に根ざした問題に取り組む以上、「部分の利益」を追求することとなるのは、むしろ当然のことであると言わなければならない。

それ自体は共通の価値・利害ではないが、皆が共通に持つ価値観に基づいて、受忍することができない価値・利害がある。身近なことで例えるなら、その人の思い出の品。他の人から見れば価値がなくとも、その人にとってはとても大切というモノがある。そして、他の人も、モノ自体は別の物だが、誰もが同じような考えで価値を認めるモノがあることを考えてみればよい。

民主主義というと、、「多数」の利益とか、「全体」の福祉とかいうイメージがつきまとうが、それだけに、「寛容」の視点が欠けてしまうと、個人の価値はすべてエゴと決めつけられかねず(集団リンチ)、それは全体主義という間違った方向導くための理念になってしまう。

事の実態を見ることなく、単純に、「住民エゴ」と評することは、容易だが、極めて危険なことである。
一つのもっとも簡単な判断方法は、自分を国民とか、市民とか全体の立場で見下ろすのではなく、自分の地域に同じことが起こったら、一体どう対応するか、ということである。

本件では、住民側は、運動の中で、行政の不透明な部分を指摘してきた。
報道された例だけみても、札幌交通局は、葬儀場建設について、周辺の多数町内会が同意していることを錦の御旗としていたが(住民エゴと世間に思わせるのは常套手段である。)、実は、半数の町内会が総会などを開かないまま、役員会や会長の独断で承諾書を提出していたのである(「行政が住民頭ごし」北海道新聞平成6年10月22日)。

なお、住民運動は、まさに“権利のための闘争”の集約形態であるが、闘争である以上、スローガンだけではなく、目的を達成するための戦略と戦術が不可欠である。本件では、裁判所を舞台にした動きだけ見ても、業者側は、建築工事妨害禁止の仮処分を申立て間接強制に至り、営業利益を失ったとして損害賠償請求事件を提起してきたし、住民側は、住民監査請求をし、住民訴訟を提起した(そのころになると、実はそろそろ解決の糸口が見え始めていた。)。
その他双方相手に対する告訴のほか、報道の対象とはならなかったこと諸々、本件は、まさしく、総力戦の様相を呈した闘争であった。私は、もっぱら参謀役であったが、十分手応えのある役割であった。

「円山葬儀場 訴訟外で決着 反対派が業者へ建設断念和解金9800万円」(見出し)
(住民側を代理)
周辺住民が、市有地での民間葬儀場建設に反対し、業者との間で、札幌市交通局も巻き込んだ相次ぐ訴訟合戦に発展していた中、訴訟外で和解交渉が進められ、業者が建設を断念。
(読売新聞平成7年2月16日朝刊その他の日刊紙)

内部告発者に対する訴え提起の正当性

「特養ホーム内部告発訴訟 高裁判決を破棄」
(特養ホームを代理)
(北海道新聞平成21年10月23日夕刊その他の日刊紙、TVニュース)
施設入所者に対する虐待行為が行われている旨の記事が新聞に掲載されたことに関し,複数の目撃供述等が存在することを認識していたものの,他の事情から虐待行為はなかったとして,同施設を設置経営する法人が新聞への情報提供者である職員らに対してした損害賠償請求訴訟の提起が違法な行為とはいえないとされた事例
(法人(=特養ホーム)を代理)
(最高裁判所平成21年10月23日第二小法廷判決:「裁判所時報」1494号303頁
「判例タイムズ」1313号115頁、「判例時報」2063号6頁)

当事務所が担当した事件について,札幌高裁が当方を敗訴させた部分を,最高裁は,上告受理して,札幌高裁判決を破棄したうえ,差し戻しました。

 最高裁が破棄した部分について,私が起案した上告受理申立て理由は,次のとおりです。
 ⇒ http://www2.smaedalaw.com/0373_000.pdf 【上告受理申立理由】

新聞,テレビ局で構成される司法クラブに求められて,私が起案したマスコミに公表したコメントは,次のとおりです。  ⇒ http://www2.smaedalaw.com/0372_000.pdf 【マスコミに対するコメント】

札幌高裁判決の判断は,上記【上告受理申立理由】で述べたとおり,裁判制度の長年の歩みの中で形成された,制殿原則として正当な行為である訴えの提起を敢えて不法行為を構成するかどうかを判断するにあたっては慎重な配慮をしなければならないという最高裁の考え方を無視するものであることに加え,最後の救済の砦でもある訴訟の現場における,裁判所,裁判官の在り方にも大きな問題があるものでした。

ところで,新聞報道によると,被上告人が,札幌市内で記者会見し,同席した代理人弁護士が,「最高裁判決は過去の判例を機械的に当てはめたもの。提訴の適法性を個別具体的に判断してもらいたかった」と話したとのことです(平成21年10月24日北海道新聞朝刊)。

しかし,判決全文をご覧いただくと明らかなとおり,最高裁の判決は,どう見ても,個別具体的に判断しており,同代理人が何を言おうとしているのか,私には全く理解できません。

なお,同誌では,私のコメントを,「憲法の保障する裁判を受ける権利を重視した物で,高く評価できる」と要約して掲載しています。
 上記【マスコミに対するコメント】と比べてみていただきたいものです。

談合の場合

「堀知事ら被告の農業土木談合訴訟 札幌地裁で初弁論」(見出し)
(建設業者を代理) (Yahoo!ニュース平成13年3月2日 日刊紙、TVニュース)

「道発注工事官製談合 業者に賠償命令」(見出し) (建設業者を代理)
北海道の住民である原告らが、北海道A支庁における農業土木工事において談合が行われていたとして、同工事の受注をした2会社と同工事の請負契約締結当時の北海道知事、北海道A支庁長及び北海道農政部長に対し、地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの)242条の2第1項4号に基づき、北海道(参加人)に代位して、損害の賠償を求めた事案
原告は、談合による道の損害額を「工事予定価格の総額の10%に当たる7850万円」と主張したが、裁判所は、当方の主張・立証を容れ、判決で「総合的に考慮して5%が相当」との判断を示した。
(札幌地方裁判所平成19年1月19日判決:「裁判所WEB」) (日本経済新聞平成19年1月20日ほか日刊紙、TVニュース)

争点
(1) 原告の主張
原告は、談合による道の損害額を「工事予定価格の総額の10%に当たる7850万円」と主張した。

(2) 逆風:裁判例・学説・報告等
・「建設工事一般についての民事訴訟法248条を適用した算定損害額について、固めに評価した区切りの良い数値として請負契約金額の10%が基準になっていると考えられる」(村上政博『入札談合に係る住民代位訴訟の動向』判例タイムズ1092号)
・一般に、談合がなければ、これがあった場合の価格の20ないし30%程度は低下する論文(泉水文雄『独占禁止と損害賠償』民商124巻4・5号559頁)
・いつかの自治体における入札制度改革をとおして競争が回復した結果、平均落札率が70%ないし85%になっているとする報告(日本弁護士連合会『入札制度改革に関する逓減と入札実態調査報告』(2001)4頁 )

我々のプロジェクトチームの成果
(1) 裁判所は、当方の主張・立証を容れ、判決は「総合的に考慮して5%が相当」とした。

(2) 我々のチームが裁判所に提出した、『準備書面』と『書証』、つまりクライアントの担当者が作成した資料と弁護士の構成した法律論

まとめ
裁判で負けるのは、問題外。しかし、勝ち過ぎてもいけないことがある!!

強制管理申立ての場合

「大型飲食店ビル第5、第6小笠原ビルのテナント賃料をめぐって延々と係争騒ぎ!札幌、東京の弁護士携え、双方の主張真っ向から対立!」(見出し)
(申立て側を代理)
月額合計約1000万円のテナント賃料をめぐり、当時あまり利用されていなかった強制執行手続の一種である強制管理を申立ててビルを占有していた不動産業者らと攻防。
(株)南北海道総研「NEW現代函館」1995.1)

知的財産権の場合

「ラージコアレス 特許係争が円満解決」(見出し)
(製造販売業者を代理)
芯なしトイレットペーパーについて、他の製造・販売メーカに対し、特許抵触の警告を行った結果、クロスライセンス契約を結ぶことによって円満解決が図られた。
(「紙業日日新聞」1996.4.12)

ゴルフ会員権

ゴルフ場使用について、特別ゲスト枠の廃止及び予約制度の導入がなされたことを理由とする会員からのゴルフ会員契約解除に基づく保証金等の返還請求が認容された事例
(ゴルフクラブ会員を代理)
本判決は、ゴルフ会員契約の解除を認め、保証金・預託金の返還請求を認容した。
(札幌地方裁判所平成10年1月29日判決 :「判例時報」1668号123頁、「判例タイムズ」1014号217頁

合併

「ナラサキ石油と札通石油合併 価格競争に対応 道内小売り再編へ一石 経営効率化で生き残り」(見出し)
(存続会社側の法務を担当)
価格競争を背景とした業界再編において、合併に関連する法務問題に対処。
(北海道新聞平成11年1月6日朝刊 日本経済新聞2月6日)

商品取引の場合

商品取引業者の外務員らの商品先物取引の勧誘に適合性原則の違反があったとして商品取引業者の不法行為責任を認めたが,5割の過失相殺を認めた事例
商品先物取引の勧誘の適否が問題となったごくありふれた事案であるが,顧客は,実際に保有する金融資産が900万円程度であるのに,自らわざわざ投資可能金額を2000万円と過大な設定を申告したため,実際保有する資産に比して取引規模が拡大したことにより,損害の拡大を招いたものであること,顧客の年齢及び経歴,商品取引業者の外務員の説明内容及び方法からみて,顧客は,少なくとも商品先物取引の仕組みや危険性は理解していたはずなのに,投機に対する安易な興味から,外務員の取引の勧誘に応じて先物取引を始め,拡大して損害を招いていることなどの落ち度があったことを認めるなどして,5割に及ぶ過失相殺をした。
(札幌地方裁判所平成20年2月26日判決:「金融・商事判例」1295号66頁)

交通事故無料電話相談

死亡案件・後遺症(後遺障害)案件については
今すぐ当事務所にご相談ください!